ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の7つの違い - 症状の比較と併存症状について【専門家監修】

2016/01/18 更新
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ADHDとASD(自閉スペクトラム症)は異なる診断ですが、近年それらの症状を併せ持つ子どもが多いことが注目されています。ここでは、ADHDとASD(自閉スペクトラム症)の似ている特徴と異なる特徴について解説します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。
目次

ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)、それぞれの特徴は?

ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)はどちらも「神経発達症(発達障害)」ですが、それぞれ主症状に違いがあり、支援方法も異なります。

※以前は「発達障害」との表記でしたが、DSM-5以降は「神経発達症」との表記となりました。ここでは一般的に使用されている「発達障害」と併記し「神経発達症(発達障害)」と記載しています。
発達障害の種類と概念図
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神経発達症(発達障害)の定義は日本では平成16年に制定された発達障害者支援法によって定められており、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)の基準に準拠しています。発達障害者支援法における発達障害の定義は以下になります。

発達障害者支援法には「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。

引用:文部科学省|発達障害について

出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm
※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。
神経発達症(発達障害)はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって多少異なりますが、大きく分けて「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如・多動症)」「LD(学習障害/限局性学習症」の3つに分類されます。ASDやADHDなどの神経発達症(発達障害)がある人の中には、知的発達症(知的障害)を併存している場合もあります。

※「広汎性発達障害」に含まれていた自閉スペクトラム症やアスペルガー症候群などは、のコミュニケーションの障害が含まれますが、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)と同様に『ICD-11』では「ASD(自閉スペクトラム症)」の分類に統合されています。

※「LD(学習障害)」は現在、「SLD(限局性学習症」という診断名となっていますが、一般的には最新版DSM-5以前の診断名である「LD(学習障害)」と呼ばれることが多くあるため、ここでは「LD(学習障害/限局性学習症」と表記します。

※「知的障害」は、DCM-5以降は「知的発達症」との表記となりました。ここでは一般的に使用されている「知的障害」と併記し「知的発達症(知的障害)」と記載しています。

ADHD(注意欠如・多動症)には「不注意(集中力がない)」「多動性(じっとしていられない)」「衝動性(考えずに行動してしまう)」という3つの症状があり、脳の前側にある前葉前野付近の働きの障害が関係していると考えられています。

ASD(自閉スペクトラム症)には「社会的コミュニケーション、対人的相互関係の困難」「行動や興味の偏り」の2つの症状があり、脳の前頭葉の下前頭回などの社会的な活動をするための脳の部位に機能異常があるといわれています。
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ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の比較

ADHDの症状

ADHD(注意欠如・多動症)の主な症状は不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つです。それぞれを説明していきます。

1.不注意による症状の例
・忘れ物が多い
・何かやりかけでもそのままほったらかしにする
・集中しづらい。ただ自分がやりたいことや興味のあることに対しては、集中しすぎて切り替えができない
・片づけや整理整頓が苦手
・注意が長続きせず、気が散りやすい
・話を聞いていないように見える
・忘れっぽく、物をなくしやすい

2.多動性による症状の例
・落ち着いてじっと座っていられない
・そわそわして体が動いてしまう
・過度なおしゃべり
・公共の場など、静かにするべき場所で静かにできない

3.衝動性による症状の例
・順番が待てない
・気にさわることがあると、乱暴になってしまうことがある
・会話の流れを気にせず、思いついたらすぐに発言する
・他の人の邪魔をしたり、さえぎって自分がやったりする

ASD(自閉スペクトラム症)の症状

ASD(自閉スペクトラム症)の主な症状は「社会的コミュニケーション、対人的相互関係の困難」「行動や興味の偏り」の2つです。それぞれを説明していきます。

1.社会的コミュニケーション、対人的相互関係の困難とは
・対人-情緒的な相互性の障害
例)他者の感情の読み取りや予測が難しい、思い込みが激しい、共感性が乏しいなど

・非言語的コミュニケーションの障害
例)目を見て話さない/話すのが苦手、目線を合わさないまま会話する、声が大きい(小さい)、他人との身体的な距離感が分からないなど

・発達水準に相応した仲間関係を築くことの障害
例)遊びのルールへの固執、皮肉やお世辞を理解できない、曖昧な表現が理解できない、言葉を字面通り捉えるなど

2.行動や興味の偏りとは
・常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話
例)おもちゃを一列に並べる、言葉のオウム返し、独特な言い回しなど

・ 同一性への固執、習慣への頑ななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動形式
例)ほんの小さな変化への苦痛、移行することの困難さ、思考の柔軟性のなさ、質問を繰り返す、儀式のような毎日の挨拶などの決まった習慣、同じ食べ物を食べ続けるなど

・ きわめて限定され執着する興味
例)車や乗り物、恐竜など好きなものに関する情報や知識を集めることにこだわる、何時間もかけて時刻表を書き出すなど

・ 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、環境の感覚的側面に対する並外れた興味
例)痛みや体温に無関心に見える、特定の音、触感に対して逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光や動きを見ることに熱中するなど

ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)の7つの違い

ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)がある場合に起こりがちなトラブルの例や違いを7つ、行動や場面別に説明します。

1. 対人関係

■ADHD(注意欠如・多動症)
遅刻やうっかりミスなど、物事を忘れることが多く人を怒らせてしまうことがあります。相手と適切なコミュニケーションをとりたいと思っていても、衝動性を抑えることができず、人が話している最中に、ついかぶせてしゃべってしまうこともあります。

■ASD(自閉スペクトラム症)
ほかの人の気持ちを読み取ることが困難なため、失礼な態度や場違いな発言で怒らせてしまうことがあります。会話の細かいニュアンスや行間を読み取ることができず、会話のキャッチボールが苦手なため、対人関係を築くことに困難さを生じることがあります。

2. 集中力

■ADHD
興味のあることに対してものすごく集中することはありますが、次々に興味関心が移ったりするため一つのものだけに集中力を持続することが苦手な場合があります。

■ASD(自閉スペクトラム症)
興味があるものや好きなことに対してはこだわりが強いことが多いので、何時間でも集中して作業することが見られます。同じ行動を繰り返すことで安心感を抱く人もいるので、好きなものや規則性のあるものに関しては特に高い集中力を発揮することが多くあります。
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3. 仕事

■ADHD
不注意や衝動性の症状によるケアレスミスをすることが多く、苦手な仕事を先送りにして締め切りに間に合わないこともあります。計画的なタスク管理や、同じ作業をずっと続けることを苦手とします。

■ASD(自閉スペクトラム症)
作業の一部分にこだわってしまい、それに熱中しすぎてしまいほかのことに手をつけられないことがあります。また、人の感情や言葉のニュアンスを読み取ることが困難なために、上司や同僚からの要望をはき違えてしまって困ることもあります。また、物事に優先順位をつけることが苦手で、一度に複数のタスクがあると混乱してしまうこともあります。

4. 計画性

■ADHD
ADHDのある人は計画的に物事を行うことが苦手です。場当たり的な衝動で行動を起こしてしまうため、スケジュールがあったとしてもそれに従うことが困難なことが多くあります。

■ASD(自閉スペクトラム症)
優先順位を考えたり、他者の意向をくんだりして計画を立てることは苦手ですが、規則性を好むため、計画的に行動を行うことは比較的に得意です。しかし、急なハプニングやスケジュール変更に対応することを嫌がり、困難を感じる人が多い傾向にあります。

5. 整理整頓

■ADHD
忘れ物が多く、整理整頓は基本的に苦手な傾向があります。注意力が散漫になることが多いので、何かをやりっぱなしでほったらかしにしたり、片付けられないことが多いです。

■ASD(自閉スペクトラム症)
モノに対して強い好みを持つことが多く、モノを捨てることを極度に嫌がることがあります。また、散らかっている状態にしか見えない部屋も、本人とっては規則性があり、何がどこにあるかは分かっていることがあります。

6. スポーツ

ADHDやASD(自閉スペクトラム症)そのものが運動にどう影響しているのかははっきりとは分かりません。ADHDやASD(自閉スペクトラム症)のある人の中で運動に困難がある発達性協調運動障害(発達性協調運動症)が併存するという調査結果も報告されています。そのような場合は体をうまく動かすことや、手先を使った細かい動きが苦手なことが多くあります。

■ADHD
不注意があることで競技に集中できなかったり、衝動性が強いことでルールを守ることに困難がある場合もあるかもしれません。

■ASD(自閉スペクトラム症)
チームプレーやメンバーとのコミュニケーションが必要なスポーツの場合は、困難を感じることが多いかもしれません。

7. 感覚の異常

■ADHD
併存症状がある場合もありますが、感覚に対するこだわりはASD(自閉スペクトラム症)に比較すると少ないです。

■ASD(自閉スペクトラム症)
五感のうちの何かがとても敏感である「感覚過敏」が多く見られ、感覚に対する強いこだわりがある場合があります。例えば、服の肌触りや匂いがいつもの服と異なると、「この服は着ない!」と強いこだわりを見せることがあります。聴覚過敏のある場合、ザワザワした職場や教室で過ごすことに苦痛を感じる人も多いです。反対に特定の感覚の鈍さ「感覚鈍麻」がある人もいます。

ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)は併存するの?

神経発達症(発達障害)はさまざまな併存症状があるとされています。ADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)に関しても、両方の診断があるという方も少なくありません。また、それぞれの障害の症状が重なる部分もあり、近年それらの症状を併せ持つ子どもが多いことが注目されています。DSM-5においてはADHDとASDの併存診断を認めるように変化してきています。

障害の診断は簡単ではない

神経発達症(発達障害)の診断は簡単ではありません。特性や困りごとは一人ひとり違いますし、二つの障害が併存していたり、似たような症状が見られることがあるからです。しかし、障害の症状や原因によって取るべき対応法が異なるため、診断は慎重に行わないといけません。

重要なのは、一人ひとりの症状や状況に合った対応法が実行されることです。その人のニーズや障害の特性を理解し、それに応じた対処を行うことが大切です。
※2022年4月に、内容のアップデートを行い、専門家監修を行ったうえで改めて公開をしました。
イラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本
田中康雄 (監修)
西東社
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