自閉症息子の特別支援学級選び。知的か情緒クラスか…就学相談、希望は通る!?面談で思いをぶつけた母。結果は…?

ライター:星あかり
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幼稚園の年中の冬、通っていた療育先の先生に小学校入学に向けた「就学相談」の資料をもらいました。
まだ年中さんなのに!?と驚きましたが、年長の夏に本格的にスタートする就学相談の前に就学前検査(発達検査)や学校見学など、発達が気になる子どもの就学には、事前に準備することがたくさんあるのでした。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

自閉スペクトラム症のスバル、幼稚園年少の困りごと

息子のスバルは3歳で自閉スペクトラム症と診断されました。2歳から通園していたプレ幼稚園は、診断を受けたと同時に退園になりました。その後、新たに幼稚園を探しはじめ、スバルを受け入れてくれる幼稚園に出合い、無事に年少から幼稚園に入園することができました。

しかし、入園できたからといって全てがうまくいくわけではなく、入園当初はプレ幼稚園に通園していたときと同じように教室の中をふらふら歩いたり、教室を出て廊下の窓から車を眺めたりしていました。
ところが6月のある日からピタッと歩き回らなくなり、座るべき時間に座り、話を聞くべき時間に話を聞くようになりました。話は聞いているだけで右から左へ抜けてしまっているみたいでしたが、それでもスバルの中で点と点が繋がるような何かがあったのだと思います。

それをきっかけにスバルは集団生活のコツをつかんだようで、少しずつ社会のルールを学習しクラスへ馴染んで行きました。
スバル一人と向き合うとたくさんの困りごとがあるのですが、3歳になったばかりや4歳の子どもが一緒に活動する「年少クラス」という空間では個人個人の成長の差が激しく、スバルの困りごとは飛び抜けて目立つものではなくなりました。

この時は「スバルはこのまま『ちょっと変わったクラスメイト』として小学校では通常学級で過ごして行くのかな」と思っていました。

年中のスバルの困りごと

年中になり、周りの子どもたちの成長に置いていかれる形でスバルの困りごとが目立つようになりました。細かいことはたくさんあるのですが、大きく気になる部分は3つ。

1つめはコミュニケーション能力。
人が好きでグイグイと距離を詰めるわりには、一方的でズレた会話をするのです。その様子はまるで一人だけ別に撮影した動画を合成しているようなチグハグなものでした。
いわゆる「空気が読めない」立ち振る舞いなのですが、よく観察すると人の顔色なんかはしっかり読んだ上で空回りし続けている感じもしました。また自分の得意な分野に関しては大人のような言葉を使いまくし立てるように話すのに、そのほかのことは2~3歳年下のような語彙力でたどたどしく話しました。

2つめは運動能力。
のちに「発達性協調運動症(発達性協調運動障害)」と診断されるのですが、年中の時点では両足ジャンプがかろうじてできるくらいで、ケンケンはもちろん片足立ちすらできませんでした。ダンスは踊れないし、あらゆる道具は使えないし……。運動面で苦手なことに関しては幼稚園の先生がマンツーマンに近い形で手伝ってくれていました。

3つめは集団の中では集中して話が聞けないこと。
プレ幼稚園の頃から、一対一で話すと理解ができるのに先生が集団に呼びかけた「おかたづけの時間ですよ」と言った一斉指示が通らないという悩みがありました。幼稚園に入園してからのスバルは日に日に成長し、簡単な指示は通るようになりました。しかし、工程が複数あるような複雑な指示になると最初と最後くらいしか覚えていないようでした。
自分の得意なことだけを大人のような言葉で話続ける自閉スペクトラム症がある息子。会話のチグハグさは、まるで合成動画のようで……。
まるで合成動画のよう……!
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それらのことを踏まえ、年中の冬に療育の先生から「就学相談」の資料をもらった時には少人数で学べる「特別支援学級」を進路の候補として考えるようになりました。

家や公園など少人数で過ごすときと比べて、集団の中に入ると爆発的に困りごとが増えるスバルをずっと見てきたのでぼんやりと「少人数が合っているのだろうな」と思いました。ただ自分自身が経験したことがない「特別支援学級」に少なからず不安はありました。

特別支援学級ってどんなところ? いざ学校見学へ!

年長の夏にある就学相談がスタートする前に、わが家の希望を固めておく必要がありました。特別支援学級を第一候補と考えてはいましたが、特別支援学級のことを私は何も知らないのです。
そうと決まれば見学です。

いろいろと調べた結果、学区の小学校の特別支援学級(知的クラス)、学区外の小学校の特別支援学級(情緒・自閉クラス)へ見学に行くことになりました。私たちの住んでいる地域は情緒・自閉クラスがある学校の数が少なく、情緒・自閉クラスへは学区外から越境して通学する人もたくさんいます。(※就学に関する制度は自治体により異なります)

逆に情緒・自閉クラスを希望していても距離的に越境通学が難しい場合は、学区の小学校の知的クラスを選択する人もいます。当時同じ療育に通っていた仲間たちの中に特別支援学級(情緒・自閉クラス)を希望しながらも距離的な理由から知的クラスや通常学級を選択する人もたくさんいました。わが家は学区・学区外どちらの特別支援学級も候補に入れ、見学することにしました。

どちらの学校も「納得するまで何度でも見学に来てください」と言ってくださったので、本当に何度も足を運びました。
通常授業の日、イベントの日、穏やかな日、荒れている日。夫婦で行ったり、一人で行ったり、スバルを連れて行ったり、義母を巻き込んだりもしました。

その結果、学区外の情緒・自閉クラスをわが家の希望として就学相談に挑むことに決めました。情緒・自閉クラスの特別支援学級の中で活動し成長するスバルの姿が一番ハッキリと想像できたからです。見学に行く前は、閉ざされた印象を持っていた特別支援学級でしたが、そこは明るくのびのびと過ごせる「ホーム」のような場所でした。

見学に行くたびにニコニコと迎え入れてくれる子どもたちにスバルを重ね、特別支援学級での生活に明るい未来を感じました。知らないがゆえの漠然とした不安はなくなっていました。
この時すでに、季節は年長の夏になっていました。
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年長の夏、就学相談がスタート

就学相談がスタートしました。
春に就学前検査(発達検査)があり、夏から説明会などがいくつかと面談の日がありました。
面談の日は私と夫とスバルで行きました。療育ママ友の口コミで「母親だけで行くよりもスーツを着た父親を同行させると話し合いがスムーズ」と聞いていたので、夫にはスーツを着せました。

まずは呼ばれた子どもが数人ずつ部屋に入り、係の人の指示に従って行動する様子を、数人の大人がファイルに何か書き込みながら観察する……そんな緊張感のあるオーディションみたいな部屋をいくつか回って、最後に面談がありました。

面談では学区の知的クラスではなく、わざわざ学区外の情緒・自閉クラスを希望していることについて聞かれました。どうやら数の少ない情緒・自閉クラスは狭き門のようでした。

私は用意して来たありったけの志望動機を伝えました。渾身のスピーチだったと思いますが、面接官には学区の小学校の知的クラスを薦められました。「情緒・自閉クラスの希望者が多すぎて全員の希望は聞けない」という意味の話を遠回しに言われました。

しかし今まで真剣に悩んで決めた私たちの希望を、簡単には諦めることができません。
結果的に希望通りにいかなかったとしても、この場では「何と言われても情緒・自閉クラス希望」である意志を伝えました。
スーツ姿の夫の出番が到来したが、夫は一言も口を開こうとはせず、うろたえる母親。
スーツ姿の夫、出番到来!! 
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そして秋の終わり「学区外の小学校の特別支援学級(情緒・自閉クラス)」に就学が決定した通知が届きました。

小学1年生から始まった特別支援学級での生活

フタを開けてみると、見学時には1クラスしかなかった情緒・自閉クラスは3クラスになっていました。新1年生だけではなく、ほかの学年にも新しく入って来た子どもたちが増えていました。多くの子どもが門前払いされてきた扉が、少し開いたのだと思いました。

現在スバルは、先生やクラスメイトに恵まれて毎日楽しく通学しています。苦手なことも多いスバルですが、特性に配慮した学習方法で得意を伸ばし、苦手をちょっと底上げしながら学んでいます。
さんざん見学して悩んで悩んで決めただけあって、スバルにはこのクラスが合っていたと思います。

願わくば、一人ひとりの子どもに合った学びの場がいつでも開かれていますように。
執筆/星あかり

(監修:初川先生より)
就学にまつわる幼稚園年中時からの経緯と思いのシェアをありがとうございます。
入念な情報収集、スバルくんの課題を見取ること、それをふまえた就学先の希望。あかりさんがスバルくんの小学校生活に向けて、かなり周到にご準備されたことがよく伝わってきます。

あかりさんは年中の頃から就学について・就学相談についての準備を始めたとのことですが、自治体によっては、年長の4月以降でないと就学相談の問い合わせ自体受付されない場合もあります。そのあたりはお住まいの自治体にご確認してください。
ただ、特別支援学級や通常学級に関して、学校公開など広く公開されている際に見学することは年中時でもそれ未満でも可能です(※コロナ禍によって地域住民に公開されていない場合もあるので事前に学校に確認した方が安全です)。
未就学児を連れていくとなかなか落ち着いて見学できないと思いますので、可能ならまず保護者だけで見学に行くのをおすすめします。

特別支援学級がどんな場所なのかということは、あまり知られていないことも多いと思います。見学をしたうえで、わが子に合いそうかどうか検討することはとても大事です。
また、あかりさんがされたように、特別支援学級のさまざまな場面(教科学習、自立活動、行事の練習など)を見に行く、一人で、あるいは家族と見に行くなど何度か足を運ぶことは素晴らしいことです。
一度見た印象で決めてしまうのはあまりおすすめしません。年長になり、就学相談に正式に申し込むことで、特別支援学級の見学を就学相談担当が仲介してくれることもあります。そのあたりも自治体によりなので、ご確認ください。

スバルくんは、あかりさんの入念なリサーチと「情緒・自閉クラスの特別支援学級の中で活動し成長するスバルの姿が一番ハッキリと想像でき」、それを就学相談の場で熱くお伝えになり、また、就学相談担当による行動観察や検査の結果など総合的に判断されて、その通りの提案が出て、情緒・自閉クラスの特別支援学級に就学されたのですね。現在楽しく通学できているとのこと、何よりです。

このコラムを読んで、こんなに早く準備に動き出さなければならないのか等焦りや不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、就学相談にエントリーすること自体は、年長の春夏ごろでも十分に間に合います。また、秋には各学校で就学時健康診断が行われますが、そこで就学相談を勧められて申し込まれる方もいるのでそれ以降でも間に合います(ただ、締め切りもあるので、悩んでいる方は秋のはじめごろにはエントリーすることをおすすめします)。

就学相談はさまざまなプロによってお子さんが小学校で充実した生活を送るためにはどのような環境で、また周りの大人がどのようなことに気をつけて(どのような合理的配慮をして)過ごしたらよさそうかを検討し、提案という形で保護者にフィードバックするものです。お子さんの今の様子をもとに、少し先の未来について一緒に検討してくれる場ともいえます。どこに就学するかは提案が出てから家庭でまた考えてみることができます。

そして、お子さんが最終的にどこに就学するのであれ、就学相談でのお子さんの行動観察や発達検査の結果などをふまえた見立ては入学する学校に共有してもらえるので、学校がお子さんを受け入れる準備を整えた形で入学式を迎えることができます。そういう意味で、就学相談に申し込むこと自体に葛藤を感じる方は、ぜひ前向きに検討していただければと思います。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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