移動支援とは?同行援護・行動援護との違い、費用、サービス利用までの流れ、通学・通勤の利用について【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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移動支援とは、移動が困難な人に対してガイドヘルパーによって行われる地域生活支援事業です。ここでは、移動支援の対象者、通学・通勤の利用について、費用、同行援護・行動援護との違い、申請からサービスを受けるまでの流れなどをご紹介します。

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監修: 中里哲也
帝京科学大学 准教授
社会福祉士、精神保健福祉士。大学卒業後、医療機関・有床クリニックにて医療ソーシャルワーカーとして約17年勤務。 現在は、帝京科学大学准教授(社会福祉学修士)として教壇に立ち、フリースクール運営も行っている。 日本医療ソーシャルワーカー協会元理事であり、各都道府県医療ソーシャルワーカー協会などで研修講師を務める。認定社会福祉士制度登録スーパーバイザーとして、個別スーパービジョンやグループスーパービジョンを実施。援助者の育成に尽力。
目次

移動支援とは?

移動支援とは、移動が困難な人に対してガイドヘルパーが行う外出の支援サービスです。これは障害者総合支援法にもとづく地域生活支援事業サービスの一つであり、障害のある人の地域での自立した生活と社会参加を促すことが目的です。

屋外での移動に困難さがある場合、外出を控えがちになるかもしれません。そのために、社会生活上の必要な活動が制限されてしまうこともしばしばあります。移動支援では、移動が困難な人に対して社会生活上必要不可欠な外出や、社会参加のための外出支援がガイドヘルパーによって行われます。

ガイドヘルパーは、移動支援従業者とも呼ばれ、障害の種別に応じた養成研修を受講し修了することで、資格を取得できます。ただし移動支援事業に従事できる要件は、ガイドヘルパー資格に限定しているわけではなく、市町村によって定められています。
障害者等の移動の支援について|厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000091252.pdf
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障害者総合支援法が提供する支援サービスを解説!自立支援給付と地域生活支援事業の内容を紹介します!

移動支援でできること

移動支援では、社会生活を送る上で欠かすことのできない外出や、余暇活動等の社会参加のための外出支援を受けることができます。

◇社会生活上、必要不可欠な外出の例
・金融機関における手続き
・市役所、区役所、警察署
・日用品の買い物
・家族の学校行事 など

◇社会参加のための外出の例
・美術館、映画館、コンサート
・体育館、トレーニングジム、プール
・動物園
・ボランティア活動 など

移動支援は誰が利用できるの?支援の種類、利用時間数は?

移動支援は、厚生労働省が地域の自治体に委託をした業務であり、地域の特性や利用者の状況・要望に応じて実施されています。そのため、支援の方法、外出先の範囲から負担費用に至るまで、地域によってサービスの詳細はさまざまです。

この章では各自治体の例を交えながら、利用対象や支援の種類、月ごとの利用可能時間数をご紹介します。

移動支援の利用対象

移動支援の利用対象者は、自治体ごとに障害種別による指定をしていることが通常です。自治体から発行された受給者証を取得することで、移動支援を受けることができます。

例えば、東京都世田谷区の場合、全身性障害、視覚障害、知的障害(知的発達症)、精神障害、高次脳機能障害の人が利用対象として記載されています。
移動支援事業(利用者用)|世田谷区ホームページ
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/fukushi/002/010/d00009112.html
注意点としては、自治体によって利用対象者とする障害種別が異なる場合があることです。 全体としては、視覚障害のある方を利用対象者とする記載がない自治体が比較的多い傾向があります。視覚障害がある場合、後述する「同行援護」 という移動のサービスを受けられる可能性があります。

また重度訪問介護の利用条件を満たしている方の場合には、移動支援ではなく重度訪問介護を利用 することになります。ご利用の際には、重度訪問介護の利用条件を満たすかどうかを先にご確認ください。
障害者手帳がなくても受けられるサービスを一挙にご紹介のタイトル画像

障害者手帳がなくても受けられるサービスを一挙にご紹介

障害福祉サービスの内容|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/naiyou.html

移動支援の種類

移動支援は、市区町村の判断により、柔軟な形態で実施されています。ここでは3つの例を紹介します。

◇個別支援型
個別の支援が必要な場合には、マンツーマンによる移動支援が行われます。移動の際にはバス、電車、タクシーなどの公共交通機関を原則として使用します。

◇グループ支援型
移動の際に、複数のサービス利用者がいる場合には複数人の同時支援が行われます。例えば、目的地が同じである場合や、複数人が同じイベントに参加する場合などに利用することができます。

◇車両移送型
車両移送型支援とは、福祉バスなど車両の巡回による送迎です。公共施設、駅、福祉センターなどの障害のある人が利用する可能性の高い場所を通って運行しています。
移動支援事業について|厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/content/001084420.pdf

移動支援にかかる費用は?ガイドヘルパーの交通費や施設の入場料はどうする?

移動支援にかかる料金は、自治体により異なります。障害福祉サービスの利用者負担区分により、サービスの1割負担が基本となります。世帯の収入の状況によっては負担のない場合もあります。詳しくは市区町村の福祉担当窓口へお問い合わせください。

ここでは大阪市を例にして、費用と上限負担額をご紹介します。
(1)社会生活上必要不可欠な外出及び余暇活動等社会参加のための外出
30分あたり95円
(略)
※ 利用者負担額には上限額が設けられており、一月あたりの利用者負担は次の表に示す月額負担上限額までとなっています。

月額負担上限額一覧(平成22年4月サービス提供分から適用)
生活保護受給世帯 0円
市町村民税非課税世帯 0円
市町村民税課税世帯 3,000円

出典:大阪市における移動支援事業の概要|大阪市ホームページ
出典:https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000049340.html
また、移動支援では原則、飲食代を除いて、移動の際の交通費や施設への入場料はヘルパーの分も利用者負担となります。しかし交通費や入場料に関しては、障害者割引やガイドヘルパーの割引が適応されるため、結果としてだいたい1人分程度の負担額となる場合が多いです。

移動支援の利用時間には上限がある?

移動支援のサービスでは、1か月に利用できる時間の上限が自治体ごとに決められています。利用時間の上限は地域の実情に合わせて、柔軟に変動しており、自治体ごとに大きな幅があります。

例えば、1か月あたりの上限時間数を、25時間としている自治体もあれば、50時間としている自治体もあります(いずれも障害種別が「知的障害者」の場合)。
サービスの利用時間は障害種別により規定されている自治体が多く、以下は東京都世田谷区のサービスの利用上限時間です。
全身性障害者 93時間
視覚障害者、知的障害者、精神障害者 50時間
高次脳機能障害者 50時間
児童 40時間(高次脳機能障害児40時間)
(補足)通学にかかる支援については、支給量基準のうち23時間。

出典:移動支援事業(利用者用)|世田谷区ホームページ
出典:https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/fukushi/002/010/d00009112.html
サービスを受ける人の年齢により利用上限時間が規定される自治体もあります。以下は東京都杉並区のサービスの利用上限時間です。
小学校4年生から6年生:1カ月に15時間以内又は年間180時間以内
中学生・高校生:1カ月に30時間以内又は年間360時間以内
18歳以上:1カ月に50時間以内又は年間600時間以内

出典:移動支援事業|杉並区ホームページ
出典:https://www.city.suginami.tokyo.jp/normalife/gaishutsu/gaishutsu/1008576...
なお上記は一例であり、実施する市区町村で取扱いが異なりますので、利用の際には事前にお住まいの自治体にお問い合わせください。
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移動支援のサービスで、できないことはあるの?

移動支援のサービスに外出先の制限はあるの?

移動支援は、以下のような外出では利用することができない場合もありますので、ご利用の際には事前に自治体にお問い合わせください。

・経済活動にかかわる外出 例:通勤・営業活動のための外出
・長期にわたる外出 例:通学、通所、通園
・公共の秩序に欠ける場所への移動
・政治活動や宗教活動にかかわる外出
・宿泊を伴う外出
移動支援事業の支給決定基準【ガイドライン】|鳥取市ホームページ
https://www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1190686233022/simple/idousien.pdf

移動支援では通学時にも付き添ってもらえるの?

子どもの通学の場合には、原則として保護者や介護者が移動の支援を行うことになっています。しかし、保護者や介護者が毎日の子どもの通学に付き添うことは現実的に困難です。

以下のような場合には、例外的に通学における移動支援のサービスの利用が認められることがあります。2020年度の調査によると、43.8%の事業所で、一定の要件を満たす場合に通学の利用が可能、という報告もあります。
出典:地域生活支援事業における移動支援事業の実態調査|厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000130375.pdf
認める場合の主な要件としては、
・保護者の疾病、入院、出産等により一時的に送迎が困難な場合
・通学ルートを覚えるための訓練として、一時的に利用する場合
・保護者の就労により送迎が困難な場合
などが挙げられます。
地域生活支援事業の移動支援による「通学」の支援状況|厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000092180.pdf
以上のような条件がなくても、札幌市、横浜市、荒川区、藤沢市、船橋市など、通学での移動支援の利用が認められている自治体もあります。普段は通学の付き添いを保護者が行っている場合も、利用条件を把握しておくことで万が一のときに対応できるように、一度お住まいの自治体が通学支援を行っているかどうか調べてみることをおすすめします。
移動支援が利用できない場合に、通学や通勤の際に移動の支援を行っている他のサービスはあるのでしょうか。

市区町村によっては、通学通所を支援する行政の独自のサービスがある場合があります。その他には、シルバー人材センター やファミリーサポート を利用して、通勤・通学の移動をサポートしてもらうことができることもあります。
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移動支援の「2時間ルール」って?

多くの自治体では、移動支援を1日に複数回、利用することも可能となっています。

その際、利用の間隔が2時間空くかどうかで、料金の算定基準が異なることがあります。 例えば、2時間未満ではそれぞれの支援時間が合算され、2時間以上の場合は、別々のサービス提供時間として算定されることがあり、これを「2時間ルール」と呼ぶことがあります。

行動障害がある場合、ガイドヘルパーは二人付き添える?

行動障害に限らず、安全を確保する観点から、常時2人での付き添いが必要な場合は、支給時間の範囲内で2人対応が可能な自治体もあります。

ただし、受給者証に「二人派遣対象」である旨の記載が必要だったり、2人派遣の対象者は、標準支給量に2を乗じた支給量を標準支給量としたりすることもあるため、事前に市町村へ相談が必要です。

家族が同行できるときにも、移動支援を利用できるの?

基本的には、家族が同行できる場合は、移動支援の利用はできません。

ただし、強度行動障害がある、医療的ケアが必要である場合、あるいは利用者が保護者で、子の手続きに保護者の同伴が必須である場合など、例外的に認められる場合もあります。
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