【精神科医・本田秀夫】「学校を休むなら家で勉強しなさい」はNG?私が考える不登校中の基本対応
ライター:本田秀夫

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子どもが不登校になった場合の基本対応は、休養と相談です。子どもは心身ともに疲れ切っているため、まずは家庭を居心地のいい場所にし、安心して過ごせるようにしましょう。さらに、親や学校の先生に気軽に相談できる環境をつくることも大切です。

執筆: 本田秀夫
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授
附属病院こどものこころ診療部長
発達障害に関する学術論文多数。日本自閉症スペクトラム学会会長。
附属病院こどものこころ診療部長
不登校になったら、まずは休養と相談!
子どもが実際に不登校になったら、どうすればいいのか。不登校になったときの対応の基本は、まずは休養と相談です。
子どもが不登校になるときというのは、その子のなかで問題が最終段階になったときです。子どもはもう疲れ果てているので、休養をとる必要があります。まずは家庭を居心地のいい場所にしましょう。それに加えて、子どもが親や学校の先生に、気軽に相談できるような環境を整えていくことも必要になります。
子どもが不登校になるときというのは、その子のなかで問題が最終段階になったときです。子どもはもう疲れ果てているので、休養をとる必要があります。まずは家庭を居心地のいい場所にしましょう。それに加えて、子どもが親や学校の先生に、気軽に相談できるような環境を整えていくことも必要になります。
【休養1】好きなことに没頭して、心身を癒していく
休養にはいくつかの段階があります。心身ともに疲れ切っているときには、その疲れを癒すためにやりたいことを思う存分やって、エネルギーを蓄えるような時間がまずは必要になります。そのときには子どもが一番好きなこと、例えばゲームをしたり、動画を見たり、運動をしたりといったことに時間を使います。
子どもが学校を休んでゲームをやっていたら、大人としては「授業をサボって、遊んでいるなんて」と感じるかもしれません。その気持ちも分かりますが、不登校になるくらいに消耗した子には、ゲームでも動画でも好きなことに没頭する時間もある程度は必要です。
子どもが学校を休んでゲームをやっていたら、大人としては「授業をサボって、遊んでいるなんて」と感じるかもしれません。その気持ちも分かりますが、不登校になるくらいに消耗した子には、ゲームでも動画でも好きなことに没頭する時間もある程度は必要です。
【休養2】落ち着いてきたら、休日に出かけたりする
エネルギーが回復してくると、子どもはゲームや動画などに少し飽きて、ほかのことにも目を向けるようになるかもしれません。一人で遊んでいるのも楽しいけれど、ちょっと出かけたりもしたい、誰かと何かをしたい、という気持ちも湧いてくるのです。これが次の段階です。
子どもがゆっくり休んで落ち着いてきたら、少しずつ、休日に家族で遊びに出かけるなどに誘ってみましょう。ただ、不登校になったときには、親子関係がギクシャクしがちです。遊びに誘っても、子どもが応じない場合もあります。その場合には、家で一緒におやつを食べるような軽いやりとりに誘ってみて、親子関係を少しずつ回復させていくのもいいと思います。
子どもが元気になってくると、すぐに「じゃあ少しは勉強しよう」「そろそろ学校に行ってみよう」とうながす人もいますが、休養は段階的に進むものです。まずは一番やりたいことをやる。少し回復してきたら、次にやりたいことを始める。一足飛びに先へ進むことはできないので、じっくり対応していきましょう。
子どもがゆっくり休んで落ち着いてきたら、少しずつ、休日に家族で遊びに出かけるなどに誘ってみましょう。ただ、不登校になったときには、親子関係がギクシャクしがちです。遊びに誘っても、子どもが応じない場合もあります。その場合には、家で一緒におやつを食べるような軽いやりとりに誘ってみて、親子関係を少しずつ回復させていくのもいいと思います。
子どもが元気になってくると、すぐに「じゃあ少しは勉強しよう」「そろそろ学校に行ってみよう」とうながす人もいますが、休養は段階的に進むものです。まずは一番やりたいことをやる。少し回復してきたら、次にやりたいことを始める。一足飛びに先へ進むことはできないので、じっくり対応していきましょう。
【休養3】回復してくると、興味や意欲が出てくる
十分に回復してくると、子どもの興味や意欲が出てきて、本人が友だちや学校のことにも関心を向けるようになってきます。例えば、子どもが久しぶりに友だちと会って遊んだときに、今後の学校行事の予定を聞いてきて、「この日は行ってみようかな」と話し出すようなことがあります。学校を休む日もあれば、行ける日もあるというような状態になっていくこともあります。
それまでは「毎日が日曜日」のような生活になりますが、子どもはその間、ただサボっているわけではありません。その期間を通じて、自分のペースを取り戻していきます。休養は段階的に進むということを意識しながら、焦らずに対応しましょう。
ただ休ませて見守っているのでもなく、早く再登校することを求めるのでもなく、子どもの回復を見ながら、少しずつ対応を調整していくというのがポイントになります。
それまでは「毎日が日曜日」のような生活になりますが、子どもはその間、ただサボっているわけではありません。その期間を通じて、自分のペースを取り戻していきます。休養は段階的に進むということを意識しながら、焦らずに対応しましょう。
ただ休ませて見守っているのでもなく、早く再登校することを求めるのでもなく、子どもの回復を見ながら、少しずつ対応を調整していくというのがポイントになります。
数週間かかる子もいれば、数年かかる子もいる
ただし、学校に興味が出てくるまでに時間がかかる場合も多いです。「ちょっと行ってみようかな」と言うようになるまでに数週間かかる子もいれば、数年かかる子もいます。学校でつらい体験を何度も重ねた場合には、授業や行事になかなか興味を持てなくなることもあります。
子どもが「親や先生の言うことを聞いたら、また嫌な思いをすることになるのでは」と警戒している場合もあります。その警戒心を解くためには、親や先生が時間をかけて、子どもに「もう嫌なことを無理強いしない」という証拠を見せるしかありません。そのことを本人が信じられるようになるまで、対応を徹底するしかないのです。
子どもが「親や先生の言うことを聞いたら、また嫌な思いをすることになるのでは」と警戒している場合もあります。その警戒心を解くためには、親や先生が時間をかけて、子どもに「もう嫌なことを無理強いしない」という証拠を見せるしかありません。そのことを本人が信じられるようになるまで、対応を徹底するしかないのです。
【相談1】親が子どもの話を聞くようにする
不登校の対応として「まずは家庭を居心地のいい場所にしましょう」と言うと、「家の居心地がよかったら、ますます学校に行きたくなくなるのでは」と質問されることがありますが、そうではありません。
不登校になるということは、基本的には学校の居心地が悪いわけです。そのうえ家も居心地が悪くなったら、子どもの行く場所がなくなってしまいます。それでは子どものメンタルヘルスが崩れてしまうでしょう。子どもが家で安心して過ごせるようにしたほうが、エネルギーの回復につながります。
子どもが「行きたくない」「学校は嫌だ」と言っていたら、「そうなんだ」と答えて、本人の話をゆっくり聞く。そんなふうに子どもの気持ちを受け止めることが、親子関係の回復につながっていきます。
不登校になるということは、基本的には学校の居心地が悪いわけです。そのうえ家も居心地が悪くなったら、子どもの行く場所がなくなってしまいます。それでは子どものメンタルヘルスが崩れてしまうでしょう。子どもが家で安心して過ごせるようにしたほうが、エネルギーの回復につながります。
子どもが「行きたくない」「学校は嫌だ」と言っていたら、「そうなんだ」と答えて、本人の話をゆっくり聞く。そんなふうに子どもの気持ちを受け止めることが、親子関係の回復につながっていきます。
【相談2】できれば学校の先生にも相談したい
発達障害のある子の不登校では、環境的な要因が大きく、学校側との相談が必要になることも多いです。そのため、子どもが親だけではなく、学校の先生にも悩みを相談できるようになれば理想的なのですが、担任の先生との関係が悪化して不登校になっている場合には、その先生を相談相手にするのは難しいでしょう。その場合には、校内で発達障害にくわしい先生を探して、その先生に相談していくのがいいかもしれません。
一方、担任の先生との関係はいいけれど、友だちづき合いなどの要因があって不登校になっているという場合には、親子で放課後に学校へ行って、担任の先生と話をしてくるようなこともできるでしょう。また、先生がときどき家庭訪問をして、子どもや親の話を聞くようにしているという例もあります。それも相談のいい機会になります。
一方、担任の先生との関係はいいけれど、友だちづき合いなどの要因があって不登校になっているという場合には、親子で放課後に学校へ行って、担任の先生と話をしてくるようなこともできるでしょう。また、先生がときどき家庭訪問をして、子どもや親の話を聞くようにしているという例もあります。それも相談のいい機会になります。
【相談3】地域で話し相手が見つかることもある
家庭と学校以外の居場所、いわゆる「サードプレイス」で子どもの相談相手が見つかることもあります。習い事の先生や放課後等デイサービスのスタッフ、地域の大人などが子どもの話を親身に聞いてくれて、相談相手になることもあるのです。
例えば、家族で地域の農園を一区画借りて野菜を育てていて、子どもが不登校になってからも農園には一家で通い、そこでは子どもが周囲の大人にいろいろなことを話している、というケースもあります。そういう相手のほうが気楽に話せるという子もいます。
例えば、家族で地域の農園を一区画借りて野菜を育てていて、子どもが不登校になってからも農園には一家で通い、そこでは子どもが周囲の大人にいろいろなことを話している、というケースもあります。そういう相手のほうが気楽に話せるという子もいます。
親子関係が良好であることも重要
親子関係が良好で、家庭が居心地のいい場所になっていて、子どもが身近な大人に相談しやすい雰囲気ができていれば、いま登校できていなくても、将来を過度に心配する必要はありません。それはただ学校に行っていないだけで、心身ともに健康であり、社会参加への意欲も失っていない状態です。本人に何かやりたいことができたときには、それを誰かに相談できます。
よく休んでエネルギーが回復すれば、子どもは自分から動き出すものです。子ども一人ではできないこともありますが、そのとき誰か相談相手がいれば、子どもはその人の助けを借りながら、自分のやりたいことに向かっていけます。そういう状態をつくっていくために休養と相談が必要であり、そのためには親子関係が良好であることも重要なのです。
よく休んでエネルギーが回復すれば、子どもは自分から動き出すものです。子ども一人ではできないこともありますが、そのとき誰か相談相手がいれば、子どもはその人の助けを借りながら、自分のやりたいことに向かっていけます。そういう状態をつくっていくために休養と相談が必要であり、そのためには親子関係が良好であることも重要なのです。
