気づかれにくい軽度知的障害、「やっぱり無理」が口癖に…?子どもの知的なしんどさに支援をーー児童精神科医・宮口幸治先生
ライター:宮口幸治
「発達障害」が注目される昨今、話題にのぼりづらいのが「知的障害」です。発達障害も知的障害も、生きづらさを伴うことは共通点ですが、では、発達障害と知的障害は何が違うのでしょう?さらには、見過ごされがちな「軽度知的障害」について、お話ししていきます。
執筆: 宮口幸治
児童精神科医
児童精神科医として、困っている子どもたちを教育・医療・心理・福祉の観点で支援する「日本COG-TR学会」を主宰し、全国で支援者向けに研修を行っている。
発達障害と知的障害の違い
発達障害も知的障害も、社会生活を送る上で生きづらさを伴うことは、大きな共通点です。では、発達障害と知的障害は、何が違うのかと疑問に思う方もいるかもしれません。
発達障害というのは、よく「発達凸凹」とも呼ばれます。得意なものと苦手なものの差が大きいイメージです。いろいろな能力の中に、著しく高いものもあれば、低いものもある状態です。
一方、知的障害は全体的に発達がゆっくり進んでいると考えてみてください。どこかの能力が低いというのではなく、全体的にゆっくり成長しているのです。
例えば、IQ70の10歳児であれば、精神年齢は7歳くらいというイメージです。そう解釈すると、目の前の子どもにとって何が必要かが見えてきます。小学校4年生の中に小学校1年生の子どもが混じっている、だからレベルに合った学習内容の取得が必要だといった具合です。
そしてそのゆっくりとした成長が、成人になっても12歳くらいの水準で止まってしまうのが軽度知的障害です。ただし、必ずしもみんなの精神年齢が12歳レベルで止まるかというとそうではなく、生活上の経験値がそれぞれ異なりますので、あくまでも目安です。
発達障害というのは、よく「発達凸凹」とも呼ばれます。得意なものと苦手なものの差が大きいイメージです。いろいろな能力の中に、著しく高いものもあれば、低いものもある状態です。
一方、知的障害は全体的に発達がゆっくり進んでいると考えてみてください。どこかの能力が低いというのではなく、全体的にゆっくり成長しているのです。
例えば、IQ70の10歳児であれば、精神年齢は7歳くらいというイメージです。そう解釈すると、目の前の子どもにとって何が必要かが見えてきます。小学校4年生の中に小学校1年生の子どもが混じっている、だからレベルに合った学習内容の取得が必要だといった具合です。
そしてそのゆっくりとした成長が、成人になっても12歳くらいの水準で止まってしまうのが軽度知的障害です。ただし、必ずしもみんなの精神年齢が12歳レベルで止まるかというとそうではなく、生活上の経験値がそれぞれ異なりますので、あくまでも目安です。
子どもたちの知的なしんどさ
もしも発達障害と知的障害の両方がある場合、個人的には、まず知的なしんどさに対応することが先決と考えます。日常生活や社会的な生活を送る上での困りごとは、知的なしんどさから生じる部分が多いからです。発達障害に知的障害も伴う場合は、知能の程度(軽度・中等度・重度)がどうかという点が重要になります。
発達障害でもIQが高ければ、今の社会を生き抜いていく方法は少なからずあるでしょう。
こだわりが強い自閉スペクトラム症のある人が、興味や専門性が活かされるような技術職や研究職に就いて、高いパフォーマンスを発揮できることも見聞きします。また、大手企業を起業した経営者のなかにも、診断を公表している方がいます。ADHDの特性である行動力やアイデア力が、起業に生きるというのは想像しやすいでしょう。
発達障害でもIQが高ければ、今の社会を生き抜いていく方法は少なからずあるでしょう。
こだわりが強い自閉スペクトラム症のある人が、興味や専門性が活かされるような技術職や研究職に就いて、高いパフォーマンスを発揮できることも見聞きします。また、大手企業を起業した経営者のなかにも、診断を公表している方がいます。ADHDの特性である行動力やアイデア力が、起業に生きるというのは想像しやすいでしょう。
「軽度・中等度・重度」の程度の違い
知的機能の水準は一般的にはIQで表され、知的障害の基準のひとつに「IQ70未満」があります。障害は、その程度によって次のように4段階に分けられます(WHOの「ICD-10」より)。
IQ50~69(おおよそ9~12歳)……軽度
IQ35~49(おおよそ6~9歳)……中等度
IQ20~34(おおよそ3~6歳)……重度
IQ20未満(おおよそ3歳以下)……最重度
※( )の年齢は、発達期を過ぎた成人に対する精神年齢です。
4段階のそれぞれの特徴は、次の通りです。各段階で、学力の習得が可能な年齢(学年)というのも付記していますが、あくまでも目安となる年齢です。支援次第で、目安の年齢以上に、成長を促せる可能性はあります。
IQ50~69(おおよそ9~12歳)……軽度
IQ35~49(おおよそ6~9歳)……中等度
IQ20~34(おおよそ3~6歳)……重度
IQ20未満(おおよそ3歳以下)……最重度
※( )の年齢は、発達期を過ぎた成人に対する精神年齢です。
4段階のそれぞれの特徴は、次の通りです。各段階で、学力の習得が可能な年齢(学年)というのも付記していますが、あくまでも目安となる年齢です。支援次第で、目安の年齢以上に、成長を促せる可能性はあります。
・IQ50~69…軽度
多くの場合、身のまわりのことは自分でできるようになります。自分で考える力も身につき、小学6年生くらいまでの学力を習得できます。簡単な読み書きや計算ができます。ただし、言葉の発達や抽象的なことの理解に遅れが生じる傾向があります。高度なスキルが必要な場合を除き、仕事に就くこともできるでしょう。一般的に知的障害といっても、本人や周囲の人にも「知的障害」という自覚がなく、支援を得ることなく生活しているケースもあります。そのため、実際の人数よりも認定数が少ないものと考えられます。また統計上は、知的障害者の約85%がこの段階に分類されます。ですので、知的障害といえば、概して「軽度」のことを指すといっても過言ではないでしょう。
・IQ35~49…中等度
身のまわりのことはだいたい自分でできるようになりますが、一定のサポートは必要なことが多いでしょう。簡単な読み書きや計算が部分的に可能です。乳幼児期に言葉の遅れはありますが、コミュニケーション能力はあります。適切な支援を受ければ、小学2年生くらいまでの学力を習得できます。配慮があれば、単純作業の仕事などに就くこともできるでしょう。
・IQ20~34…重度
乳幼児期はほとんど会話をしませんが、学童期になると、基本的な生活習慣(会話、食事、排せつなど)を身につけることができます。学力の習得目安は5歳くらいまでで、読み書きや計算は難しいでしょう。簡単なお手伝いやおつかいといった作業は可能です。
・IQ20未満…最重度
快・不快の表出は可能な場合が多いですが、言葉でのコミュニケーションを身につけることは難しい場合が多いでしょう。適切な支援によって能力の成長は見られますが(3歳程度まで)、身のまわりのことを自分で処理することは難しく、常に周囲からの支援や保護が必要となります。
多くの場合、身のまわりのことは自分でできるようになります。自分で考える力も身につき、小学6年生くらいまでの学力を習得できます。簡単な読み書きや計算ができます。ただし、言葉の発達や抽象的なことの理解に遅れが生じる傾向があります。高度なスキルが必要な場合を除き、仕事に就くこともできるでしょう。一般的に知的障害といっても、本人や周囲の人にも「知的障害」という自覚がなく、支援を得ることなく生活しているケースもあります。そのため、実際の人数よりも認定数が少ないものと考えられます。また統計上は、知的障害者の約85%がこの段階に分類されます。ですので、知的障害といえば、概して「軽度」のことを指すといっても過言ではないでしょう。
・IQ35~49…中等度
身のまわりのことはだいたい自分でできるようになりますが、一定のサポートは必要なことが多いでしょう。簡単な読み書きや計算が部分的に可能です。乳幼児期に言葉の遅れはありますが、コミュニケーション能力はあります。適切な支援を受ければ、小学2年生くらいまでの学力を習得できます。配慮があれば、単純作業の仕事などに就くこともできるでしょう。
・IQ20~34…重度
乳幼児期はほとんど会話をしませんが、学童期になると、基本的な生活習慣(会話、食事、排せつなど)を身につけることができます。学力の習得目安は5歳くらいまでで、読み書きや計算は難しいでしょう。簡単なお手伝いやおつかいといった作業は可能です。
・IQ20未満…最重度
快・不快の表出は可能な場合が多いですが、言葉でのコミュニケーションを身につけることは難しい場合が多いでしょう。適切な支援によって能力の成長は見られますが(3歳程度まで)、身のまわりのことを自分で処理することは難しく、常に周囲からの支援や保護が必要となります。