「人の目」を気にしない中2発達障害息子に変化が!身だしなみの改善と意外なメリット

ライター:丸山さとこ
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神経発達症がある息子のコウは、客観視をすることが苦手です。そのためか身なりを気にする意識も持ちにくいようでしたが、小学校6年生あたりから周囲の服装を気にするようになり、少しずつ『人からどう見えるか』を意識するようになってきました。

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。

身なりを整えることができるようになってきた……かもしれない?

ステージで発表中にシャツの裾がはみ出していたコウですが

体育館のステージにて合唱を発表しているコウのクラス。観客席からそれを見ながら「コウは後列にいるから見やすいな」と喜んでいる私。しかし、よくよくコウの様子を見てハッとする私。「後列だから目立たなかったけれど……よく見たらシャツの裾がはみ出てる!」
「よく見たらシャツの裾がはみ出てる!」とハッとする母
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神経発達症(発達障害)がある息子のコウは、客観視をすることが苦手です。人の目を意識することが難しいため、身なりを気にする意識も持ちにくいようです。

ステージで発表中にシャツの裾がはみ出していたり、手順として髪はとかすけれど寝ぐせは直っていなかったりと、身だしなみ関連のエピソードには事欠きません。

そんなコウですが、小学校6年生あたりから周囲の子どもの服装を気にするようになり、中学校2年生あたりからは少しずつ『人からどう見られるか』を意識するようになってきました。

修学旅行中、普段とは違うみんなの姿を見て「オシャレだ!」と焦ったコウ

コウの通っていた小学校は私服通学だったため、コウはクラスメイトの私服姿を見慣れていました。ところが、修学旅行中に見たみんなの姿に、コウは「みんなが何かオシャレだ!」と衝撃を受けていました。
小学校の修学旅行初日の朝、校庭に集まる同級生たちを見て『みんなが何かオシャレだ!いつもと違う……!』と衝撃を受けているコウ。
修学旅行初日の朝、同級生たちがオシャレで衝撃を受ける
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普段の学校生活や近所のお出かけに着る服は、大体の場合『汚れてもいい適当な普段着』です。一方、修学旅行では大抵の子どもが『自分なりに見栄えがする一軍服』を着ていきます。写真にも残りますし、多くの子どもはオシャレをしていくわけです。

コウは、この『修学旅行でみんながオシャレだった事件』には衝撃は受けつつも、「僕もおしゃれをしたほうがいいのかな~」くらいの受け止め方をして終わっていました。ですが、その後中学校に入りさらに周囲のオシャレ意識が高まっていく中で「もう少し服に気を使ったほうがいいかも?」と言うようになりました。
中学校の修学旅行を終えて帰宅し、おみやげを渡しながら”みんなの服装”について語るコウ。「修学旅行中のみんなの恰好がさぁ、オシャレなんよ!僕の服ヤバイかもしれない」と焦るコウの様子に、「修学旅行でみんなの私服に衝撃を受ける再びだね」と笑う私。おみやげを受け取りながら『コウにそう思わせるオシャレ圧の強さって凄いなぁ…!』と驚いている。
「僕の服ヤバイかもしれない」と焦る息子に『コウにそう思わせるオシャレ圧の強さって凄いなぁ……!』と驚く母
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「自分は人からどう見えるか?」という視点を持つことについて

身だしなみにはオシャレも含まれる?

『身だしなみ』に関しては、その基準が年々高くなっていることもコウの意識に影響を与えているようです。近年はオシャレへの興味関心の度合いに関わらず、『最低限のオシャレをすること』が身だしなみの一環になっているのを感じます。

また、今は目に見えるオシャレのほかにも、気をつけるべき『目に見えない身だしなみ』のポイントが増えたとも思います。

洗濯物の生乾き臭や口臭など、以前から言われていたことに対しても、今はより高度な対策を求められているのではないでしょうか。
オシャレさ・服の生乾き臭・口臭ケアをイメージした、衣服や生活雑貨が描かれた背景。アゴに手をあてて考えながら、「最近の身だしなみは気をつけることが多くなったような……?」と首をかしげる私。
「最近の身だしなみは気をつけることが多くなったような……?」と首をかしげる母
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そのように気をつけることが増えたり圧力が強まったりすることの問題はあると思いますが、コウにとってはその『圧の強さ』が「気をつけなきゃいけないんだな」という感覚に結びついたようです。

「人からどう見えるか」との付き合い方を模索する思春期です

思春期では『人からどう見えるか』が気になるあまり、それに振り回されて迷走することもしばしばあります。

人の目を気にする意識が過剰な場合はストレスの原因になりますが、適度に取り入れるのであれば、集団行動をとることや身だしなみを整えることによい影響もあるのだろうと思います。

幸い、今のところコウにとっては丁度良い外圧として作用しているようで、休日に髪をセットしてみたり、衣料品店のマネキンの服装をチェックしてみたりと、『身だしなみを整える』方向であれこれ工夫をしているようです。
手鏡を手にしたコウ。前髪をつまみながら「僕に似合うのって、例えばどういう髪型だと思う?マッシュはどうかな?」と聞いている。私が「平日に整髪料なしでも整えやすいかで考えると、マッシュよりツーブロかも」と言うと、「なるほど~!トップと前髪長めのツーブロにしてもらおうかな?」と言い、ヘアスタイルの要望をまとめていた。
マッシュ?ツーブロ?ヘアスタイルの要望を話し合う母と息子
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また、人からどう見えるかを気にするようになったことで、少しだけ人からの意見を参考にするようになりました。「取り入れるかどうかは分からないけど、参考に聞いておこう」と考えるようになったことは、今後のコウを助ける変化かもしれないなと思いました。

「見た目を気にする意識」は、意外なところにも影響アリ!?

こうして見た目に気を配ることが増えたコウは、私から「美容に気を使うなら水を飲むといいよ~。美は健康からだよ」と言われたことで、最近はせっせと水を飲むようになりました。実際に肩こりが良くなったり、肌に潤いも出るようになったようです。息子の場合にはむくみも軽減されたようです。

何事も過ぎたるは及ばざるがごとしですが、「あまりにも足りないものは、少し意識するだけで凄い変化があるのだな……!」と驚きました。
「ホラ!!このとーり!」と脚を見せびらかすコウ。「今までマッサージしても一時的にしかよくならなかった脚のむくみが!」と得意げなコウの脚を見て。「そんなに効く?」と驚く私。今までどれだけなかったの!?と衝撃を受ける。
得意げな息子の脚を見て「そんなに効く?」と驚く私。
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自ら水分をとることが少なく脱水を心配した私がどれだけ口を酸っぱくしても習慣化しなかった『水を飲むこと』が、まさか美容意識の高まりから解決するとは思いませんでした。

私がコウと関わる中で、今現在は「どんな視覚支援もブロークンレコードも全く効きませんね!」と思っていることも、あとになれば意外なルートから解決するのかもしれませんね。
執筆/丸山さとこ

(監修:新美先生より)
コウくんの、見た目を気にする意識が高まった件について詳しく教えてくださりありがとうございます。
ASD(自閉スペクトラム症)の方は、他者視線を意識するようになるのが遅い方が多く、他者視線を獲得しても弱めの場合もあるので、いわゆる身だしなみが身につきにくく、特に学齢期頃には周りがやきもきすることも少なくありません。(年齢相応に意識するASDの方もいるので必ずしもではありません。)

思春期頃に、遅ればせに他者視線を意識するようになると、今度は過度に気にしすぎて病んでしまうこともあります。この辺は個人差が大きく難しいところです。ただ、多くの方は、学齢期に身だしなみには全く無頓着であっても、中高生年代~20代ぐらいに、適度に意識するようになって、今までどれほど保護者が工夫してしつこく声をかけてきても、全くできなかったことが、それなりに身につくようになる方が多いように思います。こういうことは、保護者が言うよりは、家族外の同世代の誰かからの指摘や圧力がきっかけで意識するようになることが多いようです。

学齢期には、保護者はやきもきしてもあまりうるさく言いすぎずに、時期を待つぐらいでいいのかもしれません。もしその時期が来ない場合は、高校生~大学生年代に、社会人になるマナーとして、改めて対策を考えるしかないかと思います。いずれの時期にもうるさく言いすぎたり、苦手意識をあおると、ご本人が拒否感を抱いて、身だしなみの話題を避けるようになり、かえって対策を立てにくくなることもあるので、おおらかにゆっくりとらえていくほうがいいかなと思います。
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https://h-navi.jp/column/article/35030113
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
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