発達障害息子、小学校入学で途切れた支援。放課後等デイサービスに通えないまま中学生になって…

ライター:丸山さとこ
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神経発達症(発達障害)がある息子のコウは、今まで放課後等デイサービスを利用したことがありません。できることなら通いたかったのですが、通いたいところは空きがなかったり遠かったりしてなかなか入れず、そうこうしている内に中学3年生になってしまいました。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。

放課後等デイサービスを利用したことがないコウです

神経発達症(発達障害)がある息子のコウは、中学3年生の今まで放課後等デイサービスを利用したことがない。「療育園は通ってたよー」とピースをするコウの背後で「放デイも行きたかったよー」と言う私。結局一度も利用することなく小学校の卒業式を迎えて、「アレ、これでいいのか?」と内心で戸惑う私。
神経発達症(発達障害)がある息子のコウは、中学3年生の今まで放課後等デイサービスを利用したことがありません。
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通いたい施設に空きが出ないまま今に至っています

神経発達症(発達障害)がある息子のコウは、中学3年生の今まで放課後等デイサービスを利用したことがありません。小学生の間は探したり空きを待ったりしていたのですが、結局一度も利用することなく小学校を卒業しました。

中学生になってからは部活が忙しく、放課後等デイサービスは選択肢から外れている状態です。今は主に発達外来とスクールカウンセリングにお世話になっています。

未就学児の間も、支援施設に通っていたのは1年間だけです。3歳児健診の際に勧められた週5回のクラスは定員に達していたため、1年で卒園する規定のある週1回のコースを利用していたのですが、その後も週5クラスの空きは増えずに療育園を卒園しました。

そのため、4歳と5歳は保育園のみ通い、支援とは一切繋がりがない状態で過ごしていました。

小学校入学前に「このままでいいのかな?」と思い、保健センターへ電話しました

そうして、療育園卒園以降は特にどの支援機関とも繋がりがないまま小学校入学が近づいた保育園年長のある時、ふと「あれ?小学校入学前の相談とかしなくていいのかな?」と気になりました。

保育園では先生や同級生の助けを得て過ごすことができたため、大きな問題は目立ちにくくなっていましたが、3歳児健診で「発達障害の可能性あり」と指摘された箇所は卒園が近づいても大きく変わっていないように見えました。
保育園からの帰り道、コウと蝶を見ている私。コウを見ながら『発達障害の可能性ありなのに、このままでいいのかな?』と疑問を感じている。
『発達障害の可能性ありなのに、このままでいいのかな?』と疑問を感じ……
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どこに連絡をすればよいのか分からなかった私は、ひとまず市の保健センターに相談の電話をしました。

すると、「小学校内のことはスクールカウンセラーが対応しやすいので、入学後の活動が心配であれば、スクールカウンセリングを受けるのが良いと思います」と教えていただけました。
「このままでいいのかな?」と思い、市の保健センターに相談の電話をした私。スクールカウンセラーを勧められ、「なるほど‼」と納得。
市の保健センターに相談の電話をするとスクールカウンセラーを勧められ納得
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「スクールカウンセラーの先生は、クラスの様子を直接見に行くことができます。学校内でトラブルがあったり、それについての小学校の先生とのコミュニケーションがスムーズに運ばなかったりした場合は、専門家としての意見を踏まえた上で調整を助けて下さることもあります」

……と詳しく教えていただき、私は学校に連絡をとりました。そのおかげで、小学校入学後から中学3年生の今に至るまでとても助っています。

私は今までに数人のスクールカウンセラーの先生にお世話になっています。「やはり相性の合う合わないは大きいな~!」と実感したこともありましたが、それでもメリットのほうが大きかったと思います。

早め早めに動くこと、選択肢を多く持っておくことの大切さ

放課後等デイサービスがまだあまりなかったあの頃

このようにしてスクールカウンセリングという情報を得て助かった反面、当時の電話相談の中では『放課後等デイサービス』の名前が出ることはありませんでした。

放課後等デイサービスは2012年4月に児童福祉法に位置づけられた支援です。コウが小学校に入学する頃はまだ選択肢が少なかったのも、今振り返れば「それはそうだろうな」と思います。

ですが、三歳児健診で「発達障害の可能性が高い」として療育園への通園を促され、その後支援との繋がりがプツンと切れてしまった私は、当時その状況に戸惑いを感じていました。
参考: 放課後等デイサービスガイドライン|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000082829.pdf
コウがブロックで遊んでいるのを眺めながら腕組みをして悩む私。「健診で虫歯が見つかったのに通える歯医者がないような気分だ……。このまま様子見だけでいいのかな?」と考えている。
コウがブロックで遊んでいるのを眺めながら腕組みをして悩む私
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まるで保活みたい?リサーチと行動と運が必要な放デイ探し!

よく、「子どもが対象の福祉は受け身でいると得られない。保護者の積極的な行動が必要」という体験談を聞くことがあります。それは、コウをこれまで育ててきた中で私も実感していることです。

スクールカウンセリングや病院での診察の際に「コウが通える放課後等デイサービスはありますか?」と伺っては、選択肢の少なさと空きのなさに打ちのめされたことは数知れず……「放課後等デイサービスを利用するには、保育園に入る時と同じか、それ以上の『リサーチと行動と運』が必要だな!」としみじみ思いました。

早め早めに動くこと、頼れる先を多く持っておくことの大切さ

そんな風にオロオロしたまま過ぎてしまった『コウが小学生だった頃』に比べると、今は選択肢が多くなったようです。市内を移動中に「あっ、ここにも新しくできたんだ!」と目にするほど支援施設が増えたことを実感しています。

とはいえ、まだ順番待ちだったり、合うところを選べなかったりすることも多いだろうと思います。このたった10年ほどの間にもこれほど状況が変わっていったことを考えると、事前リサーチが空振りになることも、きっとあるのだろうなと思います。

それでも、調べたことや行動したことは無駄にはならないのだろうということも、私はこの10年で実感しました。

3歳児健診にて療育園の情報は貰えますが、連絡や入園手続きは保護者の私が行わなければなりません。スクールカウンセリングを利用しなければ、発達外来の受診や服薬についても様子見期間がもっと長くなっていた可能性があります。そうであれば、コウは今よりも学校生活に疲れ果てていたかもしれません。
汗をかきながら帰ってきたコウ。「ただいまー!!この部屋涼しい!今日外やっばいよ!猫溶けてたし」と話しながらリビングに入るコウに「おかえりー」と返しながら、『空振りは多くても、調べたことや行動したことは無駄にならないね』と思う私。
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今回のコラム内では「時期によって状況や得られる情報は変わる」というお話をしましたが、時期だけでなく地域による差も大きなものです。地元に詳しい医師やカウンセラーなどの支援者を頼るほか、地域の親の会に参加するのも選択肢のひとつだと思います。

それはそれとして、私は、本来であれば児童福祉に関する情報が得られるかどうかが保護者次第であってはならないと考えています。現状が結果的にその状態であったとしても、「ちゃんと情報を得ないのは親が動かないからだ」と他者から責められるいわれはないし、自分を責める必要もないと思っています。

その上で、何とかして多くの家庭が支援に繋がれることを願っています。情報がなく頼れるところがない状況で子育てをするのは大変なことです。書籍やWebサイトの情報を足掛かりに放課後等デイサービスなどの支援に繋がり、多くの保護者と子どもが助けを得られるようになって欲しいと思っています。
執筆/丸山さとこ

(監修:室伏先生より)
さとこさん、放課後等デイサービス探しの状況や、児童福祉に関する情報を得る方法などについて共有くださり、ありがとうございました。さとこさんのおっしゃる通り、現在は放課後等デイサービスは増えてきてはいるものの、情報が整備されていて、誰でも簡単に情報にアクセスできる状況かというと、まだ課題がある部分と思います。

さとこさんには、学校外の活動である、放課後等デイサービスについてご紹介いただきましたが、それに加えて現在では学校での支援も少しずつ強化されてきています。就学にあたって、特別な配慮・教育を希望される場合や、発達に不安があり就学先について相談・検討をしたい場合には、各自治体で行われている就学相談を受けることができます。特別な配慮・教育を受けられる学校、教室としては、特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室などがあり、お子さんの知的能力や、お困りの内容や程度によって、どちらを利用するのが望ましいのかを、専門スタッフで検討します。就学相談を受けられると、その決定した場所に必ず通わなければならないのかと心配に思われる親御さんもいらっしゃるかと思いますが、この決定に強制力があるわけではなく、最終的な判断は親御さんにしていただけるようになっています。

放課後等デイサービスを選ぶにしても、学校や教室を選ぶにしても、やはりリサーチは必要ですし、迷われることも多いと思います。このような時には、園の先生方、療育先のスタッフの方々、市区町村の相談先など、地域のプロフェッショナルの方々に相談してみるのもよいかもしれません。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030159
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
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