18トリソミー(エドワーズ症候群)の症状、特徴は?出生前診断で分かる?原因や遺伝、予後や治療法、21トリソミーや13トリソミーとの違いも解説【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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18トリソミー(エドワーズ症候群)とは、18番染色体が3本あるために、成長・発達の遅れやさまざまな疾患・合併症を持つ体質です。具体的に18トリソミーにはどのような特徴や症状があるのでしょうか。原因や遺伝との関係性、治療法や予後など専門家監修のもと解説します。

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監修: 大橋博文
埼玉県立小児医療センター遺伝科 部長
先天異常症候群の診療において、遺伝学的精密診断と健康管理プログラムの運用ならびに種々の先天異常症候群の集団外来の開催を連携した包括的支援に取り組んでいる。

18トリソミー(エドワーズ症候群)とは――どのような特徴・症状がある?

18トリソミーとは、18番染色体が3本あるために、成長・発達の遅れやさまざまな疾患・合併症を持つ体質です。1960年代にイギリスのジョン・H・エドワーズらによって報告されたことにちなみ「エドワーズ症候群」とも呼ばれています。約3,500~8,500人に1人の割合で誕生する、比較的頻度の高い染色体異常症です。男:女=1:3で、女児に多く見られます。半数以上は生後1週間以内に亡くなり、生後1年まで生存する割合は約10%とされてきました。

父親・母親それぞれから受け継いだ染色体は23対(1~22番の常染色体と1対の性染色体)あり、それぞれ2本で1対となり、合計46本あります。トリソミーとは、何らかの原因によってある染色体が1本多く存在し、2本ではなく3本になった状態のことをいい、染色体が合計47本となります。染色体がトリソミーとなって染色体異常症になることを、「トリソミー症候群」と呼びます。何番染色体が3本かによってあらわれる症状などが異なります。

具体的に18トリソミーにはどのような特徴や症状があるのでしょうか。

18トリソミーの主な特徴や症状

18トリソミーの主な特徴や症状として、胎児期からの成長障害が見られ、出生時も低身長であることなどが挙げられます。また、重い知的障害を伴います。特徴として、下記のものが挙げられます。

頭部:重度の小頭症、後頭部突出など

先天性心疾患:大部分のお子さんに心室中隔欠損があります。また、その3分の2では心房中隔欠損や動脈管開存も合併しています。

呼吸器:横隔膜弛緩症、上気道閉塞、無呼吸発作など

消化器:食道閉鎖、鎖肛、胃食道逆流など

泌尿器:馬蹄腎、水腎症、そけいヘルニアなど

筋骨格系:多指症、合指症、 内反足と揺り椅子状足底、橈側欠損(親指側の形成に特徴がある状態)、関節拘縮、側弯症など

:変形を伴う耳介低位、難聴など

そのほか、腎芽腫(ウィルムス腫瘍)や肝芽腫などの悪性腫瘍が見られることもあります。
18トリソミーがなりやすい内反足のイラスト
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18トリソミーのその他の合併症

先天性心疾患に基づく左右シャント(欠損孔の存在によって本来はない左心室から右心室への血流)によりうっ血性心不全や肺高血圧が進展しやすくなります。

また、消化器や呼吸器に病変が起こることが多く、無呼吸発作による呼吸不全をきたしやすく、これが心疾患とともに生命予後に大きく影響すると言われています。
参考:18トリソミー|MSDマニュアル
https://msdmnls.co/3TGNAMk
参考:18トリソミーの子どもと家族地域で暮らすこと|東京薬科大学
https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000792590.pdf

18トリソミー(エドワーズ症候群)の原因は?遺伝との関係はあるの?

トリソミーとは何番目かの染色体が1本多い状態です。すなわち、18トリソミーは、18番目の染色体が本来2本のところ3本の状態で生まれてくる先天異常症候群で、遺伝子の量的不均衡が生じることにより症状があらわれるとされています。

18トリソミーの考えられる原因と遺伝との関係

受精卵は「減数分裂」という仕組みにより、父親の精子と母親の卵子から各染色体をそれぞれ1本ずつ受け継ぐことができます。しかしこの過程で、何らかの原因で18番染色体がうまく分裂せず2本とも精子もしくは卵子に入ってしまう場合があります(染色体不分離)。2本の18番染色体を持った精子もしくは卵子が、正常な精子や卵子(1本の18番染色体を持つ)と受精すると、結果的に受精卵には18番染色体が3本存在してしまいます。

また18トリソミーは染色体(遺伝子の担体)の異常によって起こる疾患ですが、両親の染色体にもともとなんらかの原因があってそれが子どもに遺伝するというわけではなく「あくまでも″突然変異″によって起こりうること」と考えられています。

13トリソミー(パトウ症候群)、21トリソミー(ダウン症候群)との違いは?

通常、常染色体のトリソミー(1本全体が増えている場合)がある場合は胎内で死亡することがほとんどと言われています。染色体異常があっても出生の可能性が比較的高いほかの代表的な例として、13トリソミー、21トリソミーが挙げられます。13トリソミーとはどのような違いがあるのでしょうか。

13トリソミー(パトウ症候群)
パドウ症候群とも言われ、13番染色体が3本存在するトリソミーの染色体異常です。5,000~12,000人に1人の確率で生まれ、寿命は生後~数ヶ月と言われていますが、医学の発達に伴い、近年は数年を超えて長期の生存者もいます。

21トリソミー(ダウン症候群)
ダウン症候群とも言われ、21番染色体が3本存在するトリソミーの染色体異常です。600〜800人に1人という比較的高い確率で生まれます。合併症などの治療により、この20~30年で飛躍的に平均寿命が延び、寿命は約60年です。

13トリソミー、21トリソミーともに、18トリソミーと同様さまざまな身体的症状や特徴、合併症などを持って生まれてきます。先天性心疾患や成長障害など重複する症状も多く見られますが、疾患ごとに症状の違いもあります。
参考:18トリソミーとは?身体的特徴や原因について |NIPTJAPAN
https://niptjapan.com/faq/18%e3%83%88%e3%83%aa%e3%82%bd%e3%83%9f%e3%83%bc/#:~:text=18%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%BD%E3%83%9F%E3%83%BC%EF%BC%88,%E7%95%B0%E5%B8%B8%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
参考:染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群の疾患一覧の疾患一覧|小児慢性特定疾病情報センター
https://www.shouman.jp/

18トリソミー(エドワーズ症候群)は出生前や出生後に調べられるの?

18トリソミーであるのか診断を確定するためには、染色体検査を受ける必要があり、出生前、出生後どちらでも受けられます。どのタイミングで、どのような検査を受けることができるのか解説します。

出生前の「非確定的検査」と「確定的検査」

出生前に行うことができる検査は、「非確定的検査」と「確定検査」の二つに分けられます。非確定的検査を実施した後に染色体異常の可能性があった場合は、確定的検査を実施します。

非確定検査
1.超音波(エコー)検査(胎児精密超音波検査)…妊娠11~13週ごろに赤ちゃんの首の後ろのむくみ(胎児後頚部浮腫)をみる検査です。トリソミーの胎児は、このむくみの増加が認められます。

2.母体血清マーカー検査…妊婦の血中の成分を調べ、染色体異常の確率を予測するスクリーニング検査です。少量の血液を採取し、10日ほどで結果が出ます。

3.コンバインド検査…コンバインドは「組み合わせ」という意味で、超音波検査と母体血清マーカー検査を組み合わせて行う検査です。単体の検査よりも高い精度が期待できます。妊娠11週から13週6日までに行うことができます。

4.新型出生前診断(NIPT)…妊婦の血液中にある胎児の細胞のDNA断片を調べ、そこから染色体異常の可能性を判断します。妊娠9~10週目以降から受けることができます。

確定検査
上記の非確定診断で染色体異常の可能性が高いと診断された場合、確定診断を受けることになります。

1.羊水穿刺…細い穿刺針を用いて羊水を吸引し、検体(羊水中の胎児細胞)を採取します。妊娠15週以降で実施可能な検査(羊水検査)です。

2.絨毛採取…絨毛は妊娠早期の胎盤の一部で、それを採取して行う検査(絨毛検査)です。羊水検査に比べてより早く、妊娠11~14週で実施可能です。

3.採取した検体で染色体検査を行い、18番染色体が3本あることが確かめられれば、「18トリソミー症候群」と確定診断されます。

出生後に検査を行う場合

赤ちゃんの身体的外見や特徴から18トリソミー症候群が疑われた場合、血液を用いた染色体検査を行って診断を確定させます。18トリソミーの診断確定後には病状や合併症の可能性を考慮し、MR・CT検査、X線検査、眼科・耳鼻科(聴覚)評価など、必要な検査を行います。
厚生労働省ホームページ「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-kodomo_145015_00008.html
慶應義塾大学病院ホームページ「出生前診断」
http://www.obgy.med.keio.ac.jp/clinical/birth/special.php
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