私だけ必死?発達が遅い息子の子育てに自信を失っていたあの頃

ライター:安田ふくこ
私だけ必死?発達が遅い息子の子育てに自信を失っていたあの頃のタイトル画像

今回は、自閉スペクトラム症(ASD)・ADHDと診断されている長男ハル(高1)の幼児期から幼稚園までの頃のお話です。当時の私は、なかなか話さない、落ち着きのない息子の育児に悩み、母としての自信をすっかり失くしていました。

監修者初川久美子のアイコン
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

発達のゆっくりな息子に、母としての自信を失い、育児の楽しさも感じられなくなっていた頃

自閉スペクトラム症(ASD)・ADHDと診断されている長男ハル(高1)がまだ1歳半だった頃のことです。当時の私は、言葉や運動面の発達がゆっくりで、落ち着きのないハルの育児に悩み、母としての自信をすっかり失くしていました。自信が持てない中でも、もちろん毎朝「今日も頑張らなきゃ」と気持ちを保とうと必死でしたが、次第に「どうしたら“子どもを可愛い”って、純粋に思えるんだろう」と、そんなことすら分からなくなっていきました。
「わが子をおかしいと思うなんて」母としての自信喪失と自己嫌悪の日々。発達障害診断前の長男の幼少期を振り返ってのタイトル画像

「わが子をおかしいと思うなんて」母としての自信喪失と自己嫌悪の日々。発達障害診断前の長男の幼少期を振り返って

母としてハルに何ができるか、家の壁にリストを書いて貼ったり、自分だけで試行錯誤する日々。そもそもこんな私を、ハルは「ママだ」と思ってくれてるのだろうか……。心の中では自信が持てぬまま、毎日の育児は忙しく怒涛のように過ぎていきました。
母としてすべきこと、息子の可愛いところを紙に書き出して、壁に貼らないと自分を保てないほどに、悩み続けた日々
母として自分に何ができるか……悩み続けた日々
Upload By 安田ふくこ

2歳で運動面の発達が進むも、今度は多動に振り回され……

2歳になった頃、ハルは歩くことも走ることも急激に上達してきましたが、今度は少しでも目を離せば、道路などへ飛び出していってしまうようになり、私は常に神経を尖らせていました。危険がなく、人になるべく迷惑のかからない動き回れる場所を日々必死に探し、落ち着きないハルの行動を制して、周囲にはペコペコ謝りながら日々を過ごしていました。外遊びや買い物から帰宅しても、何度も私を呼んでは手を引き、電車のおもちゃやブロックで一緒に遊びたがるハルに付き合って、家事はちっとも回らずにたまる一方……。
言葉が遅かったため、息子の言いたいことが分からない母。そんな母の様子にいら立つ息子。また、母の言葉を理解していても、なかなか従わない息子に振り回される。
帰らない外遊び。言いたいことが伝わらずに、お互いへの苛立ちが募る
Upload By 安田ふくこ
こんな調子でハルに振り回されていた私とは対照的に、仕事から帰宅してすぐにソファに座り、テレビを鑑賞しながらリラックスしてお酒を飲んでいる夫。ついイライラして「家にいられる時間は、もう少しハルと遊んであげてよ」と不満をぶつけたことがありました。ですが、その頃の夫は仕事のことで頭がいっぱいだったので、「じゃあ俺はいつ自分を休めることができるんだよ!? 育児とか家事とか……ふくこは母親ならできて当たり前なことを、なんでそんなにできないわけ? 俺だって仕事が大変なんだ!」と、夫婦で言い合いになってしまいました。

そんなことがあったって、当然次の日の朝は来る。毎日「今日私はハルに何ができるか」を考え、ただ頑張るしかありませんでした。

2歳8ヶ月で2語文を話すように。息子に初めて「パパ」と呼ばれた夫は……

転機となったのは、ハルが2歳8ヶ月を過ぎた頃。この頃になって、やっとハルは2語文くらいしゃべるようになったのです。意思の疎通がしやすくなるし、私はもちろんうれしかったのですが、夫はそれ以上にうれしかった様子でした。

ある日、私に向かって、「こんなこと言ったら叱られるかもしれないけど……ハルに『パパ』って言われて、正直やっっっと『父親としての実感』が湧いてきた。多かれ少なかれ、男ってこういうところあるよな。いや~本当申し訳ない!」などと言ってきたのでした。

私もその頃は夫の気持ちを優先しなければと思っていたし、夫も素直に気持ちを打ち明け謝ってきたので、どこかモヤっとしつつも笑っていましたが……。
息子に初めてパパと呼ばれ「やっと『親』という実感が沸いた」という夫に、「へぇー、そっかあ」と返しながらも、心の中で『私はずーっと奮闘してるわ!!』と思う妻。
「男は『親』という実感が本当に湧くまでが、女性より遅いんだと思う」と夫。
Upload By 安田ふくこ
このセリフは、今だったら怒ってしまうかもしれません!
私だっていくら体は母親になったといっても、初めての妊娠は分からないことや怖いことだらけでした。毎日どんなに気をつけて過ごしていたか。さらに子育ては全然育児書通りになどいきませんでしたし、発達に遅れがあればなおさら悩みます。当時はインターネット検索もほとんどできず、今のように情報もないまま、私は自分の育児が正しいのか不安でいっぱいになっていました。そんな私に対して無自覚でも追い詰めるようなことを言ってきたにもかかわらず、夫ときたら……「今頃ようやく父親の実感って……遅いだろ!」と過去に戻ってツッコミたい気分です(現在は遠慮なくツッコんでます)
次ページ「言葉の発達が進み、だんだんと育児の楽しさを感じられるように。でも、同年代の子どもとの発達の違いには気づかず……」

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。