障害者総合支援法が提供する支援サービスを解説!自立支援給付と地域生活支援事業の内容を紹介します!

障害者総合支援法は、障害があっても住み慣れた地域での生活を実現するという理念の下、障害のある方に対して総合的な支援を行う法律です。障害者総合支援法に基づいたサービスは、大きく分けると自立支援給付と地域生活支援事業の2類型があります。その2本柱のもとにさまざまなサービスが提供されています。具体的にはどのようなサービスが受けられるのか、詳しく紹介していきます!

障害者総合支援法とは?
障害がある子どもから大人を対象に、必要と認められた費用の給付や貸与などの支援を受けることができます。制度の実施主体は市区町村、都道府県などの行政機関となります。

関連記事
障害者総合支援法をわかりやすく解説!自立支援法との違いと平成30年施行の改正のポイントを紹介します!
自立支援給付は、利用するサービス費用の一部を行政が障害のある方へ個別に給付するものです。具体的には障害に関する医療や福祉サービス、福祉用具(補装具)などの費用が給付されます。自立支援給付の基本的な運用ルールは、国(厚生労働省)が定めます。
これに対し、地域生活支援事業は、国が一律に運用ルールを定めるのではなく、障害のある方がお住まいの各地域で運用ルールを定めて実施した方が実情に応じた対応を期待できる事業や、一般的な相談対応のように個別の給付には当たらない事業のことをまとめたものです。
例えば1人では外出が困難な方への付き添いを提供する「移動支援」や、手話通訳者や要約筆談ができる人を派遣・設置する「コミュニケーション支援」といった事業が挙げられます。
また、障害のある方の日中活動を支援する「地域活動支援センター」や、生活自立度が高い人へ住まいの場を提供する「福祉ホーム」などの運営も、地域生活支援事業の枠組みに含まれています。障害のある方の生活スタイルは地域によってさまざまですので、地域生活支援事業のサービス内容も都道府県・市区町村によって異なります。
地域生活支援事業には、相談支援も含まれます。お住まいの地域で提供されているサービスにどんなものがあるのか?給付支援を受けたいけれど条件は満たしているのか?などといった福祉サービスの利用に関することから、一般的な生活上の相談まで、さまざまな相談に応えます。

関連記事
【障害者総合支援法】自立支援給付の申請方法・利用者負担額をわかりやすく解説します!
障害者総合支援法のサービス利用対象者は?
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/B00JVRXXNE・身体障害者・・・身体に障害がある18歳以上の人で、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている人
・知的障害者・・・障害者福祉法にいう知的障害者のうち18歳以上の人
・精神障害者・・・統合失調症、精神作用物質による急性中毒、またはその依存症、知的障害、精神病質などの精神疾患を持つ人
(知的障害は除く)
・発達障害者・・・発達障害があるため、日常生活や社会生活に制限がある18歳以上の人
・難病患者・・・難病等があり、症状の変化などにより身体障害者手帳を取得できないが、一定の障害がある18歳以上の人
・障害児・・・身体障害、知的障害、発達障害を含んだ精神障害がある児童、または難病等があり、一定の障害がある児童
参考:「これならわかるすっきり図解 障害者総合支援法」|遠山真世,二本柳覚,鈴木裕介(著),日経印刷(2014年)
障害者総合支援法の自立支援給付で受けられる3つの給付サービス
障害福祉サービスの給付
■介護給付
・居宅介護(ホームヘルパー):食事や入浴、トイレなどの介助を提供します。
・重度訪問介護:重度の肢体不自由や重度の障害のために常時の介護や見守り、外出支援などを必要とする方に、長時間の総合的な支援を提供します。
・同行援護:視覚障害により自力での移動が難しい方に対して外出時の支援を提供します。
・行動援護:行動障害があることで外出時などの支援が必要な方に対して、危険を避ける、先の見通しを立てる、コミュニケーションを仲立ちするなどの支援を提供します。
・重度障害者等包括支援:最重度の障害(原則として障害支援区分が最重度の「6」であること)があり、常時の介護を必要としている方に対して、居宅介護や短期入所、生活介護など複数の介護サービスを組み合わせて提供します。
・短期入所(ショートステイ): 障害のある方を介護している家族などの病気や所要、一時的な休養などのため、短期間、施設に入所するサービスを提供します。
・療養介護:医療的ケアと介護を常に必要とする方に対して、医療機関などで医療サービスや介護、介助などをトータルに提供します。
・生活介護: 日常的な介護や見守り、生活支援などを必要としている方(原則として障害支援区分「3」以上であること)に対して、日中の介護、介助や見守り支援を行うほか、創作的活動や生産活動、地域との交流活動などを提供します。
・施設入所支援:重度の障害のある方(原則として障害区分「4」以上であること)に対して、施設内での夜間の介護、介助や見守り支援などを提供します。
■訓練等給付
・自立訓練: 障害のある方が地域で自立した生活を送ることができるよう、身体機能と生活能力の向上を目指した訓練を提供します。自立訓練には機能訓練と生活訓練の2種類があります。
・就労移行支援: 一般企業での就労や、自ら企業することを希望する方に対して、就労や企業に必要な知識・能力の向上を図る訓練を提供しています。
・就労継続支援: 一般企業などで働くことが難しい方に対して、福祉的な支援を受けながら働く場所を提供し、就労に向けた知識・能力の向上を目指す支援を提供します。就労継続支援には、雇用契約を結び最低賃金の支払いを原則とする「A型」と、雇用契約は結ばずに軽作業などを中心とする「B型」の2種類があります。
・共同生活援助(グループホーム):標準的には5名程度(最大でも10名)の共同生活を行う住居において、相談や日常生活上の援助、食事や入浴、トイレなどの介護サービスを提供します。グループホームから一般住宅の生活に移行を目指す人を対象とした「サテライト型」もあります。

関連記事
就労移行支援事業所とは?利用条件とサービス内容、事業所の選び方を紹介します!
自立支援医療の給付
障害者自立支援法の成立以前はそれぞれ身体障害者福祉法に基づく「更生医療」、児童福祉法に基づく「育成医療」、精神保健福祉法に基づく「精神通院医療費公費負担制度(32条)」と、各個別の法律で規定されていました。これらを一元化した新しい制度として自立支援医療制度が創設されました。よって根拠となる法律はそれぞれの法律におきながらも、障害者総合支援法のもとで給付が行われるようになりました。
給付には市区町村等で自立支援医療費支給の認定(支給認定)を受ける必要があります。
・育成医療:身体障害のある子どもを対象に、障害を改善、軽減することで生活の能力を得ることが期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。
・更生医療:身体障害者を対象に、障害を改善、軽減することで生活の改善が期待される治療に対して医療費の自己負担を軽減するものです。
・精神通院医療:精神疾患(てんかんを含む)の人を対象に、精神科の通院医療にかかる医療費の自己負担を軽減するものです。
補装具費の給付
障害者総合支援法の地域生活支援事業は地域の実情に応じた支援を提供
住民に身近な市区町村で実施する地域生活支援事業には、外出時の付き添いを行う「移動支援」や、福祉用具を給付、貸与する「日常生活用具」、手話通訳や要約筆記を派遣する「意思疎通支援」、判断力が十分ではない人が成年後見人制度を利用しやすくするための「成年後見人支援事業」などがあります。
地域生活支援事業には市区町村が主体の事業と都道府県が主体の事業があり、都道府県は人材育成や都道府県内の広域な事業を担うことになっています。
・障害に対する理解促進・啓発
・障害のある方や家族が自発的に行う活動の支援
・相談支援事業
・補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難である方への費用助成
・手話通訳者、要約筆談者などの派遣・設置
・日常生活具の給付または貸付
・手話奉仕員養成研修
・移動支援事業
・地域活動支援センターの設置・運営
・福祉ホームの設置・運営
・その他の日常生活又は社会生活支援 など
■都道府県事業
発達障害や重症心身障害、高次脳機能障害など、支援に際して高い専門性や広域性が必要とされる障害について、相談に応じ、必要な情報提供を行っています。また手話通訳士や要約筆記者などの意思疎通ができる人材の育成を行っています。

関連記事
移動支援とは?同行援護・行動援護との違い、費用、サービス利用までの流れ、通学・通勤の利用について
障害者総合支援法の相談支援事業は、困った時の強い味方
しかし、実際に利用するとなると、どのようなサービスがあって、自分はどれを受けられるのか、分からない点や不安な点が出てくると思います。
その場合は、市区町村の障害福祉担当窓口や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所で相談支援を受けることができます。
障害がある方の福祉に関するさまざまな問題について、障害のある方や家族からの相談に応じ、必要な情報の提供、障害福祉サービスの利用のアドバイスなどを行うほか、成年後見人制度の利用など権利擁護のために必要な援助も行います。窓口は市区町村や市区町村から委託された基幹相談支援センター、市区町村から指定を受けた特定相談支援事業所になります。
■計画相談支援
・サービス利用支援
障害福祉サービスなど申請を行う際に、障害のある方や家族から生活上の困りごとや将来の希望などをうかがい、サービス等利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された指定特定相談支援事業者になります。
・継続サービス利用支援
支給決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行うとともに、サービス事業者などとの連絡調整を行い、必要に応じてサービス等利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された特定相談支援事業者になります。
■地域相談支援
・地域移行支援
障害者支援施設等に入所している障害がある方や精神科病院に入院している精神障害のある方(原則として1年以上入院している方で、市区町村が必要と認める方)を対象に、地域生活へ移行するための支援計画の作成、生活環境が変わることへの不安の解消、外出への同行支援、住居確保、関係機関との調整などを行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。
・地域定着支援
居宅において単身で生活している障害のある方など、地域における安定した暮らしの実現に支援を必要とする方を対象に、常時の連絡体制の確保と、緊急時の対応などの支援を行います。相談窓口は都道府県から指定された一般相談支援事業者になります。
■障害児相談支援
障害児相談支援は児童福祉法を根拠に障害者総合支援法で実施しているサービスです。
・障害児支援利用援助
障害のある子どもが利用する障害児通所支援の申請を行う際に、障害児支援利用計画の作成を行います。また福祉サービスを利用する際には、サービス事業者などと連絡調整を行います。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。
・継続障害児支援利用援助
支援決定されたサービスの利用状況の検証や生活上の状況確認(モニタリング)を行い、サービス事業者などとの連絡調整などを行い、必要に応じて障害児支援利用計画の見直しをします。窓口は市区町村の障害福祉課または市区町村から指定された障害児相談支援事業者になります。
以上のように障害者総合支援法では、さまざまな相談に応えることができるよう体制を整えています。
しかし、指定一般相談支援事業者、指定特定相談支援事業者、指定障害児相談支援事業者と言われても、どこに行って相談すれば良いのか、少々分かりにくいかもしれません。
お住まいの市区町村のホームページなどで情報を得たり、または市区町村の障害福祉担当窓口や発達障害者支援センターなどへ問い合わせたりするとよいでしょう。

関連記事
発達障害者支援センターってどんな場所?利用方法とサービス内容、専門機関との連携は?
障害がある子ども向けサービスは、児童福祉法で提供されます
そのため、障害のある子どもについては、児童期に限定した福祉サービスは児童福祉法、児童も成人も対象となる福祉サービスは総合支援法が適用法令となります。もちろん、利用申請をして支援決定を受ければ、同時に両方のサービスを受けることができます。
児童福祉法は子どもの支援に関する法律です。この法律における障害児福祉サービスの対象は障害のある18歳未満の子どもと定義されており、サービスは障害児通所支援と障害児入所支援の2つに分けることができます。支給決定の主体は、障害児通所支援が市区町村、障害児入所支援が都道府県となります。
また、児童福祉法における「障害児」の規定には特に障害者手帳の所持が条件となっていないため、サービスの利用に当たり、手帳の有無は問われません。ただし、医師の診断書により障害があることを確認するケースはあります。
■障害児通所支援
障害児通所支援とは施設や事業所に通所して、日常生活や集団生活を送るために必要な能力を身につける支援を提供するサービスです。児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援の4種類があります。

関連記事
障害児通所支援(児童発達支援・放課後等デイサービス)利用手順・施設選びのポイント・申し込み方法まとめ
障害児入所支援とは、療育などの必要性が認められた障害のある子どもを施設に入所させ、自立した生活を送ることができるよう支援するサービスです。
障害のある子どもが入所できる施設は全国的にも限られているため、障害児入所支援については都道府県や大規模な政令指定都市などが所管する児童相談所が支給決定しています。障害児入所施設は医療機関を併設しているかどうかによって福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設の2種類に分類されます。
通所受給者証はお住まいの市区町村の福祉担当窓口・障害児相談支援事業所などに申請を行い、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。
入所受給者証は各都道府県や政令指定都市などの児童相談所に申請し、サービスの利用が認められ、支給決定を受けると取得できます。それぞれ、受給者証が交付されたら、指定障害児通所事業所・入所施設などとサービスの利用契約を結ぶことができます。
自治体ごとに申請方法が異なりますので、お住まいの地域に確認しましょう。詳しくは以下の記事、「【障害児通所・入所給付費】受給者証の取得方法、体験談まとめ」を参考にしてみてください。

関連記事
【障害児通所・入所給付費】受給者証の取得方法、体験談まとめ
まとめ
以前と比べれば自分に合ったさまざまな支援を受けられるようになり、サービスが充実していけば家族の負担も少しずつ減ってくるでしょう。障害福祉サービスを取り巻く環境は着実に良い方向へと変化しているのではないでしょうか。
また、障害のある子どもに関しては、障害者総合支援法だけでなく児童福祉法に基づくサービスなども並行して利用できます。さまざまな支援サービスを組み合わせるなど工夫し、上手に使うことで障害がある方とその家族の地域生活が充実していくことを期待したいところです。

関連記事
障害者総合支援法をわかりやすく解説!自立支援法との違いと平成30年施行の改正のポイントを紹介します!

関連記事
障害福祉サービスとは?介護保険との違いは?支援の対象者、申請の手続き、審査基準、利用費を解説!

関連記事
療育センターとはどんな施設?児童福祉法における役割、対象、利用方法と費用などをご紹介します

あわせて読みたい関連記事
この記事を書いた人
発達障害のキホン さんが書いた記事

発達が気になる子どもの保育園や幼稚園での「加配制度」とは?障害児保育や小学校以降のサポートについても解説。児童発達支援や保育所等訪問まで【サポート情報まとめ】

1歳半健診でことばの遅れが気になったら?赤ちゃんのコミュニケーション力を家庭で育む3つのポイントとは?家庭で活用できるチェックリストも紹介

ワンオペ、発達障害育児に疲れたら、公的レスパイトの活用を。ショートステイ、移動支援、日中一時支援、居宅介護など費用補助もあるサービスを紹介
