介護・福祉業界を改革し、利用者、保護者、働く人、みんなが安心できる未来へ!全国介護事業者連盟理事長・斉藤正行さんインタビュー

ライター:発達ナビ編集部
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将来にわたって子どもたちが安心して、自分らしく生きるためには、福祉の充実が欠かせません。持続可能な介護・障害福祉サービスを整備していくことは、子どもたちの未来にも直結する課題といえるでしょう。
一般社団法人 全国介護事業者連盟(介事連)は、介護と障害福祉事業者が集結し、利用者にとってはもちろん、働く職員にとっても希望にあふれる業界に改革していこう、という志のもとに立ち上げられた組織です。今回は、理事長 斉藤正行さんのインタビューをお届けします。

目次

現場に合った制度を目指して

介護・障害福祉の事業やサービスは、多くの法律や規定に基づいて運営されています。しかし、法律策定や運用の見直しでは、現場の声が十分に反映されないことも少なくありません。こうした状況を変えようと立ち上がったのが、一般社団法人 全国介護事業者連盟。さまざまなニーズやサービスのある介護・福祉業界の声を取りまとめ、現場の声を政策に活かせるようにと提言活動を行っています。
今回は、理事長の斉藤正行さんに、連盟の活動内容や保護者の皆さんに注目してほしいポイント、メッセージを伺いました。
一般社団法人 全国介護事業者連盟 理事長 斉藤正行さん
一般社団法人 全国介護事業者連盟 理事長 斉藤正行さん
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――2018年に全国介護事業者連盟を設立されました。設立当初の思いを教えてください。

斉藤理事長:私たち、全国介護事業者連盟は、その名の通り、最初は高齢者介護の分野からスタートしました。介護や福祉に携わる人の中には、実態に即していないガイドラインの見直しに、「なぜこういうルールになるんだろう?」と首をかしげ、不満を感じた人も多いと思います。私自身も、介護・福祉の業界に身を置いて20年以上になりますが、現場の声が届かないことに危機感を抱いてきました。そうした現状を変えようと2018年6月に設立したのが、全国介護事業者連盟です。のちに障害福祉事業部会を立ち上げ、現在は介護と障害福祉の両輪で活動しています。

――2018年以前には、介護・福祉事業者の声を取りまとめる団体はなかったのでしょうか。

斉藤理事長:いえ、実はその反対で、たくさんの団体がそれぞれに活動している状況でした。例えば障害者福祉であれば、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援、放課後等デイサービス……と、法人の種類やサービスごとに団体がありました。その結果、意見が集約されず、発言力が小さくなってしまう傾向があったのです。しかし、社会保障全般が大きく変化していく中、今後も現場の声が法律策定や運用に反映されないままでは、働く人たちや利用者さんを守ることはできません。介護・福祉の事業者が大同団結して、現場の声をきちんと届けようという思いで、全国介護事業者連盟を設立し、障害福祉事業部会も立ち上げました。

驚異的なスピードで全国的な組織に拡大

――現在では、大きな組織へと成長されました。

斉藤理事長:構想段階では、「必要性は分かるけれど……」と難色を示される事業者さんも多かったのです。ですが、なんとか形を作ってスタートしてからは、組織の拡大は非常に速いペースで進みました。現在、全国5,800社、約3万5,500事業所 (2024年12月末時点)の皆さんに、一般会員として参画いただいています。介護では200万人、障害福祉では100万人が働く、重要なインフラサービスです。合わせて300万人の皆さんの声を代表し、現場主導での介護・障害福祉のルールづくりを進めるために、さらなるシェア拡大を目指していきたいと考えています。

――全国各地に広がっていることも、全国介護事業者連盟の大きな特徴ですね。

斉藤理事長:そうですね。介護・福祉ともに、都市部と地方とでは、運営のあり方や課題も異なります。業界を代表する団体となるには、全国的な組織でなければいけないということは、設立当初からの構想でした。高齢者介護については、昨年、47都道府県すべてに支部を設立することができました。3年半遅れてスタートした障害福祉事業部会は、現在、33支部です。2025年度には、47都道府県すべての支部設立を目指しています。大きな規模の事業者だけでなく、地域密着型で中小事業者の皆さんの声も吸い上げていくことが、私たちの使命だと考えています。

介護・福祉業界で働く人の生活を守る

――全国介護事業者連盟の活動の成果としては、どのようなものがありますか。

斉藤理事長:私たちの活動の中心は、政策提言です。たとえば障害者就労についての委員会、障害児の通所系サービスのあり方についての委員会などを設置し、全国各地の専門家も交えて意見交換したうえで、要望書にまとめて、厚生労働省やこども家庭庁に提出しています。また政府や厚生労働省、こども家庭庁が設置している委員会にも、全国介護事業者連盟から委員として参画しています。また、全国介護事業者連盟の全国大会では、最先端の介護や障害福祉の取り組みや事例を発表しています。いずれは学会のように発展させ、エビデンスに基づいた情報を発信していく場としていきたいと考えています。
2024年11月6日(水)に開催した『全国大会in東京2024』の様子
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――令和6年度は、報酬改定(介護や障害福祉の事業に必要な報酬を国が見直すこと)の面でも、介事連の働きかけの成果があったと伺っています。

斉藤理事長:はい、介護報酬は1.59%、障害福祉サービス等報酬は1.12%のプラス改定となりました。物価高騰の状況なども鑑みれば十分とは言えませんが、比較的大きめのプラス改定を勝ち取ることができたのは、政府や厚生労働省に何度も足を運び、現場の状況を訴え続けてきた成果だと感じています。

――介護・福祉に情熱を持って働く人たちが適切な報酬を得ることは、サービスを利用する側にとっての願いでもあります。

斉藤理事長:もともと介護・福祉業界は、ほかの産業に比べて低賃金であることが課題でした。さらに給与差が拡大すれば、人手不足に拍車がかかり、必要なサービスが提供できなくなります。その改善のために、従来3種に分かれていた処遇改善加算(職員の給与を改善するための加算制度)を一本化し、その金額についても上増する方針が決まりました。

――煩雑な仕組みをシンプルにしていくことで、現場の皆さんの負担を減らす効果も期待できるのですね。

斉藤理事長:処遇改善加算を一本化することは、計画書や実績報告書を作成する時間の削減にもつながります。結果として、利用者さんと向き合う時間が増え、より質の高いサービスの実現にも貢献する取り組みだと考えています。とはいえ、介護・福祉の制度は、まだまだ複雑だと感じます。働く人や利用する人にとっても分かりやすい制度にしていくことが求められます。
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