「子育てへの理想」をリセットする難しさ。24歳になった知的障害を伴う自閉症息子を育てる母親の本音は

ライター:立石美津子
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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=65092001605

24歳の知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)を育てる母親です。多くの保護者が直面する「障害受容」の難しさ、24年の経験から思うことをお話しします。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

子どもが生まれる前は

子どもが生まれる前は
「一緒にキャッチボールがしたい」
「ピアノを習わせたい」
「大きくなったら、友だちのような親子関係になって、娘と一緒にショッピングを楽しみたい」
「しっかり勉強させて、良い大学に行かせたい」
など、自分なりの夢や理想を描く方が多いのではないでしょうか。

でも、現実には運動が苦手だったり、音楽に向いていなかったりして、一つひとつ諦めていくのも、また子育ての一つの側面なのだろうと思います。「私の子なんだもの。得手不得手はあるよね」とプラスに諦めていくのです。

さて、この振れ幅が障害児育児の場合、大きいのではないでしょうか。
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障害児の育児における大きなターニングポイント

障害児の子育てにおける受容のターニングポイントは、それまで描いていた理想や夢をリセットすることだと感じています。

障害のある子どもが生まれると、保護者自身が抱いていた夢はことごとく打ち砕かれてしまうことが多いでしょう。そうして、目の前にある現実を、なかなか受け入れることができません。

保育園に迎えに行くと「ママ~」と走ってきて抱きついてくる、スーパーに行ったら「お菓子かって」と駄々をこねる。

言葉がなかった息子にはこんな些細な光景も一切なく、私の思い描いていた子育ての光景は打ち砕かれました。

リセットの難しさと24年間の経験

息子は知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)ですが、私にとって「障害受容」とは、それまで描いていた夢を一度リセットして、まったく別の世界へ飛び込んでいくことでした。

別の世界へ飛び込んでいくための第一の関門がリセットです。
その関門を越えると、障害のあるわが子との生活にも前向きに向き合える心持になると感じています。

とはいえ、「障害受容」と言っても、24年間、知的障害(知的発達症)を伴う自閉症の息子を育ててきた私自身が、完全に障害を受容できているかというと、決してそうではありません。

学生時代の友人たちは、すでに孫ができて一緒に旅行を楽しんだり、子どもが自立して夫婦2人で自由な時間を楽しんだりしています。

そんな話を聞くと、私にはまったく縁のない世界だと感じてしまいます。私の子育てはこれからもずっと続きますし、親なきあとのことも心配です。息子はおそらく結婚することもないでしょう。つまり、孫ができる日も永遠に来ないのです。

そういった話題が中心のコミュニティに入ると、強い疎外感をおぼえたり、みんながまぶしく見えたりして、そんな自分を責めてしまうこともあります。
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