自閉症息子「虫歯かも?」と思う前に…今だから分かる、障害児ほど「歯医者慣れ」が必要な切実な理由
ライター:べっこうあめアマミ
多くの子どもにとって、歯医者さんはあまり行きたくない、ちょっと嫌な場所ですよね。発達障害などで感覚過敏があったり、じっと座っているのが苦手だったりすると、その苦痛はさらに大きなものだと思います。初めての場所で、どんなことをされるのか分からない……見通しが立たない不安に襲われるお子さんもいるでしょう。何らかの障害や特性がある子どもを育てている親御さんの、悩みの種になりがちな歯医者さん問題。
私と自閉症の息子が取り組んでいることをお伝えしたいと思います。
監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
かかりつけの歯医者さんはありますか?きっかけは「親の会」でのお話
たとえ発達がゆっくりでも、甘いものは大好きな子どもたち。それなりの年齢になり、何でも食べるようになってくれば、虫歯などの口腔内トラブルに見舞われることもあるはずです。私もそんな不安はありましたが、何となくその不安には蓋をして、長らく息子を育ててきました。しかし、ある日参加した地域の「親の会」のお話し会で、考えを改めることになったのです。
そのお話し会では、すでに成人した障害があるお子さんの親御さんたちが、ご自身の経験談などを話してくれていました。その中で、歯科治療の話題が出たのです。お話しくださった方のお子さんには知的障害があるということでしたが、あるとき、虫歯になってしまったそうです。しかし、街の歯医者さんでは暴れてしまって治療ができず、大きな専門の病院に通って治療をすることになり、とても大変だったそうです。
知的障害に限らず、発達障害などさまざまな特性があるお子さんに言えることですが、虫歯になってもこのように暴れてしまい、治療にならないケースは少なくないのではないでしょうか。子どもたちにとっては口の中に不思議なものを入れられるだけでも不快なのに、変な味がしたり、痛かったり、その上長時間じっとしていなければならないのです。これは、受け入れがたい苦痛でしょう。
でもだからこそ、子どもが小さいときから取り組んでほしいことがあるとも言われました。それは「虫歯になってから」ではなく、「虫歯になる前から」歯医者さんに通うことです。まずは診察台に座れるようになるところから始め、歯磨きだけだったり、フッ素を塗るだけだったり、子どもの様子を見ながらゆっくりと、「歯医者さんに慣れる」ことができるようにしていきます。かかりつけの歯医者さんを決めて定期的に通うことで、最初は入ることさえ抵抗があった子どもも、だんだん慣れていくのではないでしょうか。
虫歯になってから初めて歯医者さんに行くと、どうしても痛い治療をせざるをえません。そうすると子どもの中に「歯医者さん=怖い」というイメージができてしまい、拒否感がより強くなってしまいます。でも、何も痛いことをされないときに、ただ楽しい気持ちで通う習慣をつけていけば、結果は変わっていくかもしれません。お子さんが、歯医者さんという場所やそこで会う人たちに心を開き、信頼関係ができていることは、スムーズな治療のために大切なことです。
このお話を聞いて、私は大いに納得し、息子にもかかりつけの歯医者さんを探したいと思いました。
そのお話し会では、すでに成人した障害があるお子さんの親御さんたちが、ご自身の経験談などを話してくれていました。その中で、歯科治療の話題が出たのです。お話しくださった方のお子さんには知的障害があるということでしたが、あるとき、虫歯になってしまったそうです。しかし、街の歯医者さんでは暴れてしまって治療ができず、大きな専門の病院に通って治療をすることになり、とても大変だったそうです。
知的障害に限らず、発達障害などさまざまな特性があるお子さんに言えることですが、虫歯になってもこのように暴れてしまい、治療にならないケースは少なくないのではないでしょうか。子どもたちにとっては口の中に不思議なものを入れられるだけでも不快なのに、変な味がしたり、痛かったり、その上長時間じっとしていなければならないのです。これは、受け入れがたい苦痛でしょう。
でもだからこそ、子どもが小さいときから取り組んでほしいことがあるとも言われました。それは「虫歯になってから」ではなく、「虫歯になる前から」歯医者さんに通うことです。まずは診察台に座れるようになるところから始め、歯磨きだけだったり、フッ素を塗るだけだったり、子どもの様子を見ながらゆっくりと、「歯医者さんに慣れる」ことができるようにしていきます。かかりつけの歯医者さんを決めて定期的に通うことで、最初は入ることさえ抵抗があった子どもも、だんだん慣れていくのではないでしょうか。
虫歯になってから初めて歯医者さんに行くと、どうしても痛い治療をせざるをえません。そうすると子どもの中に「歯医者さん=怖い」というイメージができてしまい、拒否感がより強くなってしまいます。でも、何も痛いことをされないときに、ただ楽しい気持ちで通う習慣をつけていけば、結果は変わっていくかもしれません。お子さんが、歯医者さんという場所やそこで会う人たちに心を開き、信頼関係ができていることは、スムーズな治療のために大切なことです。
このお話を聞いて、私は大いに納得し、息子にもかかりつけの歯医者さんを探したいと思いました。
障害があると診てもらえない?難航する歯医者さん探し
「息子にかかりつけの歯医者さんを」と思いましたが、実際に探してみると、なかなか障害がある子どもを快く受け入れてくれる歯医者さんは見つかりませんでした。街の診療所ですと人手も限られますし、患者が暴れた場合にしっかり拘束することもできません。口腔内は繊細な治療が必要となりますから、やはり歯医者さん側も不安があるのでしょう。
そんなある日、「小児歯科」と看板に掲げている歯医者さんに、当時1歳だった娘(息子の妹)の歯科健診に行きました。娘はおとなしく診察台に座って健診を受け、歯医者さんも褒めてくれました。そして、「今後も定期的にフッ素塗布などしにくるといいよ」とすすめてくれたのです。ちょうど家からも近くて良さそうな歯医者さんだと思った私は、息子のことが頭をよぎり、「今度、この子のお兄ちゃんも連れてきていいですか?」と聞いてみました。すると歯医者さんは何の迷いもなく「どうぞ連れてきてください」と言ってくれました。
しかし、その後私が息子に障害があることを話し始めると、歯医者さんは急に別人のように歯切れが悪くなったのです。娘の通院はぜひにとすすめてくれるのに、息子の通院は、本人を見てもいないのに拒まれる。致し方ないかもしれませんが、親としてはわが子2人に明らかな差がある対応をされたようで、少し悲しくなりました。
そんなある日、「小児歯科」と看板に掲げている歯医者さんに、当時1歳だった娘(息子の妹)の歯科健診に行きました。娘はおとなしく診察台に座って健診を受け、歯医者さんも褒めてくれました。そして、「今後も定期的にフッ素塗布などしにくるといいよ」とすすめてくれたのです。ちょうど家からも近くて良さそうな歯医者さんだと思った私は、息子のことが頭をよぎり、「今度、この子のお兄ちゃんも連れてきていいですか?」と聞いてみました。すると歯医者さんは何の迷いもなく「どうぞ連れてきてください」と言ってくれました。
しかし、その後私が息子に障害があることを話し始めると、歯医者さんは急に別人のように歯切れが悪くなったのです。娘の通院はぜひにとすすめてくれるのに、息子の通院は、本人を見てもいないのに拒まれる。致し方ないかもしれませんが、親としてはわが子2人に明らかな差がある対応をされたようで、少し悲しくなりました。
出会いは突然に!息子を受け入れてくれた歯医者さん
その後しばらくして、今度は娘が保育園で歯をぶつけてしまい、またどこかの歯医者さんで診てもらわなければならなくなったときのことです。前回の苦い思い出を踏まえ、今度は別の歯医者さんに行ってみました。そして娘の治療後、またしても私は、歯医者さんにおずおずと息子のことを切り出し、障害がある子どもでも通院は可能か聞いてみました。
すると、歯医者さんはさらっと快諾してくれたのです。その歯医者さんも、自分は障害児「専門」ではないとおっしゃっていましたが、「とりあえず連れてきてください」と言ってくださり、後日息子を連れていきました。
その歯医者さんは、私が親の会で言われたことと同じことをおっしゃっていました。「息子さんにとって歯医者さんが嫌な場所にならないように、まずは信頼関係をつくりたい、だから無理に何かをしようとせず、ゆっくり進めていきますね」と話してくれました。
まずは診察室に入り、診察台に座るところからです。息子は最初は多少緊張があったと思いますが、歯医者さんの人柄もあって安心したのか、初日からおとなしく診察台に座ることができました。診察台が倒れることには少し抵抗があるようでしたが、歯磨きをしてもらい、口の中に異常などがないかも診てもらえました。最後、息子が少しだけ嫌なそぶりを見せたので、その日はそこで終わりました。息子はたくさん褒められて、ご機嫌で帰宅。私もホッとしたのを覚えています。
歯医者さんの提案で、最初はお互いの信頼関係をつくることと慣れるために、1ヶ月に1回くらいのペースで通いました。そうして歯磨きや、適切なタイミングでフッ素塗布などをしてもらいつつ、息子がだいぶ慣れてきた今は2、3ヶ月に1回くらいのペースで通っています。
すると、歯医者さんはさらっと快諾してくれたのです。その歯医者さんも、自分は障害児「専門」ではないとおっしゃっていましたが、「とりあえず連れてきてください」と言ってくださり、後日息子を連れていきました。
その歯医者さんは、私が親の会で言われたことと同じことをおっしゃっていました。「息子さんにとって歯医者さんが嫌な場所にならないように、まずは信頼関係をつくりたい、だから無理に何かをしようとせず、ゆっくり進めていきますね」と話してくれました。
まずは診察室に入り、診察台に座るところからです。息子は最初は多少緊張があったと思いますが、歯医者さんの人柄もあって安心したのか、初日からおとなしく診察台に座ることができました。診察台が倒れることには少し抵抗があるようでしたが、歯磨きをしてもらい、口の中に異常などがないかも診てもらえました。最後、息子が少しだけ嫌なそぶりを見せたので、その日はそこで終わりました。息子はたくさん褒められて、ご機嫌で帰宅。私もホッとしたのを覚えています。
歯医者さんの提案で、最初はお互いの信頼関係をつくることと慣れるために、1ヶ月に1回くらいのペースで通いました。そうして歯磨きや、適切なタイミングでフッ素塗布などをしてもらいつつ、息子がだいぶ慣れてきた今は2、3ヶ月に1回くらいのペースで通っています。