「息子さんだけできていない」担任の言葉にショック。発達障害診断前の試行錯誤した日々

ライター:安田ふくこ
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ASD(自閉スペクトラム症)・ADHDと診断されている長男ハルは、幼稚園では目立った困りごともなく集団行動もできていたため、地元の公立小学校の通常学級に入学しました。しかし……入学したハルには、大きな試練が待っていました。

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「TOIRO」の制作スタッフ。

幼稚園では特に目立っていなかったのに……小学校入学後、先生から叱られるように

今回は、ASD(自閉スペクトラム症)・ADHDと診断されている長男ハル(現在高1)が、小学校に入学した頃のお話です。

幼稚園では特に目立った困りごともなく、集団行動もできていたハルは、地元の公立小学校の通常学級に入学しました。しかし入学したとたん、担任のベテラン先生から頻繁に叱られるようになったのでした……。
「クラスの34人ができることをハル君はできません!」とてつもなくショックだった担任の先生からの言葉
とてつもなくショックだった担任の先生からの言葉
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小学校生活についていけるように……親子で必死だった日々

入学して3週間も経たず先生に呼び出されて、一番私が衝撃だった言葉は「クラス中の34人ができることが、ハルくんにはできません!」でした。先生は明らかにイライラしていた様子でしたが、私は頭をガーンと殴られたような気持ちでした。

具体的には、以下のような指摘を受けました。
・全体指示で集合場所(例えば校庭など)を伝えても、ハルくんだけ来ないことがあった
・コツを教えても、逆上がりや縄跳びが全然できない
・ちょっかいを出してくる子を、無視できず反応してしまう(流せない)


「ハルが、みんなができて当たり前のことをできない」と言われたショックと、「小1の子どもは、そんなに先生の言うとおりに一度でできるの!?」というショック……。幼稚園の頃、周囲の人たちにハルの発達について相談した時には『子どもなんてみんなそんなものだよ』と言われていたのに……やっぱりウチの子だけだったの? と、私は焦りました。
ここからは私も必死でした。
「先生のお話をちゃんと聞きなさい」
「縄跳びの練習をしよう!」
「逆上がりの練習をしにいくよ!」
「イタズラしてくるお友達には反応しないの!」

なんとか小学校に慣れさせなければ……! そう思って何度もハルに禁止事項を伝えて、やらなければいけないことも伝えて。縄跳びや逆上がりの練習を、一緒にしていきました。

その頃は、まだ下の子どもたちも小さかったので、ただでさえ大変な中、ハルに付きっきりになるのは至難の業でした。ハルのことで一生懸命になる私を、さすがに仕事ばかりの夫も見るに見かねたのでしょうか。少しの時間ですが、縄跳びや逆上がりの練習に付き合ってくれることもありました。
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月に一度くらい夫が練習に付き合うことも
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発達特性への理解がまだ乏しかった当時を振り返って

今思えば、親として厳しくやりすぎたところもあったかも知れないと、猛省しています。

先生のお話を、覚えていたくてもすぐに忘れてしまう特性(ワーキングメモリーの低さ)。何回みんなと同じように頑張っても、協調運動が苦手(DCD(発達性協調運動症))。納得いかないことを言われたりされたりすると、スルーできず気になってしまう……。

全部ハル自身が、したくてしてるわけではないのに。

それでも、見た目では分からないそういった特性を、理解してもらうのも、するのも、当時は難しかったのでした。『みんなができることができない。努力不足』――担任の先生からそんなふうに言われたことで、まるで自分がやってきたこれまでの子育てを否定されてる気がして、私はショックと焦りでいっぱいでした。
※ハルの担任の先生のように、当時50代後半で、定年間近な年代の先生の中には、発達特性について詳しくない方がまだ結構いらっしゃいました。今の私であれば「それでもハルのペースを大切にします!」と、堂々と言っていたかもしれません。その頃の私は経験不足で、年上ベテラン先生からの言葉を、うまく受け流すことができませんでした。

しかし、ここでハルと一緒に頑張ったことは、全くの無駄ではなかったようでした。縄跳びや逆上がりの練習に加え、帰宅後にやるべきことのルーティンが定着するまでは、私も下の子どもたちの面倒を見つつハルにこまめに声をかけたり、目立つよう予定を紙に書き「見える化」したり、ハルの側で見守り続けました(補足いたしますと、「コツを掴むまで注意し、そばで共に練習しつつ見守る」というサポートの仕方が向いていたのが長男でした。同じ診断名であっても次男は同じタイプではありません)。
ルーティン定着までは、声かけをして寄り添い、意識してだんだん離れるようにした
ハルは「“楽しみ”を後に取っておきたいタイプ」でした
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ハル自身が努力するタイプだったということもあり、その後は何とか小学校のルーティンを覚え、縄跳びや逆上がりもだんだんとコツを掴んできて……。ついにできるようになりました。

『最初こそ周囲の子よりも物事を理解する力の差が目立つものの、一度ルーティンを覚えれば、人一倍真面目にそれを「熟す」努力をする』。

注意深く見守っている中で、「ハルはそういうところがあるのだなぁ」と私は気がつきました。ですが今思えば、それも発達特性の一つだったのだ……と分かるのです。
次ページ「小1最後の学習参観で、先生からとても褒められたけれど」

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