落ち着きがない2歳、ADHDの可能性?特徴や症状など【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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ADHD(注意欠如多動症)の子どもは、「一つのことに集中できない」「友達とトラブルになる」「話を最後まで聞けない」などの困りごとがあります。
しかし、2歳頃だとそもそも集中やじっとしていることが難しい場合も多く、特性によるものなのか、発達の過程によるものなのか判断がしづらいと言われています。
今回の記事では、2歳頃にみられることが多いADHD(注意欠如多動症)の特徴や気になるサインなどを解説します。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
目次

ADHD(注意欠如多動症)とは?

ADHD(注意欠如多動症)とは「不注意」「多動性」「衝動性」という特性がある発達障害の一つです。

それぞれの特性を簡単に説明します。
・不注意:一つのことに集中し続けることが困難
・多動性:じっとしていることができずに常に動いている
・衝動性:思いついたことを考えずに実行する

ADHD(注意欠如多動症)の子どもはこれらの特性と周囲の環境が合わないことで、さまざまな困りごとが生じると言われています。

また、子どもによって不注意が強く表れるタイプ、多動性と衝動性が強く表れるタイプ、どちらも混在しているタイプと3つのタイプに分類されています。

ADHD(注意欠如多動症)の原因については、さまざまな研究が進められていますが、まだはっきりとは解明されていません。脳内の神経伝達物質であるドーパミンなどの機能異常が関係していると考えられており、遺伝的要因や環境要因などが相互に影響し合い、ADHD(注意欠如多動症)の症状として表れているのではないかと言われています。

診断は専門の医師によって行われ、年齢に比較して不注意などの特性が強く表れていることや、複数の環境で困りごとが生じていることなどが基準となっています。また、ADHD(注意欠如多動症)は特性によるものであり、治すという概念ではなく、環境調整や薬物療法などで困りごとが表れないようにしていくという形で治療が行われます。
参考:注意欠如・多動症(ADHD)|MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%AD%A6%E7%BF%92%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%A8%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E6%B3%A8%E6%84%8F%E6%AC%A0%E5%A6%82-%E5%A4%9A%E5%8B%95%E7%97%87-adhd
参考:注意欠如・多動症(ADD,ADHD)|MSDマニュアルプロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/19-%E5%B0%8F%E5%85%90%E7%A7%91/%E5%AD%A6%E7%BF%92%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E6%B3%A8%E6%84%8F%E6%AC%A0%E5%A6%82%E3%83%BB%E5%A4%9A%E5%8B%95%E7%97%87-add-adhd
参考:ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療|e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html

ADHD(注意欠如多動症)の特徴は2歳児頃から表れる? 違和感や発達の遅れ、気になるサイン

ADHD(注意欠如多動症)の特徴は4歳、5歳頃から表れることが多く、7歳頃から診断されることが多いと言われています。しかし、2歳頃から特徴が表れることもありますので、この後紹介していきます。

2歳児に表れやすいADHD(注意欠如多動症)の特徴、症状

2歳頃になると子どもはボールを投げたり、ジャングルジムに登れるようになったり、簡単な問いかけには言葉で答えるようになるなど、できることが増えていきます。それにともないイヤイヤ期と呼ばれる自己主張が激しくなる時期にも差し掛かります。この時期に表れるADHD(注意欠如多動症)の特徴は以下のようなものがあります。

2歳頃に表れる不注意の特徴例
・指示に従わずに物事をやり遂げられないことが多い
・ほかに気になるものがあるとすぐ気がそれてしまう
・物をなくしたり忘れることが多い
・話しかけられても聞いていないように見える
・使ったおもちゃを片づけることが苦手

2歳頃に表れる多動性・衝動性の特徴例
・ずっと話しかけてくる
・友達のおもちゃを一方的に取り上げることがある
・エンジンで動かされているように活発に動く
・手足を動かしたり身をよじる動作が多い
・周囲を確かめずにいきなり走り出すことがある

ADHD(注意欠如多動症)があると以上のような特徴がみられることがあります。ただ、これらの特徴は、この時期の定型発達の子どもにもよくみられるため、気になる様子がある場合も自己判断せずに専門家に相談するようにしましょう。
参考: 0歳児から2歳児の発達過程|東京都教育委員会
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/document/pre_school/files/curriculum2/15_2_2_sankou.pdf
参考:注意欠如・多動症(ADHD)|MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E5%AD%A6%E7%BF%92%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%A8%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E6%B3%A8%E6%84%8F%E6%AC%A0%E5%A6%82-%E5%A4%9A%E5%8B%95%E7%97%87-adhd

子どもへの対応方法は?叱るのは逆効果?

ADHD(注意欠如多動症)の子どもはわざと周囲が困ることをしているのではありません。じっとしていることができないときに、「じっとしていなさい」「なんで動くの?」と叱っても、子どももどうしていいか分からなくなってしまいます。そして、叱られることが多くなることで自己否定の気持ちが強くなってしまい、自尊心が下がってしまう恐れもあります。そのため、特性を理解したうえで適切に対応していく必要があります。

子どものADHD(注意欠如多動症)の対応としては、環境調整、行動への介入、薬物療法といった方法があります。

まず、環境調整とは、特性に応じて困りごとが起きないように環境を整える方法です。例えば一つの遊びに集中できない子どもの場合は、部屋のカーテンを閉めたりほかのおもちゃを隠したりと、視界に入る刺激を少なくします。また、外で急に走り出す子どもには、道路の近くで遊ばない、広い公園で遊ぶようにするなど危険が少ない状況をつくるというのも環境調整の一例です。

次に、行動への介入とは、望ましい行動は積極的に褒め、望ましい行動を促していく方法です。例えば、話を最後まで聞けたときは「しっかり聞けたね」などどういった行動が良かったかを具体的に褒めていきます。ただし、2歳児だとまだ物事の良し悪しを理解することが難しい可能性もあるため、行動の介入よりは環境調整により危険を少なくしていく方法を取ったほうがいい場合もあります。

最後に薬物療法ですが、服薬により不注意などの特性を緩和していくことができると言われています。ADHD(注意欠如多動症)の治療薬としてコンサータやストラテラなどが処方されることがありますが、基本的には6歳以上の子どもに用いられ、2歳児には処方されません。詳しいことは主治医に相談してみましょう。
参考:ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療|e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html

2歳児に表れることの多いADHDの特徴をチェック

2歳児ADHD(注意欠如多動症)チェックリスト
2歳児ADHD(注意欠如多動症)チェックリスト
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※発達や成長に加え症状や特性には、この時期大きな個人差があります。当てはまる反応や行動の数が多いからといって、すぐにADHD(注意欠如多動症)と診断されるわけではありません。
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