障害福祉分野の課題は?

――障害福祉の分野で、斉藤さんが現在、特に課題だと感じていることはなんでしょう?

斉藤理事長:今回の報酬改定では、就労継続支援A型について「生産活動に取り組んでいなければマイナス評価」という、非常に大きな変更がされました。この変更で、すでにこの半年で約7%の事業所が閉鎖するか、就労継続支援B型に移行しました。これによってA型の事業所で働いていた障害者の方が、約5,000人解雇されています。これはかなり深刻な問題です。このほかにも、放課後等デイサービスや生活介護などでも、マイナス改定の影響が出ています。成果重視、生産性向上という視点からの改定でしたが、これによって切り捨てられるサービスがないようにしなければなりません。

――福祉的就労で働いている方、またこれから福祉的就労を考えている保護者の方にとっても心配なニュースです。今後、どのような対応が必要だとお考えですか?

斉藤理事長:この先には、さらなる大改革が待っていると思います。高齢者が増える一方で、2040年には現役世代の人口が今より2割も減少すると予測されています。社会保障を使う人は増えるのに、サービスを支える労働者人口はどんどん減っていくわけです。ルールや制度の見直しに加え、我々事業者も経営や運営のあり方などの面で変化に対応する取り組みが必要です。

共生社会実現にむけての取り組み

――全国介護事業者連盟の今後の活動の展望について教えてください。

斉藤理事長:組織をより拡大するとともに、現場で働いている皆さんにまで取り組みを共有し、裾野を広げていきたいと考えています。そして、最大のミッションである現場の処遇改善に向けて、きちんと声を届けていきます。また、2025年のトピックとしては、大阪・関西万博が挙げられます。万博のテーマである「いのち輝く 未来社会のデザイン」は、介護や福祉とも密接につながります。全国介護事業者連盟としてもパビリオンのプロデュースなどを行い、介護や福祉の未来について情報発信をしていきたいと思っています。

――より多くの人に関心を持っていただけるチャンスでもありますね!

斉藤理事長:はい。また、介護と障害福祉の連携もテーマです。共生型サービスの最新事例などを発信し、共生社会の実現を加速するための取り組みや事例を広めていきたいですね。

――介護・福祉業界を活性化するためには、啓蒙活動も大切ですね。

斉藤理事長:いま、介護や福祉では、人手不足が大きな問題となっています。これは保護者の皆さんにとっても、心配な状況だと思います。私たちの取り組みによって業界全体の健全化が図られ、持続的に発展できる仕組みがつくられていけば、職員にとってはもちろん、利用者さんや保護者の皆さんにもとっても大きなプラスになると思います。働いている人の所得が上がり、モチベーションが高まり、介護や障害福祉で働きたいという人がもっと増えることは、サービスの質や専門性の向上にもつながります。私たちも、現場に即した制度づくりに加え、教育や研修にも力を入れ、より安心して、お子さんがのびのびと成長できる場を提供していきます。

――自身が高齢になったあとのことを不安に思われている保護者の方も多くいらっしゃいます。将来の福祉活用のヒントを教えてください。

斉藤理事長:どうしてもお子さん優先になりがちですが、介護を含めてご自身が必要になると思う情報をしっかりキャッチしていただきたいですね。そして、お子さんについても、適切なサービスをきちんと利用できるように準備していただきたいと思います。また、障害のある方が加齢とともに介護が必要となったときには、介護保険へスムーズに切り替えることが大切です。介護と障害福祉の連携団体である私たちも、積極的に情報発信していきたいと思います。

――最後に、発達ナビの読者の皆さんに向けてのメッセージをお願いします。

斉藤理事長:超高齢社会と言われる今、お子さんの将来について考えるとどうしても不安が先立つという方も多いでしょう。しかし、私は明るい超高齢社会の構築は、絶対に実現できると考えています。高齢者や障害がある方、誰もが安心して過ごせる共生社会をつくっていく。そのためには地域共生社会づくりが、何よりも重要です。悲観せずにそれぞれの立場で考え、手を取り合って、一緒に頑張っていきましょう。

――ありがとうございました。
取材・編集:発達ナビ編集部
執筆:浦上 藍子

一般社団法人 全国介護事業者連盟 理事長 斉藤正行さん

大学卒業後、ベンチャー企業のコンサルティングをおこなう企業に入社。2003年に介護業界に転身。異業種から介護業界を見る中で、さまざまな課題を感じる一方、社会を支える介護や福祉に魅了される。介護・福祉業界の健全な発展をめざし、2018年に全国介護事業者連盟を設立。
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