服薬しないと学校にも行けないの?と不安になる日々もあったけど

飲み忘れた日には明らかな違いがありました
飲み忘れた日には明らかな違いがありました
Upload By もっつん
合う薬に出合えてからは、タクは学校での問題行動が減ってきたようでした。特別支援学級の先生や補助の先生が手厚くサポートしてくださったおかげで友だち関係も改善されていきました。

しかし平穏な時間はずっとは続かず、また少しずつ荒れていきました。仕事中の私に小学校から電話があり「タクくんが帰りたいと言っています、落ち着かない様子です」「今日はお薬飲み忘れでしょうか?持ってきてもらえますか?」という内容でした。何度もそんな事が続き、仕事を早退して迎えに行くこともありました。

タクが学校で落ち着かないのにはいくつか理由がありましたが、原因の一つに薬の飲み忘れがありました。飲み忘れた日はやはり多動の特性が強く出ていて、友だちと衝突してしまうこともあったようです。忙しい日々で服薬について毎回確認できていなかったことに責任を感じつつ、「周りの子は落ち着いて登校できているのに、わが子は服薬しないと学校生活がままならない……」と必要以上に落ち込むことがありました。なんでこんなにトラブル起こすの?お願いだからトラブル起こさないで!とやり場のない感情で悩みは深まっていきました。

タクの薬の飲み忘れについて改めて話すと、「最近調子が良いから、飲まなくても大丈夫だと思った」と言われたことがありました。しかし飲み忘れた日は結局気持ちも行動も落ち着かずに、失敗して怒られるという悪循環を断ち切らなければいけません。そこで、飲み忘れ防止のために工夫をしていきました。日付入りのピルケースに薬を準備したり、服薬チェック用のマグネットをつくったり。その甲斐もあってか飲み忘れることは減っていきました。

薬は一生飲み続ける?

薬とのより良い付き合い方を模索して
薬とのより良い付き合い方を模索して
Upload By もっつん
こうして服薬を続けてきたタクですが、現在は中学3年生(特別支援学級に在籍)になりました。今の薬との付き合い方はとてもうまくいっていると思います。時々飲み忘れて登校してしまうこともありますが、明らかに授業中の集中力に差があるので補助の先生がすぐに気づいてくださり、自分で予備に持ち歩いている分で対応するなどしています。

そしてタク本人の希望もあり、週末などは休薬日を設けています。特に放課後等デイサービスの友だちと遊ぶ日は「今日は飲まない」と言っています。気が合う友だちと思いっきり遊びたいという気持ちもよく分かるので、学校や放課後等デイサービスの先生と連携をとりながら対応しています。

今まで服薬させながらの子育てを長くやってきて、この先も飲み続けるんだろうなぁ……と漠然と考えていた私でしたが、先日の定期診察の時に驚く事がありました。「来年は高校生になるから、受験が終わったら薬を減らしていこうね」と主治医の先生に言われたのです。びっくりして思わず「ええっ?」と聞き返してしまいました。

この年頃になると内面もちゃんと成長していることが多く、最初から中学3年くらいで服薬は終わりにするつもりで処方してきたとのことでした。そして、注意欠如は残っていますが、多動性の部分がかなりなくなっていることが決め手だそうです。

長い間、服薬してきたので不安な気持ちもありますが、信頼している先生とご相談しながら見守っていきたいと考えています。これから高校進学という大きなイベントを控えたわが家ですが、タクのことを信じて乗り越えていきたいと思っています。
執筆/もっつん
(監修:藤井先生より)
ADHD(注意欠如多動症)の薬には、コンサータ、ビバンセ、アトモキセチン、インチュニブの4種類があります。お薬の形状、効果が出るまでの時間など薬によって違います。今回処方された、インチュニブは食欲不振やチックなどの副作用もないため使いやすいですが、効果が出るまで数週間要します。コンサータは飲んだら12時間効果が持続するため、集団生活での多動・衝動性には効果を認めます。服薬終了のタイミングは、お子さんの様子を見ながら検討していきます。もっつんさんが、大人になってからコンサータを飲まれているように、高校進学前に薬を服用終了しなくてはならないというわけでもありません。薬を飲むメリット、デメリット(副作用)などを主治医の先生と相談しましょう。
ADHD息子、高校受験まで半年。「薬を増やしたい」と相談されて…【思春期の服薬・医師からのコメントも】のタイトル画像

ADHD息子、高校受験まで半年。「薬を増やしたい」と相談されて…【思春期の服薬・医師からのコメントも】

【LITALICO発達特性検査】 結果の理解と活用:「多動・不注意」の困りQ&Aのタイトル画像

【LITALICO発達特性検査】 結果の理解と活用:「多動・不注意」の困りQ&A

3歳で無発語、多動だった自閉症娘。成人した今思う、児童発達支援で育てた「成長の種」【読者体験談】のタイトル画像

3歳で無発語、多動だった自閉症娘。成人した今思う、児童発達支援で育てた「成長の種」【読者体験談】

活発すぎて勉強場所は冷蔵庫の上!?多動な次女が「あるツール」で集中力アップ!のタイトル画像

活発すぎて勉強場所は冷蔵庫の上!?多動な次女が「あるツール」で集中力アップ!

「多動で交通事故を起こしかねない」医師の勧めで内服も。発達障害息子が6年間事故なく登校できた理由は?【読者体験談】のタイトル画像

「多動で交通事故を起こしかねない」医師の勧めで内服も。発達障害息子が6年間事故なく登校できた理由は?【読者体験談】

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
療育支援探しバナー

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。