コロナ禍前に戻さないで!子どもや先生、保護者の負担も減――ずっと変わらなかった学校で実現した「5つの合理化」

ライター:楽々かあさん
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現在少しずつ「コロナ前」の日常を取り戻しつつある傾向を私は嬉しく思っています。しかし、学校で子・親・先生たちに過剰な負担がかかっていた非合理的な慣習まで復活するのではないか、という不安も抱いています。新型コロナウイルス対策を機に合理化・効率化され、発達障害・不登校傾向のある子などを始め、多くの子ども・先生・保護者達にメリットがあって「元に戻さないで欲しい」と願う、公教育の変化を5つ挙げます。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

学校のコロナ対策で、過剰な負担が減った子・親・先生たち

こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。

突如現れた未知の新型コロナウイルスのために、全国一斉休校措置となった、あの2020年春の緊張感を思い出すと、最近の「少しずつ、コロナ前の日常を取り戻しつつある」空気感を、私はとても嬉しく思っています。
当時元気がなくて心配していた長女も、このころは毎日放課後、近所のお友達と外で走り回って遊べるようになりました。
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発達障害&グレーゾーンの3兄妹が獲得した「適応戦略」とは?コロナ後の時代を生き抜くために

その一方で、長女の公立小学校では、運動会に向けて長時間の事前練習が始まったり、PTA講演会の動員が再開されたり…と、私には非合理的に思えることも一部で復活の兆しを見せており、「コロナを機に改善されたことも、また、元に戻ってしまうのではないか」という心配もしています。

長男・次男の小学校時代、まずは自分たちでできる努力や工夫をした上で、私は合理的な配慮について学校側と相談してきましたが、公教育の体質的・制度的な大きな壁にぶつかり、「よほどのことがない限りは変われないだろうな」と諦めた部分も多々あり、長男・次男は私立中学受験を選択しました。

その、「よほどのこと」が起きたのが、新型コロナウイルスの感染拡大です。

新型コロナウイルス対策を機に合理化・効率化されたことのうち、発達障害・不登校傾向のある子など、学校生活に特に負担を感じやすい児童生徒を始め、多くの子どもたち・先生・保護者にメリットがあり、「ぜひ続けてほしい」「もとに戻さないで」と私が願う公教育の変化を5つ挙げます。
立場や考え方によって、「旧来の方法のほうがよい」と思われる方もいらっしゃるでしょう。多様性を考えるひとつの視点として記させていただきます。

1.オンライン授業の定着

公立小中学校でのICT教育の推進は、政府のGIGAスクール構想の前倒しなどで、ひとまずはほとんどの児童生徒にタブレットが配布され、うちの小学校も全教室でWi-Fiが使えるようにもなりました。

ただし、その活用度合は、「去年の担任の先生はタブレット沢山使ったけど、今年はあんまり使わない」などと長女が話すように、学習に十分に活かせている場合もあれば、未だに「持ち帰り訓練をするだけ」なんて場合もあり、地域・学校・先生による状況のようです。

オンライン授業も、公立に通う長女は試験的に一度15分のホームルームが行われたのみですが、長男次男の私立学校ではすでに授業ノウハウがすっかり定着しています。学校間のICT格差がかなり開いているように感じます。

それでも、感染拡大の局面でニュース等で報じられたような、教室の密を避けるために一部の学校で試験的に行われた、対面授業とオンライン授業が選択できる「ハイブリッド型の授業」の試みに、私は公教育への希望を感じました。
コロナの影響で不登校の子も増えていると聞きますが、ハイブリッド型の授業が全国的に広まれば、不登校やいじめ、感覚過敏などで「教室にいるのがつらい」と感じる子の学びの選択肢を増やすことができます。離島や過疎地域などに住む通学負担が大きな子どもや、病気やケガで長期間登校できない子どもなどへの学びの保障にもなります。

また、地震などの災害リスクに加えて、近年は気候変動の影響で、「危険な暑さ」の猛暑日や、台風・豪雨・豪雪などの異常気象が増え、徒歩通学の子ども達がとても心配になることもありますし、感染症の流行は新型コロナウィルスだけに限りません。
最低限、各校でオンライン授業のノウハウを絶やさずにいれば、コロナ以外の理由でも、臨機応変にオンライン授業に切り替えられるので、子ども達の命や健康を守りながら、学びを止めずに済みます。

2.デジタル教科書の普及

2024年度より本格導入予定の「デジタル教科書」も、LD(学習障害/学習症)のある子どもの読み書きがラクになったり、忘れ物が多い子の心配事が減ったり、教科書すべてがタブレット一台に入れば子どもたちの過重なランドセルの負担を減らせたりできるので、私は大いに期待を寄せています。

ですが、文部科学省の「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議 第一次報告」(2021.6.8公表)によれば、デジタル教科書の発行状況は小中学校ともに約 95%に達しているものの(R3年度現在)、児童生徒への普及状況は「公立学校全体では 7.9%、公立の小学校では 7.7%、公立の中学校では 9.2%、公立の高等学校では 5.2%となっている」(R2.3.1.現在)とのこと。
つまりは、「モノはあるけど、使いこなせていない」状況で、まだまだ十分な活用の実践例が不足しているようです。

それでも、コロナを機に教育現場が重い腰を上げて、一歩でも二歩でも、導入の歩みを進めた実績は大きいでしょう。
デジタル教材を十分活用できれば、個別最適化された学習もしやすく、宿題も「音読・漢字書き取り・計算ドリル」以外の選択肢を増やせるので、デジタルネイティブの子ども達の学習意欲と効率がUPするのではないでしょうか。

そして、みんなが文房具のように学校でタブレットを使いこなしていれば、LDのある子どもが教室に持ち込んでも、誰も「〇〇さんだけズルい」だなんて言わないでしょうし、先生方がIT機器の取り扱いに慣れれば、親も理解を得るために何度も学校側と交渉しなくて済むハズです。

多忙な先生方にとっても、デジタル教材の活用で、板書や教材作り、プリント配布や採点、提出物のチェックや検温記録の管理などの負担も減るでしょう。
文部科学省|デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議 第一次報告
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/157/toushin/mext_00006.html
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次ページ「3.学校行事の工夫と効率化」

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