子どもと離れて、語らう時間が保護者の拠り所に。江東区・脱孤育ての取り組みとは?

ライター:発達ナビ編集部
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インクルーシブ教育について、その実行計画や運用、そもそもの考え方を、教育リーダーズから学ぶための連載です。第5回は、東京都江東区家庭教育支援チームの本田和恵さんにお話しを伺いました。

「インクルーシブ教育」を推進するための指針を、教育リーダーズから学ぶ

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江東区家庭教育支援チームの本田和恵さん
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2022年に国連から日本へと推進が通達され、大きな注目を集めているインクルーシブ教育。インクルーシブ教育とは、文部科学省で下記のように定義されています。
「インクルーシブ教育システム」(inclusive education system、署名時仮訳:包容する教育制度)とは、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的及び身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、障害のある者が「general education system」(署名時仮訳:教育制度一般)から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供される等が必要とされている。
出典:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/attach/1325884...
障害のある子もそうでない子も、共に学ぶための仕組みづくり。しかし実際の市区町村、学校教育の現場では、対応のノウハウが欠如していたり、人員が足りなかったり、チームの目線が合わなかったりと、推進が難しい現状もあるという声も散見されています。

そんな中でも、すでに全国でインクルーシブ教育を先駆けて推進している人たちがいます。彼らはインクルーシブ教育をどのように捉え、何を考え、推進を実現してきたのでしょうか?

この連載では、そんな彼らを「教育リーダーズ」と位置付け、その言葉に耳を傾けることで、推進のヒントとなる“指針のカケラ”を集めていきたいと思っています。第5回は、江東区家庭教育支援チーム、通称「江東もっく」の本田和恵さんにお話を伺いました。

地域の特性を活かした「木育」プログラム

――本日はよろしくお願いします。まずは、本田さんが代表を務める江東区家庭教育支援チーム、「江東もっく」のことから伺えればと思います。

江東もっくがスタートしたのは、令和2年。江東区でも、家庭と地域や学校をつなぐ「家庭教育支援チーム」を設置しようという声が上がったのが、最初のきっかけです。家庭教育支援チームとは、子育て経験者や元教員やPTAなど、地域のさまざまな人や専門家によって構成されるボランティア団体。文部科学省の認可を受け、子育ての相談にのったり、親子で参加できる講座やワークショップ、地域の情報の提供などを行うものです。ただ、当時は家庭教育支援チームといっても、まだあまり知られていなくて、設立当初は本当に手探りの運営でしたね。

――江東もっくは、「木育」を取り入れているのが、大きな特徴ですね。このアイデアは設立当初から?

江東区は、江戸時代から材木業で栄えたという歴史を持ちます。木のある街の家庭教育支援なんだから、「木育」も入れよう、ということで、ここはすんなり決まったんです。江東もっくには3つのルームがあって、そのうちの1つが木育の部屋。「もっくプレイルーム」という名で、子どもが木を使って遊び、学べるルームです。

――木の香りがいいですね。

気持ちが落ち着きますよね。大人もリラックスできます。やすりをかけただけのなんでもない木でも、いろんな形のものを並べたり、積み上げたりするだけで、子どもたちは楽しそう。子どもたちの感覚を育てるのにも、いい影響があると感じています。

保護者にも子どもと離れてリラックスする時間を

――設立当初は手探りの運営だったということですが、苦労されたことがあれば教えてください。

まず、立ち上げの時期はコロナ禍でしたから、「誰も来ない」なんてことも多かったですね。ただ、私たちのメンバーには、保育士、保健師、手話の先生、元校長や保護士、それから不登校の子どもを育ててきたお母さん、本当にさまざまなバックグラウンドを持った人が集まっています。いろんな人がいるからこそ、誰がきても大丈夫。みんなでアイデアを出し合い、手話のワークショップ、就学相談など、少しずつプログラムを決めていきました。

――プログラムなどを決めていくなかで、本田さんがいちばん大切にされていたことはなんですか?

私自身も子どもに発達障害があり、不登校になった時期も経験しています。子育て中のお父さん、お母さんが、休める場所を作りたいという思いはずっと強くありましたね。とくに障害のあるお子さんを持つと、子どもから片時も目を離せない、という保護者が多い。でも、親にとっても、自分の時間を持つことって大事なんですね。いい意味で、子どものことを忘れられる時間が必要だと思うんです。
江東区取材撮影
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――確かに、親になると子ども中心で、自分の時間はなかなかとりにくいですね。

たとえば、今日は「おしゃべりハンドメイドの会」といって、おしゃべりしながらハンドメイド作品を作るワークショップを開催しました。参加したお母さんたちは、みんな途中から真剣に黙々と作業されていましたね。「久しぶりにこんなに1人で集中しました」という感想もいただきました。それこそが、私たちが大切にしたいこと。だから、「悩み相談」みたいなことはあまり掲げていないんです。

――お悩みへのアドバイスなどもしない?

ええ。アドバイスというより、ただお話を聞く。でも、ひとときでも子どもと離れる時間が、何よりのリフレッシュになるんだと思います。手を動かしながら夢中になって、可愛い作品を制作して。そういうことって、なかなか家庭ではできないですから。

――お母さん、お父さんと離れられない子も、ここではすぐに慣れて遊び始めるそうですね。

今日来ていた男の子も、最初は恥ずかしがっていましたけれど、もうあっという間に走り始めましたね。私たちはあまり声をかけず、子どもが自然に興味を持ったもので遊ぶ、というのがいいなと感じています。
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