カナダの障害者芸術団体「NaAC」による展覧会「マイ・イマジネーション」。芸術を通して価値観や視点を学ぶ機会をーー代表、キュレーターへのインタビューも

2022/03/06 更新

カナダの障害者芸術団体、National accessArts Centre(ナショナル・アクセスアーツセンター)による展覧会「マイ・イマジネーション ー創造性は無限だ! 」が、東京都港区にあるカナダ大使館高円宮記念ギャラリーで開催されています。
国境を超えるイマジネーションを感じてみませんか?

(※新型コロナウィルス感染拡大防止のため2022年1月17日(月)より一般公開を一時休止しています)

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カナダ「National accessArts Centre(NaAC)」とは

「National accessArts Centre(NaAC)」の様子。障害のある人々が芸術的なトレーニング、創作活動をしている。
「National accessArts Centre(NaAC)」の様子。障害のある人々が芸術的なトレーニング、創作活動をしている。
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カナダの障害者芸術団体「National accessArts Centre(NaAC)」。発達障害、身体障害、後天性障害のある人々に芸術的トレーニング、創作、展示の機会を提供しています。その活動は、障害のある人への経済的自立支援にもつながっています。

NaACは、カナダで最も歴史ある障害者芸術団体です。創立から45年経った2020年、現代表・ジョンソク・リュウ さんが中心となり団体のコンセプトや支援の仕組みを刷新。団体名を「National accessArts Centre(NaAC)」とし、さらに躍進的に、障害者芸術の新しい支援の形を作り出し、唯一無二のアーティストたちを輩出する団体へと進化しました。

NaACで最も大切にしていることは所属するアーティストが「障害のある人」として作品を提供するのではなく、「アーティスト」として仕事をし、適正な対価を得るということ。実際に芸術に関するサポートを受けた人々はすばらしい作品を生み出し、それらは芸術作品として高い評価を得ています。NaACの活動は、海外から見ても障害者芸術への支援の先駆けであり、その支援の仕組みや所属するアーティストたちの芸術性は、カナダ国内にとどまらず注目されています。その活動は芸術的支援のみならず、2021年の国連気候変動会議(COP26)では、カナダの代表として展示会「Conference of the Birds 」を開催しました。
NaACの代表、ジョンソク・リュウさんに活動について伺いました。

発達ナビ編集部(以下、ーー)NaACの活動を通して伝えたい思いを教えてください。
「National accessArts Centre」代表のジョンソク・リュウさん
「National accessArts Centre」代表のジョンソク・リュウさん
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ジョンソク・リュウ:NaACでの仕事を通じて私が学んだことは、機会を提供すると、驚くべきことが起こる可能性があるということです。
長い間、障害のある人のコミュニティは無視され、差別されてきた印象があります…特に芸術の世界では。私たちはこれを変えるべく活動を始めましたが、これからもたくさんやるべきことがあると考えています。

私たちはNaACのアーティストと、世界で活躍するさまざまなアーティストとのコラボレーションする機会もつくっています。今ではNaACに所属する12人以上のアーティストが、海外を旅して文化交流活動に参加しています。活動を通し、今までにないすばらしい芸術作品がうまれ、新しい価値を創造していると感じています。また2021年からNaACでは、音楽に関する活動も始めました。障害のある人々によって革新的な音楽が次々に作曲されています。

さらに世界中でアーティストの作品を展示しています。アートの力で、障害のある人に対する社会の誤解や偏見を変えたいと思っています。NaACは、障害者芸術団体にとどまらず、よりよい社会をつくる最前線にいると感じています。

展覧会「マイ・イマジネーション ー 創造性は無限だ!」の見どころ

そのNaACの展覧会「マイ・イマジネーションー創造性は無限だ!」が、東京都港区にあるカナダ大使館高円宮記念ギャラリーで022年5月25日(水)まで開催されています。
※新型コロナウィルス感染拡大防止のため2022年1月17日(月)より一般公開を一時休止しています。

今回日本で行われている展覧会では、発達障害のある5人のアーティストが手掛けた約20点の作品が一堂に並びます。
カナダ大使館高円宮記念ギャラリーで行われている展覧会「マイ・イマジネーションー創造性は無限だ!」の様子。中央の作品はジェーン・キャメロン氏の代表作「Calgary Boy」
カナダ大使館高円宮記念ギャラリーで行われている展覧会「マイ・イマジネーションー創造性は無限だ!」の様子。中央の作品はジェーン・キャメロン氏の代表作「Calgary Boy」
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アーティストの一人、ジェーン・キャメロン(1949―2000)は、「発達障害のある芸術家が活躍できる」という道を開きました。 展覧会「マイ・イマジネーション ー創造性は無限だ!ー」というタイトルは、彼女の記した「My imagination is so many things」という言葉に由来しています。

そして、アディール・サディク、デビッド・オポン、ドナルド・グリノー、レイ・ワンの4人は、ジェーンと共通する創造性を持って新たなメディアやその組合せを開拓している注目のアーティストです。世界中でこの2年の間に生活様式が変わり、今までのような制作活動が難しい面もありました。その中で彼らは新しい方法での制作に挑戦し、心ゆさぶられるような作品の数々をつくりだしています。

キュレーターを務めるカーリー・モーティマーさんにこの展覧会について伺いました。
キュレーターをつとめるカーリー・モーティマーさん
キュレーターをつとめるカーリー・モーティマーさん
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ーー展覧会「マイ・イマジネーション ー 創造性は無限だ!」の見どころを教えてください。

カーリー:全て注目してほしい作品なので、お気に入りをひとつ選ぶのは難しいですね。
ジェーン・キャメロンの「Calgary Boy」は、パワーにあふれ、私たちが暮らすカルガリー市(カナダの都市)がよく表現されており大好きな作品です。
ジェーン・キャメロン氏作「Calgary Boy」
ジェーン・キャメロン氏作「Calgary Boy」
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またデビッド・オポンの作品は、自然災害からの復興という観点でも重要だと思います。 2013年、カナダのカルガリー市では約10万人が避難を余儀なくされる洪水があり、私を含めて多くの人々が家を失いました。デビッド・オポンは、困難に見舞われたあともアーティストとして芸術作品をつくり続けました。その前向きに進もうとするアーティストの力は、人々に希望を与えるものであると思います。
デビット・オポン氏作「浸水した家のための店 ウォールアート世界最高の暮らし」 パート1
デビット・オポン氏作「浸水した家のための店 ウォールアート世界最高の暮らし」 パート1
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私はアーティストには世の中を変えていく力があり、あらゆる問題の捉え方を変えていく存在だと思っています。そして作品をつくるためには、アーティストたちは多くの課題に取り組む必要があります。 ドナルド・グリノーの作品「Sheriff Rug」は、それを強く印象づけるものです。 彼はこの作品を完成させるのに、なんと8年の年月を費やしました。彼が作品を完成させた日、私たちは作品を誇らしげに掲げる彼の写真を撮りました。
「Sheriff Rug」を手にするのは作者のドナルド・グリーノー氏
「Sheriff Rug」を手にするのは作者のドナルド・グリーノー氏
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障害のある子どもたち、そして保護者へ伝えたいこと

子どもたちへ

ジョンソク・リュウ:ぜひ展示会を見に来てください。今回ギャラリーまで足を運べない場合でも、インターネットで障害のあるアーティスト、ダンサー、ミュージシャンの芸術を見ることができます。きっと、芸術を通して自分自身の価値観を表現している人がたくさんいることに気づくでしょう。

芸術にふれ、「やってみたい」と感じているか、ぜひたしかめてみてください。あなたの視点と創造性にワクワクして、あなたが持つその価値観をすばらしいと感じている人たちが、身の回りや世界中にいることを忘れないでくださいね。表現することを恥ずかしがらなくて大丈夫。障害があってもなくても、あなたはあなたなのです。もし『自分の感じていること、思っていること、表現したいことを誰かと共有したい』と思うのならば、ぜひ一歩踏み出してみてください。そこに共感してくれる人がきっといますよ。
カーリー:価値観を限定せず、思い切ってのびのびと作品をつくること、表現をすることを恐れないでくださいね。今回の展覧会でアーティストたちは、今までにない新たな挑戦をしました。私はそこから今まで以上に彼らの力強さを感じ、とても胸を打たれました。世界中の人たちが、発達障害のある人々の視点や価値観からもっと多くのことを学ぶ必要があると感じています。あなたが何かをつくり出すことで、あなたのすばらしい視点や価値観がきっとたくさんの人に伝わると思います。

障害のある子どもを育てる保護者のみなさんへ

ジョンソク・リュウ:私たちはみんな、障害のある人々にとってより良い世界をつくろうと思っている仲間です。私はたまたま、発達障害のある人々が驚くべき創造性と可能性を持っていることを世界に証明しようとしている芸術団体の代表をしています。障害のあるお子さんを育てる保護者のみなさんも、いろいろな形でより良い世界をつくるための行動をしていらっしゃることでしょう。

やっていることが何であれ、それがときには挑戦的で、落ち込んでしまうようなことがあるということを私は知っています。
私たちの挑戦や苦悩を知らない人たちは、「どうして、さらに求めるの?」と聞くかもしれません。 私はNaACの活動する中で「今のままでも十分ではありませんか?」とこれまで何度も聞かれました。難しいことではあるのですが、そんなとき「いいえ、まだまだ」と言う勇気と力を持ち、子どもたちにとって最高のサポートと環境を求めることが大切ではないかと思っています。

お子さんは、やがて成人へと成長し、その可能性を開いていくことで、自分らしい充実した生活を送ることができます。お互いに、そして私たちのようなグループや団体からインスピレーションを得てみてください。良い世界をつくっていく勇気と力をみんなが持てることを願っています。

カーリー:みなさんのお子さんは世界を変えていく存在であり、将来の仕事などにつながる新しい方法を見つけるでしょう。彼らはイマジネーションの力と考える力を秘めていて、私たちがこれまでに見たことのないような芸術的な表現をすることがよくあります。
保護者の方はお子さんや、そのほかの障害のある方たちの一番のサポーターになることができます。彼らのために一番よい方法に出合ったら、それが今までにないサポートだとしても怖がらず挑戦してみてください。障害のある人たちの才能と能力がたくさんの人たちに知られることで、みんなにとっての壁がなくなるのではないかと思います。NaACは、いつでもその味方になります。
※クリックすると発達ナビのサイトからカナダ大使館のホームページに遷移します
「マイ・イマジネーション ー創造性は無限だ!」、カナダ大使館高円宮記念ギャラリーで開催
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〈詳細〉
【会期】:2021年12月6日 (月)~2022年5月25日(水) 10:00~17:30 (入場は17:00まで)
休館日:土曜、日曜および、2022 年 3 月以降は、3 月 21 日(月)、4 月 15 日(金)~18 日(月)、5 月 3 日(火)~4 日(水)
※新型コロナウイルス感染予防のため、同時のご入場は 5 名まで
※2022年1月17日(月)より一般公開を休止しています。詳しくは以下へお問い合わせください
【会場】:カナダ大使館 高円宮記念ギャラリー(東京都港区赤坂7-3-38)
【観覧料】:無料
※ ご入館に介助を必要とされる方は事前にご連絡ください。
【問い合わせ】:カナダ大使館広報部 
(tel) 03-5412-6310
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