感覚鈍麻で喉の渇きに自覚なし…熱中症が心配な発達障害息子の驚くべき変化とは!?

ライター:丸山さとこ
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ある日、学校から帰ってきた息子のコウが「学校の水は、飲む場所によって味が全然違う」と言い出しました。どこの水場がおいしいのか詳しく説明してくれるのを聞きながら、私は「よかった! コウは学校で水を飲んでいるのだな」と胸をなで下ろしました。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

水ソムリエと化した息子です

ある日、学校から帰ってきた中学生の息子のコウが「学校の水は、飲む場所によって味が全然違う」と言い出した。私が「そんなに違うの?」と聞くと、コウは「お母さんも一度飲んだら分かるよ」とうなずきつつ、さらに詳しく説明した。
まるで水ソムリエ!
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学校の水道水を飲んでいると聞いて胸をなで下ろしました

ある日、学校から帰ってきた中学生の息子のコウが「学校の水は、飲む場所によって味が全然違う」と言い出しました。「そんなに違うの?」と聞くと、「お母さんも一度飲んだら分かるよ」とうなずきつつ、さらに詳しく説明してくれました。

「1階の水が冷たくておいしい。特に北校舎前の水道水は日陰にあるから、一番水が冷たくておいしい。においもあまり感じない。3階の水はねー、ぬるくてまずい。サビのにおいを感じるような気がする」
コウがニコニコしながら「3階の水はねー、ぬるくてまずい。サビのにおいを感じるような気がする」と語るのを聞きながら、私は「あぁ、よかった。コウは学校で水を飲んでいるのだな」と胸をなで下ろした。
学校で水を飲んでいると知り、母は胸をなで下ろした。
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このように水場ごとの味の違いをとくとくと語るコウを面白く思いながら、私は「あぁ、よかった。コウは学校で水を飲んでいるのだな」と胸をなで下ろしました。
なぜなら、神経発達症(発達障害)の感覚鈍麻によるものなのか、コウは小さな頃から喉の渇きを自覚しにくい傾向があったからです。

水分をとらない息子と、熱中症の危険性にハラハラする私

「水筒を持ち帰る」だけでなく「水筒から飲む」のも忘れるコウです

ADHDの特性からか何かと忘れ物が多いコウですが、その中でも特に心配になる忘れ物が水筒です。体操服であれば学校から借りたり授業を見学したりして対応することが可能ですし、箸やマスクは予備を持つことができます。宿題を忘れても授業を受けることはできます。

ですが、水筒の忘れ物は健康面への影響があるため、「何とかなるだろう」で済ませることはできません。家庭でできる対策として、水筒を3本用意しつつペットボトル飲料を常備するようにしています。
最後の砦はペットボトル飲料!!(後光が刺すペットボトルの両脇に私とコウのイラスト。「ありがたや~」と手を合わせる私と、「麦茶か緑茶が好き!」とサムズアップするコウ)
ADHD息子の水筒持ち帰り忘れ対策! 最後の砦はペットボトル飲料!!
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水筒を3日熟成!?ADHD息子、中学生になっても忘れもの多発!声かけ、メモも効果なし。忘れ物対策、熱中症対策は?のタイトル画像

水筒を3日熟成!?ADHD息子、中学生になっても忘れもの多発!声かけ、メモも効果なし。忘れ物対策、熱中症対策は?

「喉が乾かないから飲みたくない」の厚い壁!

このようにさまざまな工夫をしてコウに水分を持たせるようにしても、ほとんど飲まないまま帰って来ることはよくありました。

コウも知識としては水分摂取の大切さや熱中症の危険性を理解しているのですが、「喉が渇かない」という体感のほうを優先してしまうため、なかなか水分をとることが身につかない状態でした。
水筒を洗いながら「えっ…水筒の水ほとんど減ってなくない?」と驚く私。「のどあまり渇かないからね~」とノンビリしたようすのコウに、「今日30℃超えてたよね!?熱中症になるよ本当に!!」とおどろく私。
30℃超えの猛暑日でも「喉が渇かない」と話す感覚鈍麻の息子。熱中症が心配……!
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そんなコウでしたが、8月に入り暑さが本格的になると少しずつ水を飲むようになり、「見て、水筒がほぼ空だよ!」と自慢する日も出てくるようになってきました。

「あまり熱心に褒めると『褒められるために水を捨ててから帰る』などのつじつま合わせをしかねないな」と考えた私は、極力大きく褒めないよう心がけることにしました。その上で、「へ~、コウが水筒を空にするくらい、今日は暑かったんだねぇ!」などの感想を伝えるようにしました。

そのかいあってか、たまたまそういう時期だったのか、コウは今年の夏から少しずつ水を飲むようになっていきました。

自分で考えて対処したコウに、少しホッとしました

こうして水を飲めるようになったはずのコウでしたが、学校での生活は私には見えないため、本当に水を飲んでいるのか今までは分かりませんでした。だからこそ、「学校の水は、飲む場所によって味が全然違う」というコウの発言にはリアリティを感じてうれしく思いました。

また、水筒を忘れた・中身を飲み切ったという状況に対してコウが『美味しい水場を探す』という一工夫を入れたことには、「小さなピンチがあっても楽しみながら対処している様子が見えるようだ」と感じて少しホッとする気持ちになりました。
「土曜日友達が家に来てもいい?」とコウに聞かれた私。「いいよー」と答えながら、『小さなピンチがあっても楽しみながら対処している様子が見えるようだ』と思ってホッとしている。
小さなピンチを楽しみながら対処できるようになった息子の成長にホッと一安心。
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執筆/丸山さとこ

(監修:藤井先生より)
暑くても水分摂取をしないという相談はときどき伺います。ご自身の体調の変化に気づきにくいお子さんもいるので、喉が渇いたらよりは、休み時間に一口飲むなど、具体的に飲んだほうが良い時間を提示して対応する場合もあります。
コウさんは、少しずつ水筒のお水を口にすることができるようになり、水筒を忘れたときには、学校の水道水でも対応ができるようになっていたのですね。
水ソムリエと化したエピソードから、小さなピンチに対処できるようになったと成長を見つけたさとこさんの、見守り方も素敵です。コラムを読ませていただきありがとうございました。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35029662
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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