PTSD(心的外傷後ストレス症)と発達障害の違いは?ADHD(注意欠如多動症)との類似点、ASD(自閉スペクトラム症)とトラウマの関係やPTSD(心的外傷後ストレス症)の予防策を解説【医師監修】

ライター:マンガで分かる発達障害のキホン
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PTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス症)は、つらい出来事がトラウマとなり、さまざまな症状を発症する疾患です。また、ADHD(注意欠如多動症)の症状の中にはPTSD(心的外傷後ストレス症)の症状と似ている点があったり、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもの中にはPTSD(心的外傷後ストレス症)だと診断されなくとも、こころの傷によって苦しんでいる場合もあります。

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監修: 増田史
精神科医、医学博士
滋賀医科大学 精神医学講座 助教
NPO法人ストップいじめナビ 特任研究員
精神疾患の偏見解消に向けた活動や、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症の脳機能に関する研究を行なっている。

PTSD(心的外傷後ストレス症)と発達障害の関連性とは?

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス症)は、つらい出来事がトラウマとなり、さまざまな症状を発症する疾患です。

ADHD(注意欠如多動症)の症状の中にはPTSD(心的外傷後ストレス症)の症状と似ている点があったり、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもの中にはPTSD(心的外傷後ストレス症)だと診断されなくとも、こころの傷によって苦しんでいる場合もあります。

※この文章を読んで、自分のトラウマがよみがえってきたり、気持ちがつらくなった場合には、一旦画面を閉じましょう。可能であればゆっくりと深呼吸をして、今が安全であることを確認しましょう。気持ちが落ち着いたら、また再開してくださいね。
ADHD(注意欠如多動症)の症状の中にはPTSD(心的外傷後ストレス症)の症状と似ている点があったり、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもの中にはPTSD(心的外傷後ストレス症)だと診断されなくとも、こころの傷によって苦しんでいる場合もあります。
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ADHD(注意欠如多動症)とPTSD(心的外傷後ストレス症)には・大人しく座っていられない・すぐにかんしゃくを起こす・診察中に突然、病室から飛び出すのような類似性があります
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ADHD(注意欠如多動症)とPTSD(心的外傷後ストレス症)を正しく見分けるには子どもの過去にどのようなことがあったのかや生育歴、発達歴の情報が大切になってきます
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ASD(自閉スペクトラム症)を特性を持つ子どもには「タイムスリップ現象」がみられることがあります
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トラウマになるようなことを経験しやすい、自分の身体に起こっていることと説明するのが難しい、気持ちの切り替えが難しいなどが原因として挙げられます
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ADHD(注意欠如多動症)とPTSD(心的外傷後ストレス症)の類似性

ADHD(注意欠如多動症)とPTSD(心的外傷後ストレス症)の症状には、実は似ている点が多くあると言われています。ADHD(注意欠如多動症)のある子どもは、不注意、多動性、衝動性の特性があります。

ADHD(注意欠如多動症)のある子どもに見られる行動として、
・大人しく座っていられない
・すぐにかんしゃくを起こす
・診察中に突然、病室から飛び出す

といったことがあります。

ですが、PTSD(心的外傷後ストレス症)の症状としても、これらと似たような症状が見られることがあります。そのため、子どもの行動から、その原因がADHD(注意欠如多動症)の特性によるものなのかPTSDの症状として出ているものなのかを区別することは、専門家であっても難しい場合があります。

ADHD(注意欠如多動症)とPTSD(心的外傷後ストレス症)を正しく見分けるためには、子どもの過去にどのようなことがあったのかや生育歴・発達歴の情報が大切になってきます。

子どもと一番長い時間を過ごしてきたのは、医師や専門家、学校の先生ではなく家族です。少しでも気になる出来事があったり、ある日を境に急にADHD(注意欠如多動症)と思われるような症状・傾向が見られるようになったと感じたときは、医師に伝えるとよいでしょう。

ASD(自閉スペクトラム症)とトラウマ

ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、その特性から、苦しんでいることがあります。

「タイムスリップ現象」と呼ばれる症状がASD(自閉スペクトラム症)のある子どもに多くみられます。タイムスリップ現象とは過去の楽しかったことやつらかった出来事を突然思い出す症状です。この現象が起こりやすいという面から、ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、(楽しい記憶のみでなく)過去にいじめや暴力を受けたときのつらい記憶について急に思い出し、まるで今その経験をしているかのように振る舞ってしまうことがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもが、フラッシュバックまたはネガティブな記憶のタイムスリップ現象に関して抱えている問題には、

・トラウマになるような経験をしやすい
・自分の身体に起こっていることを説明することが難しい
・気持ちの切り替えやコントロールが難しい


といったことが要因として挙げられます。

トラウマになるような経験をしやすい

ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは、定型発達の子どもに比べるとストレスを感じやすい環境で生活していることが多くあります。
感覚過敏のある子どもにとっては、普段の教室にいるだけでもストレスがたまっていくことが珍しくありません。

また、うまく友人との関係性が構築できないという苦痛や、安心できるルーティンが崩される苦痛を受けやすいことなども挙げられます。

自分の身体に起こっていることを説明することが難しい

ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもにとって、自分の身体で起きていることを正確に周囲に伝えることは困難を伴うことが多いです。子どもからのSOSがなく、親や学校の先生であっても、子どもがタイムスリップ現象で困っていることに気づけないことがあります。

過去にいじめられたり、人間関係でうまくいかなかったりしたことを克服したように見えても、子どもが未だにその経験によって苦しんでいることもあります。

気持ちの切り替えやコントロールが難しい

ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもはパニックや癇癪、フリーズ(どうすればいいのか混乱してしまい、体と思考が凍りつく)を起こしやすかったり、気持ちの切り替えがうまくいかない傾向にあります。

ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもが次のような行動をとったときには、トラウマが関連している可能性があるので、子どもに最近なにかあったか聞いてみるといいでしょう。

・新たに、攻撃的・破壊的な行動をするようになったとき
・夜、寝られなくなるなどの身体に変化が起きたとき
・社会性、コミュニケーションにおいて、症状が悪化したとき
・常同行動が増えたとき

常同行動とは、手をひらひらしたり、体を揺らしたり、奇声を上げるなど、一見無目的に同じ行動を繰り返すことです。
参考:友田 明美、杉山 登志郎、谷池 雅子/編集『子どものPTSD-診断と治療-』(診断と治療社、2014年)
https://www.amazon.co.jp/dp/4787821024
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