発達障害中1息子は「自由」が苦手。テーマ決めに毎日2時間超…終わらない宿題に、母がした提案とは?

ライター:丸山さとこ
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ASDがある息子コウの通っている中学校では、基本的に毎日自主学習の宿題があります。
提出用のノートに書く学習内容を自由に決められるからこそ、「テーマが決まらない」「どこまで書けばいいか決められない」とコウにとっては負担の大きな宿題になっていました。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

自主学習のテーマが決まらないコウでした

コウの通っている中学校では、基本的に毎日自主学習の宿題があります。自分がやりたいと思った学習をまとめればよいのですが、コウには難しいようです。(机に向かっているコウ。真っ白なノートを前に「テーマが決まらない」「テーマは決まったけどどこまで書けばいいか決められない」と困っている)
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「自由にテーマを決められる」からこそ難しい?自主学習とコウ

コウの通っている中学校では、基本的に毎日自主学習の宿題があります。テーマを決めてノートをまとめたり問題の解答を書いていったりするものなのですが、コウにとっては難しい宿題でした。『自由にテーマを決められるから』です。

「〇〇の単元をまとめなさい」という指定はなく、自分がやりたいと思った学習をまとめればよいので、本来であれば負担を自分で調整することもできる宿題なのだろうと思います。

ですが、自由に決められるからこそコウにとっては「テーマが決まらない」「テーマは決まったけどどこまで書けばいいか決められない」となってしまい、負担の大きな宿題として毎晩頭を悩ませていました。

テーマが決まらないまま2時間が過ぎ…

「テーマが決まらない」と言うコウに「今日やった授業の範囲をまとめたら?」「ワークを解いて答えを書いたら?」といくつか提案をしてみたものの、「う~ん…今日はそういう気分じゃない」と煮え切らない様子。

「宿題のテーマが決まらないのに気分とか言ってる場合じゃなくない!?」とは思いましたが、気が乗らなければどうにもならないのが私の息子…ということで様子を見守っていると、テーマ決めに2時間かかっています。

いよいよあきらめて、今日やった授業の範囲を写し始めてからさらに1時間…合計3時間過ぎたものの終わらず、途中で夕食を挟みながら夜中までかかってようやく完成することもしばしばでした。

テーマ選びは「狭めた範囲」から!

写しやすい参考書などを用意しました

「このままじゃ3年生になっても塾に行く時間がとれないね」と言うと、コウも「このままじゃマズいよね~」とは言うものの、テーマ選びに妥協する予定はないようです。

これは、自然に解決するのは当分難しそうだな…と思った私は、「このページを写したらOK」と言えるくらい情報がコンパクトにまとまっている参考書を数冊用意しました。
自主学習の宿題が中々進まないコウの様子を見た私。「これは、自然に解決するのは当分難しそうだな…」と思い、「このページを写したらOK」と言えるくらい情報がコンパクトにまとまっている参考書を数冊用意しました。
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それらの参考書自体は喜んで読んだコウでしたが、それからもテーマ選びにはしばしば悩んでいました。それでも、どうしても決まらないときや「今日はもう時間がない」というときには、新しく買ってきた参考書から写してくれるようになりました。

シンプルな図解で写しやすいものや1ページの情報量が少ないものからテーマを選べるようになったため、『実際にノートに写したときの負担』や『ページを埋める分量』がイメージしやすかったそうです。
また、『基本・応用・ワンポイント』のように情報のレベルが分けられているものは、「時間がないからここまでまとめる」「思ったよりページが余っちゃったから少し付け足す」ということがしやすかったそうです。「自主学習の完成イメージ・見通し」を持ちやすくなったのかもしれません。(自主学習の宿題をしているコウのイラスト)
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また、『基本・応用・ワンポイント』のように情報のレベルが分けられているものは、「時間がないからここまでまとめる」「思ったよりページが余っちゃったから少し付け足す」ということがしやすかったそうで、全体的に『自主学習の完成イメージ・見通し』を持ちやすくなったのかもしれません。

親がふせんを貼った中から選ぶことも

今では、「テーマ選びは10分以内」「30分たってもページの半分以上が埋まっていなければテーマを見直すか親に相談する」という形で自主学習の宿題を行なうようにしています。

どうしてもテーマが決まらないときは、私が3~5枚ほどふせんを貼ったページから選んでもらうこともあります。大量の選択肢の中からは選べないけれど「これはどう?」とピンポイントで提案されても気乗りしないコウにとって、狭めた範囲から選ぶことは比較的受け入れやすいようです。
「はーい。ふせん貼ったよー」と言い、ふせんを貼った参考書をコウに渡す私。「ありがとーう!」と言い受け取るコウ。
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「これで自主学習問題は解決!」とはいかず、「美術についてまとめる」と言いながらイラストの書き方の本を写して、担任の先生からのコメントで「自由帳になってきましたね」と突っ込まれたりするような現在のコウです。

それでも、宿題が終わらずに生活リズムがぐしゃぐしゃになったり終わらずにパニックになったり、朝にパンをかじりながらノートを書いたりしなくてもよくなったことは、十分によい変化であると感じています。

学校に自主学習用のノートを忘れ続けて何冊も増えてしまったり、連続で一週間くらい提出を忘れてしまったりと相変わらずの状態ではありますが、まずは「宿題を当日中に終わらせる」を一過性で終わらせずに定着できたらいいなと願っています。
ノート4冊を手に持ち「ノート何冊あんねん」と突っ込む私に、リュックからノートを取り出して「実はまだ一冊・・・」と言うコウ。
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執筆/丸山さとこ
(監修:初川先生より)
自主学習への取り組み方の工夫や実践のシェアをありがとうございます。自主学習は苦手とするお子さん多いですよね。自由ということはこんなにも不自由なのかと感じさせられます。自主学習が難しいのは、教科の選択、テーマ決めから分量にいたるまでの何から何まで自分で設定しなければならないという、決断事項の多さが加わり、そして最終的には何らかに取り組んでアウトプットしたものを提出するというところでしょう。授業を受ける中で自分の苦手とする箇所に気づき、それを補強するとか、興味のある事柄を深められたら良いのは分かりますが、忙しい学校生活、短い夜で毎回それを見つけるところから始めるのは難しいですね。

今回、さとこさんは使いやすい参考書を用意したり、さらにやりやすそうなテーマを付箋で知らせたりという工夫をされました。自分の苦手さに気づくという意味では気づいてほしいけれど結構それが高等技術(振り返る力が必要)であり、興味関心にばかり重きを置くと好きなことしかやらなくなるかもしれません。そういう意味で、まずは、テーマ設定そのものにかけるエネルギー配分を減らし、実際の学習や作業に比重をかけるという判断はスモールステップとしてはありだと思います。

私はよく、自主学習用のメニューを先に作ってしまったらどうですかと相談場面で提案することもあります。まずはその中から選んでやること、多少のアレンジはありにすること、悩んだらそのメニューの中からくじ引きすることなど、テーマ設定にかける「決断」の負担を減らし、慣れ親しんだ学習(計算、漢字、復習、類題)に時間をかけてみる。ゆくゆくは自分で、今の自分に必要な学びのために自主学習してほしいですが、そこに至るまでのステップを刻んでみることは工夫として良いと思います。
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