「指定難病医療費助成制度」とは?対象となる疾患、限度額、手続き方法、小児慢性特定疾患との違いや働き方など専門家が回答【行政書士監修】

ライター:発達障害のキホン
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治療法が確立されていない難病のなかで、厚生労働大臣が定める疾患を「指定難病」といいます。治療が難しく、また高額になる指定難病の患者の医療費の負担を軽減するためにその一部を助成するのが「指定難病医療費助成制度」です。今回は、そもそも指定難病にはどんな疾患があるのか、申請手続きや助成内容がどのようなものなのかを紹介していきます。

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監修: 渡部伸
行政書士
親なきあと相談室主宰
社会保険労務士
慶應義塾大学法学部卒後、出版社勤務を経て、行政書士、社会保険労務士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。現在、渡部行政書士社労士事務所代表。自身も知的障害の子どもを持ち、知的障害の子どもをもつ親に向けて「親なきあと」相談室を主宰。著作、講演など幅広く活動中。
目次

指定難病とは?種類は?どんな疾患が指定されている?

指定難病とは?

厚生労働省は治療が確立されていないなど、一定の条件を満たした疾患を「難病」としています。さらにそのなかで、患者数が少ないなどプラスの要件を満たす疾患を「指定難病」としています。

難病と指定難病の違いとは

難病と指定難病にはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれの条件を比べることで、難病と指定難病の違いを確認していきましょう。

難病の条件
・治療法が確立されていない
・発症の構造が明らかではない
・希少な疾患である
・長期の療養を必要とする


指定難病の条件
上記、難病の4つの条件に加えて以下の2つの条件が加わります。
・患者数が一定の人数に達しないこと(現在の基準は、18万人未満あるいは人口の0.142%未満となっている)
・客観的な診断基準、またはそれに準ずる基準が確立している

難病政策の経緯

日本の難病政策は1965年ごろから始まりました。その発端となったのが「スモン(亜急性脊髄視神経症)」という疾患です。スモンは原因不明の奇病と社会問題になり、「難病」という言葉が社会に認知されるようになりました。

1972年には政府が難病対策要綱を策定。難病は以下のように定義されています。
(1)原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残す恐れが少なくない疾病
(2)経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病

引用:難病とは |厚生労働省
出典:https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/pdf/06e_3_2.pdf
政府は難病政策として「調査研究の推進」「医療施設の整備」「医療費の自己負担の解消」の3つを掲げ、研究などによる疾患の解明はもちろん、診療整備、医療費を公費負担なども目指すことになったのです。

当時調査研究の対象だったのは、スモンを含む8疾患のみでした。しかし、その後疾患の数は増え続け、56疾患が特定疾患治療研究事業(医療費助成事業)の対象となったのです。2011年には対象患者数はおよそ78万人に。予算は400億円を超えました。

その後、「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」が2014年に成立しました。これは、持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革推進に関する法律として成立したものです。その1年後、2015年に施行され、治療費の公費負担は都道府県と国が半分ずつ負担することになりました。特定疾患は、指定難病へと名称が変わり、その数は2015年から2018年で56疾患から331疾患にまで拡大したのです。2023年3月現在は338の疾患が認定されています。

指定難病の種類

現在指定難病に認定されているのは338の疾患です。そのうち、患者数が多い上位5位の指定難病は以下の通り。それぞれの症状を紹介します。

・潰瘍性大腸炎
持続する血便、下痢、腹痛があり、発熱や体重減少、貧血などを起こすこともあります。

・パーキンソン病
ふるえや動作緩慢、筋固縮、転びやすいなど、体の動きに障害があらわれます。

・全身性エリテマトーデス
本来体を守る免疫系が自分自身を攻撃することで発熱、関節炎、湿疹などが起こります。

・クローン病
口から肛門までの全消化器管で炎症が起こり、下痢や腹痛、発熱、貧血、体重減少などを引き起こします。

・後縦靱帯骨化症
下肢の脱力やしびれなどが起き、重症になると歩行困難などの症状も出現します。

指定難病医療費助成制度とは?限度額はある?助成内容、対象者、申請手続きなど

指定難病医療費助成制度は、指定された疾患の医療費の自己負担分の一部を公費で負担するものです。その内容や対象となる費用、また申請手続きなどを紹介します。

助成内容

指定難病医療費助成制度は、指定された医療機関で行う医療費のみに適用されるものです。対象になるのは指定難病治療にかかった費用のみ。指定難病以外の疾患、たとえば風邪などの治療にかかった医療費は助成の対象にはなりません。

対象となる費用
・指定医療機関で難病の治療(保険診療)にかかった窓口での自己負担額
・薬局(指定医療機関)での保険調剤の自己負担額
・訪問看護事業者(訪問看護ステーション)を利用したときの利用者負担額 など

対象とならない費用
・認定された難病以外の病気の医療費
・指定医療機関以外の医療機関で受けた治療の医療費
・入院時の食費、差額ベッド代 など

自己負担額

指定難病医療費助成制度を使う場合の医療費の自己負担上限額は、最低2,500円から最高30,000円です。全ての人が同一の限度額というわけではなく、加入している健康保険の世帯単位の市区町村民税の課税状況や申請の時期によりそれぞれ違いが発生します。ただし、人工呼吸器などの装着者の自己負担上限額は1,000円です。
指定難病医療費助成制度を使う場合の医療費の自己負担上限額は、最低2,500円から最高30,000円です。全ての人が同一の限度額というわけではなく、加入している健康保険の世帯単位の市区町村民税の課税状況や申請の時期によりそれぞれ違いが発生します。ただし、人工呼吸器などの装着者の自己負担上限額は1,000円です。
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また、長い期間に渡って高額な医療必要な患者には、軽減された負担上限額が設定されています。指定難病の医療費が総額5万円を超える月が申請日の月以前の12ヶ月で既に6回以上ある患者が対象です。

申請手続き

指定難病医療費助成制度を利用するには、以下の必要な書類を揃えて都道府県・指定都市に申請します。受付窓口は、都道府県によって異なる場合がありますので、事前の確認が必要です。
指定難病医療費助成制度申請に必要な書類
・特定医療費の支給認定申請書
・診断書(臨床調査個人票)
・住民票
・世帯の所得を確認できる書類
・保険証の写し
・同意書など
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提出した書類を基に都道府県・指定都市による審査が行われるのです。症状の程度が認定基準に該当するとき、認定基準には該当しない場合でも、高額な医療の継続が必要と認められた場合に支給が認定されます。その後、特定医療費(指定難病)受給者証が交付されるという流れです。申請から医療受給者証の交付までは3ヶ月ほど。その間に指定医療機関でかかった医療費は、医療受給者証が交付された後で払戻し請求をすることができます。

指定難病医療費助成制度について、よくある疑問を専門家に聞いてみました

指定難病医療費助成制度について解説してきましたが、「より詳しいことを知りたい」「まだよく分からないことがある」という方も少なくないのではないでしょうか。今回は指定難病医療費助成制度についてよくある疑問を専門家に質問してみました。Q&A形式でその内容を紹介します。
次ページ「Q:指定難病医療費助成制度と小児慢性特定疾患の医療費助成制度の違いや関連を教えてください 」

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