放たれた夫のセリフに絶望。癇癪、夜泣き、孤独な自閉症育児のSOSは届かず――バラバラだった家族は、いま

2022/06/13 更新

わが子の障害に向き合うことがなかなかできず一番つらかった時期、私は身近であるはずの夫の記憶がほとんどありません。息子ほぺろうの癇癪がひどくなり出してから、そして正式に診断名がついてからその後しばらくの間、障害を受け入れられず私は精神的に暗闇の中。今思い返すと、当時は「私とほぺろうだけ世界から取り残された」という感覚で、夫と対話するということをしていませんでした。

ぼさ子
14455 View
監修者初川久美子のアイコン
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

ほぺろうの癇癪でつらかった時期、家族はバラバラ

夫とはすれ違いの生活だったころ
Upload By ぼさ子
自閉スペクトラム症と知的障害のあるわが家の息子ほぺろう。正式に診断が下りたのは3歳のときでした。

1歳半ごろから発達の遅れは気になってはいましたが、2歳を過ぎたあたりから手のつけられないレベルで癇癪が激しくなり、いよいよ『ほかの子とは違う』という現実を突きつけられていました。

当時の私は障害について検索するのに必死。改善する方法を検索して必死。障害じゃない可能性を検索して必死。…頭がおかしくなるくらい検索漬けの毎日でした。

しかも「私は母親なんだから子どものことをしっかりやらなくてはならない!」という変な意地を張っていたので、仕事のあるペー太(夫)に支障がないようにほぼ毎日別室で寝ていたし、ほぺろうのことはほぼ全て私がやっていました。

ただでさえ大変なほぺろうに私は24時間つきっきり。ほぺろうが何よりも最優先。ペー太とはすれ違い生活で会話は減り、そのころの夫の記憶がほとんどありません。

限界のとき…妻に放たれた夫のセリフ

3歳でほぺろうの診断名が出た当時の私の気持ちは、わが子の将来が見えなくて不安と絶望。

また「育児は母親が背負うもの」という間違った先入観が邪魔して、「癇癪で大暴れ」や「夜の寝つきが悪い」などなど…ほぺろうと二人っきりの閉鎖的な世界で(他人に会うと迷惑をかけるので)全てを私一人で抱え込んでいました。

毎日の癇癪と寝不足で心身はボロボロ。限界でしたが助けの求め方が分かりません。というか、もう正しい判断もできなくなっていたので「母親なんだから助けを求めてはいけない」と思っていました。

あるとき、追い詰められていた私はペー太に心配してほしくて「ほぺろうがいなくなっても後悔しないかも…」と心にもない言葉を出してしまいました。でも そんな屈折したSOSを理解する方が難しいでしょう。
SOSを出して夫に心配してもらえると思ったけれど
Upload By ぼさ子
遠回しなSOSは夫に伝わらなくて
Upload By ぼさ子
「ぼさ子がそんなに卑屈じゃ、ほぺろうがかわいそうだ」と言われてしまう
Upload By ぼさ子
そう言い残し、戸を閉めて行ってしまいました。

そのときは、「夫は私やほぺろうに無関心なんだと」思ったし、寄り添ってもらえないと感じました。そして、さらに夫に頼るということができなくなりました。

転機!全てのきっかけは私自身にあった

その後もずいぶん一人でもがき苦しんでいました。

でもやがて、地域のサポートや保育園にお世話になれるようになってから私の気持ちに少しずつ余裕が出てきました。そして就職も私にとって大きな転機だったと思います。決して自慢できませんが、家事がどんどん下手クソになっていったのです!

あまりにも上手く家事ができな過ぎて、逆に「ま、いっか!」と開き直るようになったせいか、助けの求め方が分からなかった私が自然にペー太を頼れるようになっていきました。

すると不思議なことに、なぜか家族仲が良くなってきました。ほぺろうがお父さんに懐くようになっていきました。
家族仲が良くなってきた理由を考えてみると
Upload By ぼさ子
変わったのは(周りではなく)私だ。と気づいて
Upload By ぼさ子
壁をつくっていたのは私自身だったんだと気づきました。

実は誰よりも息子を想っていたペー太

ほぺろうが6歳になった現在、今では子煩悩で ほぺろうのためなら何でもやってくれるペー太。最近になって初めて、診断が出た当時の気持ちを聞いてみました。

ペー太いわく、「診断が出たときはホッとした。その前からほぺろうはほかの子とは違うとハッキリ感じていたから、早く対策してあげたかった」「診断名が分かったから、ようやく適切なステップを踏めると思った」とのこと。

私は衝撃でした。私なんてむしろ障害じゃない可能性を探したりしていたのに、ペー太はスタートラインから心構えが違っていました。全然無関心なんかじゃなかった。診断名を聞いて「よし、これからだ」とペー太は思っていたのに、障害を受け入れられずに悲観してばかりの私を見て「何やってんの」となるのは当然だと思いました。

当時、ほぺろうのために何かしたかったのに、私が壁をつくっていたせいで手を出しにくかったらしい…。本当に最近までペー太の気持ちを知らず、対話してみないと分からないものだと実感しました。
当時の気持ちを語り合い、話してみて良かったと思う妻
Upload By ぼさ子
現在の気持ちも聞いてみました。ペー太いわく、「障害とは何か?と聞かれたら詳しくはよく分からないけど、”ほぺろうはほぺろう“としか思えない」とのこと。障害と向き合うと言うより、本人そのものと向き合おうとする子育ての本質を、意外にも父親であるペー太の方がつかんでいたことに驚かされました。

今ではほぺろうはすっかりお父さんっ子。相変わらず私に対しては優しくない夫ですが(笑)、ほぺろうへの愛情深さは本当に尊敬しています。
障害と向き合うと言うより、本人そのものと向き合おうとする子育ての本質をつかんでいたことに驚く
Upload By ぼさ子
執筆/ぼさ子
(監修:初川先生より)
夫婦の思いが分かり合えるに至るプロセスのシェア、ありがとうございます。はじめは、ぼさ子さんがまさに孤軍奮闘している思いだったのですね。お子さんの発達がゆっくりだったり癇癪がすごかったりして、なんかちょっと違うのでは…と思うこと、そして実際に診断が下りること。うすうす感づいてはいても、衝撃と困惑とさまざまあったことと思います。

大きな衝撃を受けたときの反応は人それぞれで、読者の方の中にも、ぼさ子さんのように思われる方も多くいらっしゃると思います。そして、“孤軍奮闘”になると、どうしても視野が狭くなってしまうものです。人は頑張りすぎると周りが見えなくなりがちなのはいかなる場合・状況でもそうなるものです。保育園や地域資源の利用、就職などで、さまざまな方のお力を借りる(というか、分業する、子どもと離れる時間を設け、子どもを見る良き支援者が増える)ことで、ぼさ子さんの場合には精神的なゆとりと物理的な支えを得たことが、視野が広がるきっかけだったように思います。

ぺー太さんのように、子どもの発達の遅れや診断を「よかった」と受け止める方もいらっしゃいますね。そうしたところについては、夫婦や家族の中であっても、どう受け止めているのかは聞いてみないとわからないものです。話してみたら、意外とわが子を「子」として見ていてくれた(障害の有無にかかわらず「子」として見るって素敵なことです)とのこと、素敵なパートナーさんですね。一緒に子育てを担う方の中に、そうしてどーんと構えて、子どもをかわいがってくれる人がいるというのは心強いですね。
生後6ヶ月で強烈な夜泣き、3歳で感じた違和感。でも「異常なし」と言われて…「何かある」の勘からつけ始めた育児日記が、後のASD診断に役立ってのタイトル画像

関連記事

生後6ヶ月で強烈な夜泣き、3歳で感じた違和感。でも「異常なし」と言われて…「何かある」の勘からつけ始めた育児日記が、後のASD診断に役立って

「どうして?」息子の障害を実母に嘆かれて。「かわいそう」じゃない!自閉症育児の胸の内のタイトル画像

関連記事

「どうして?」息子の障害を実母に嘆かれて。「かわいそう」じゃない!自閉症育児の胸の内

2歳で訪ねた発達クリニックで、激しい癇癪に「連れてこないで」と言われ。発達障害の診断もしてもらえず…深まる孤独とそれからのタイトル画像

関連記事

2歳で訪ねた発達クリニックで、激しい癇癪に「連れてこないで」と言われ。発達障害の診断もしてもらえず…深まる孤独とそれから

バナー画像
当サイトに掲載されている情報、及びこの情報を用いて行う利用者の行動や判断につきまして、正確性、完全性、有益性、適合性、その他一切について責任を負うものではありません。また、掲載されている感想やご意見等に関しましても個々人のものとなり、全ての方にあてはまるものではありません。
あわせて読みたい関連記事

あわせて読みたい関連記事

この記事を書いた人

ぼさ子 さんが書いた記事

感情表現できずイライラ、抱っこも共感も拒否!小1自閉症息子の気持ちの切り替え法は?ーー児童精神科医 三木先生に聞いてみた!のタイトル画像

感情表現できずイライラ、抱っこも共感も拒否!小1自閉症息子の気持ちの切り替え法は?ーー児童精神科医 三木先生に聞いてみた!

前回は『癇癪の理由の探り方』について三木先生にお話をうかがうことができました。でも、わが家の息子ほぺろうは原因を解消したとしても気持ちの切...
発達障害のこと
6383 view
2022/04/20 更新
どうして癇癪をおこすの?6歳自閉症息子が荒れるワケ、母の「突拍子もない想像力」がカギに?ーー児童精神科医 三木先生に聞いてみた!のタイトル画像

どうして癇癪をおこすの?6歳自閉症息子が荒れるワケ、母の「突拍子もない想像力」がカギに?ーー児童精神科医 三木先生に聞いてみた!

赤ちゃんのころから癇癪が激しいわが家の息子ほぺろう。もうすぐ特別支援学校の一年生になるというのに、いまだにすぐ癇癪を起こし、しかもそれが一...
発達障害のこと
12434 view
2022/03/30 更新
6歳で発語ゼロの自閉症息子。いつか話せるようになる?絵カードを使ったほうがいい?親ができることはーー児童精神科医 三木先生に聞いてみた!のタイトル画像

6歳で発語ゼロの自閉症息子。いつか話せるようになる?絵カードを使ったほうがいい?親ができることはーー児童精神科医 三木先生に聞いてみた!

自閉スペクトラム症と知的障害のあるほぺろうは現在6歳ですが発語はゼロ。「いつか必ず喋る」と発達クリニックで言われたりしますが、正直そうなる...
発語・コミュニケーション
16192 view
2022/02/23 更新
放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。