コロナ禍前に戻さないで!子どもや先生、保護者の負担も減――ずっと変わらなかった学校で実現した「5つの合理化」

2022/06/14 更新

現在少しずつ「コロナ前」の日常を取り戻しつつある傾向を私は嬉しく思っています。しかし、学校で子・親・先生たちに過剰な負担がかかっていた非合理的な慣習まで復活するのではないか、という不安も抱いています。新型コロナウイルス対策を機に合理化・効率化され、発達障害・不登校傾向のある子などを始め、多くの子ども・先生・保護者達にメリットがあって「元に戻さないで欲しい」と願う、公教育の変化を5つ挙げます。

楽々かあさん
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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

学校のコロナ対策で、過剰な負担が減った子・親・先生たち

こんにちは。『発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換』ほか、著者・楽々かあさんこと、大場美鈴です。

突如現れた未知の新型コロナウイルスのために、全国一斉休校措置となった、あの2020年春の緊張感を思い出すと、最近の「少しずつ、コロナ前の日常を取り戻しつつある」空気感を、私はとても嬉しく思っています。
当時元気がなくて心配していた長女も、このころは毎日放課後、近所のお友達と外で走り回って遊べるようになりました。
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その一方で、長女の公立小学校では、運動会に向けて長時間の事前練習が始まったり、PTA講演会の動員が再開されたり…と、私には非合理的に思えることも一部で復活の兆しを見せており、「コロナを機に改善されたことも、また、元に戻ってしまうのではないか」という心配もしています。

長男・次男の小学校時代、まずは自分たちでできる努力や工夫をした上で、私は合理的な配慮について学校側と相談してきましたが、公教育の体質的・制度的な大きな壁にぶつかり、「よほどのことがない限りは変われないだろうな」と諦めた部分も多々あり、長男・次男は私立中学受験を選択しました。

その、「よほどのこと」が起きたのが、新型コロナウイルスの感染拡大です。

新型コロナウイルス対策を機に合理化・効率化されたことのうち、発達障害・不登校傾向のある子など、学校生活に特に負担を感じやすい児童生徒を始め、多くの子どもたち・先生・保護者にメリットがあり、「ぜひ続けてほしい」「もとに戻さないで」と私が願う公教育の変化を5つ挙げます。
立場や考え方によって、「旧来の方法のほうがよい」と思われる方もいらっしゃるでしょう。多様性を考えるひとつの視点として記させていただきます。

1.オンライン授業の定着

公立小中学校でのICT教育の推進は、政府のGIGAスクール構想の前倒しなどで、ひとまずはほとんどの児童生徒にタブレットが配布され、うちの小学校も全教室でWi-Fiが使えるようにもなりました。

ただし、その活用度合は、「去年の担任の先生はタブレット沢山使ったけど、今年はあんまり使わない」などと長女が話すように、学習に十分に活かせている場合もあれば、未だに「持ち帰り訓練をするだけ」なんて場合もあり、地域・学校・先生による状況のようです。

オンライン授業も、公立に通う長女は試験的に一度15分のホームルームが行われたのみですが、長男次男の私立学校ではすでに授業ノウハウがすっかり定着しています。学校間のICT格差がかなり開いているように感じます。

それでも、感染拡大の局面でニュース等で報じられたような、教室の密を避けるために一部の学校で試験的に行われた、対面授業とオンライン授業が選択できる「ハイブリッド型の授業」の試みに、私は公教育への希望を感じました。
コロナの影響で不登校の子も増えていると聞きますが、ハイブリッド型の授業が全国的に広まれば、不登校やいじめ、感覚過敏などで「教室にいるのがつらい」と感じる子の学びの選択肢を増やすことができます。離島や過疎地域などに住む通学負担が大きな子どもや、病気やケガで長期間登校できない子どもなどへの学びの保障にもなります。

また、地震などの災害リスクに加えて、近年は気候変動の影響で、「危険な暑さ」の猛暑日や、台風・豪雨・豪雪などの異常気象が増え、徒歩通学の子ども達がとても心配になることもありますし、感染症の流行は新型コロナウィルスだけに限りません。
最低限、各校でオンライン授業のノウハウを絶やさずにいれば、コロナ以外の理由でも、臨機応変にオンライン授業に切り替えられるので、子ども達の命や健康を守りながら、学びを止めずに済みます。

2.デジタル教科書の普及

2024年度より本格導入予定の「デジタル教科書」も、LD(学習障害/学習症)のある子どもの読み書きがラクになったり、忘れ物が多い子の心配事が減ったり、教科書すべてがタブレット一台に入れば子どもたちの過重なランドセルの負担を減らせたりできるので、私は大いに期待を寄せています。

ですが、文部科学省の「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議 第一次報告」(2021.6.8公表)によれば、デジタル教科書の発行状況は小中学校ともに約 95%に達しているものの(R3年度現在)、児童生徒への普及状況は「公立学校全体では 7.9%、公立の小学校では 7.7%、公立の中学校では 9.2%、公立の高等学校では 5.2%となっている」(R2.3.1.現在)とのこと。
つまりは、「モノはあるけど、使いこなせていない」状況で、まだまだ十分な活用の実践例が不足しているようです。

それでも、コロナを機に教育現場が重い腰を上げて、一歩でも二歩でも、導入の歩みを進めた実績は大きいでしょう。
デジタル教材を十分活用できれば、個別最適化された学習もしやすく、宿題も「音読・漢字書き取り・計算ドリル」以外の選択肢を増やせるので、デジタルネイティブの子ども達の学習意欲と効率がUPするのではないでしょうか。

そして、みんなが文房具のように学校でタブレットを使いこなしていれば、LDのある子どもが教室に持ち込んでも、誰も「〇〇さんだけズルい」だなんて言わないでしょうし、先生方がIT機器の取り扱いに慣れれば、親も理解を得るために何度も学校側と交渉しなくて済むハズです。

多忙な先生方にとっても、デジタル教材の活用で、板書や教材作り、プリント配布や採点、提出物のチェックや検温記録の管理などの負担も減るでしょう。

3.学校行事の工夫と効率化

ここ数年、多くの小中学校で、運動会や学習発表会などの行事を規模縮小しながらも、試行錯誤でなんとか工夫して実施していたことと思います。
今年度から、手洗いや消毒などはしつつも、「コロナ前と同じ形」で、運動会が実施される学校もあると思いますが、これは、保護者によって賛否が分かれるのではないでしょうか。

例えば、運動会での迫力ある組体操や、一糸乱れぬ動きの集団ダンスなどを観て感動する方もいれば、ケガや熱中症が心配だったりで「そこまで求めていない」という方もいるでしょう。
そして、以前は子ども達も先生方も、一ヶ月以上前から膨大な時間をかけて、運動会の練習を積み重ねていました。

率直に言えば、小学校の運動会の季節は、上の子たちも私も憂鬱でした。
なぜなら、その時期は休み時間を削りながら炎天下で事前練習が続き、子どもの心身に大きな負担がかかるので、毎年決まって登校しぶりが続いたからです。また、疲れや不満が溜まるのは他の子も同じなので、運動会の前後はトラブルが発生しやすく、いじめ要注意の季節でもありました。

ところがこの数年は、先生方は運動会の競技をさほど練習の必要がないレクリエーション的な内容に工夫してくれ、子ども達の心身の負担やトラブルも減りました。

私は、「徒競走はみんなでゴール」などと言わずに、運動が得意な子には活躍の場を与えてあげて欲しいですし、みんなでひとつのことに向かって協力することは子どものソーシャルスキルや心の成長にも繋がりますから、運動会自体はぜひ実施していただきたいと思っています。
でも、過剰な事前練習が必要だったり、安全面で不安があったり、整列や入退場の練習を繰り返したりすることはこれを機に見直し、より負担の少ない方法を継続してほしいですし、そのためには、保護者の側も学校行事に過剰な期待を寄せないであげて下さい。

特に、運動が苦手な子どもは、危険度・難易度の高い競技や、「みんなの動きがピッタリそろうまで」ダンスの練習をすると、心身に過剰な負担がかかる上、自分ができないせいで他の子どもたちの練習量までが増えれば、つらい思いをします。
体力がなかったり、感覚過敏などがある子どもは、大音量の音楽に合わせて何度も練習したり、身体接触の機会が多かったり、休み時間に休めないことが一ヶ月以上も続いたりすると、本番当日までに疲れ切ってしまいます。
先生方も、ただでさえ人手不足で多忙な中、日々の感染症対策まで追加されている上、更に学校行事に多くの労力を費やすと、子ども達に余裕のある接し方ができなくなるかもしれません。

この数年間のような工夫された運動会が定着すれば、児童生徒・先生方の負担が減り、保護者も、早朝から席取りや大人数分の弁当作りに追われたり、妊婦や乳幼児連れの親が長時間炎天下で立たなくて済みます。

同様に、学習発表会などの事前練習の負担の大きな学校行事は、効率のよい方法を柔軟に続けて頂ければ、学校側も新しい学習内容や感染症対応で圧迫されている授業時間に、少しは余裕ができるのではないでしょうか。
子どもたちも先生方も、休み時間は休みましょう。

4.全校集会などの合理化

長女の小学校では体育館での密を避けるために、全校集会がビデオ会議システムを使った各教室での「オンライン集会」に変更されました。

長男は私立中学に入学して、まず真っ先に「全校集会で体操座りをしなくていい」ことを、嬉々として報告してきました。
ADHD傾向のある彼にとって、小学校の体育館の硬い床の上で、狭いスペースに長時間姿勢を崩さずに黙ってじーっと座り続けることは、心底苦行だったようです。

長時間体操座りをしなくて済めば、成長期の子ども達みんなが、体への負担を減らすことができるのではないでしょうか。
また、全校集会のために、全児童・生徒を廊下に整列させて移動する時間の短縮にもなりますし、先生方の準備や後片付けの手間も減らせます。

こういった、小さな負担の積み重ねを1つでも2つでも減らして、合理化していくことで、学校の印象は徐々に柔らかく変わっていくと私は思っています。

5.欠席のネット連絡と書類のペーパーレス化

子どもの欠席時、コロナ前は連絡帳を近所の子に手渡しする方式でしたが、接触機会の感染リスクを避けるため、うちの子が通う小学校では「欠席連絡専用メールアドレス」ができました。
ほかにも、専用のグループウェアやSNSなど、「連絡帳以外の方法」で欠席を伝えることが可能になった学校は多いと思います。

「正直、もっと早くやってほしかった!」……と、思う保護者は多いのではないでしょうか。

なぜなら、連絡帳を手渡しするために、朝の忙しい時間に他のお宅を訪ねることは、預ける側・受け取る側双方の負担になるだけでなく、「帰り」も誰かが欠席した子の家に立ち寄る必要があったからです。
特に、低学年や、部活や塾のある子どもや、自宅同士が離れた子どもが遅い時間に1人で立ち寄るのは、防犯面でも心配でした。

そして、不登校傾向のある子とその親にとって、「連絡帳の手渡し」は、大きな心理的負担になっていたことと思います。
うちでは次男が小5の時、学校に行けない日が続いた時期がありました。
私は毎朝、連絡帳を同じ登校班の子に預けにゆき、帰りも同級生の女の子が遠回りして連絡帳をうちに届けてくれましたが、本当に申し訳ない気持ちでしたし、次男自身も、そのことをとても気にして負担に思っていたようです。

また、ほかのお子さんに連絡帳を預けると、登下校中などに、ちらっと「中身」を見てしまうこともありました。
時折、連絡帳には、発達面での気がかりや、クラス内の人間関係に関することなど、担任の先生にデリケートな相談内容を書くこともあるので、他のお子さんに預けるのは少々不安でした(以降、デリケートな相談内容は封書にするか、「お手すきの時にお電話頂けますか」とだけ書くようにしました)。

これらの悩みを一発解決したのが、欠席のネット連絡の導入です。ありがとうございます。

また、うちの子どもの小学校では、ネット連絡と同時に書類のペーパーレス化も進みました。
子どもの欠席時の他、忘れ物の多い子や、仕事で多忙な保護者や、(私のように)書類の整理が苦手な保護者も、学校からのお便りがネットでいつでも閲覧・ダウンロードできるようになったので大助かりです。
教頭先生も「紙代とインク代が大幅に節約できるし、担任の先生が各教室で紙を配る手間も減らせてよかった」とおっしゃっていました。
また、PTAの議決やアンケート回答も、ネットから回答フォームで送信できるようになったので、集計作業はもう不要です。

コロナ前には戻さないで。学校を誰もが頑張りすぎない環境へ。

コロナ以前は、学校生活のあらゆる場面で、子ども・先生・保護者に過剰に負担がかかっていた状況だったように思います。
それでも、なかなか柔軟に変われない印象を受けていた公教育の現場が、未知の感染症への対応を迫られたこの数年間は、学校をどんな子にとっても合理的で過ごしやすい環境に改善する千載一遇のチャンスでもありました。

何度も小学校側に理解や配慮を相談してきた私には、「ここで変われないことは、もう二度とムリかも」とすら思えます。

そして、学校を負担に感じているのは、発達障害・不登校傾向のある子だけではありません。
多くの子ども達・保護者、そして先生方が、様々な事情を抱える中で、無理をし続けているのです。
子ども達の笑顔につながること以外は、どうか、コロナ前に戻さずに、学校を誰もが負担なく、頑張りすぎない環境に改善されていくことを、社会全体で許容してあげてほしいと、私は切に願ってやみません。
文:大場美鈴(楽々かあさん)
(監修:井上先生より)
新型コロナの流行は私たちの社会や学校にとって大きな衝撃でしたが、デジタル化や遠隔での授業の浸透、行事の簡素化など、革新的な面も多くもたらしました。楽々かあさんの言われる通り、これらの変化の中にはコロナ収束後もニーズの多様性への対応として重要なヒントが含まれています。地域や学校の実情に合わせて、ぜひ継続して欲しいと思います。

このコラムを書いた人の著書

発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換
大場美鈴 (著)
あさ出版
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