「風呂キャンセル界隈」!?完ぺき主義な自閉症息子が「水シャワー」で変わった夏
ライター:花森はな

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わが家の息子は通信制高校2年生。ASD(自閉スペクトラム症)と強度行動障害があり、現在は自宅からほとんど出られず引きこもり状態です。小学校3年生の3学期から登校を渋るようになり、5年生で再び学校へ通えるようになりましたが、6年生で完全に不登校となってしまいました。その後、特別支援学校の中等部に進み、通信制高校に進学しましたが、外に出られない日々が続いています。今回は、そんな息子の夏の入浴の話です。

監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。
多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。
入浴という大きな壁
「風呂キャンセル界隈(※)」という言葉が世の中に一気に広まった時、私は息子のことを一番に思いました。
息子は本格的な不登校が始まった頃、入浴を嫌がるようになりました。不登校とうつ状態には関係性があることも多く、以前に読んだ記事でうつ病の方が入浴困難になることがあると知っていたので、同様の症状ではないかなと思いました。しかし親として、入浴せずに学校へ登校することには抵抗がありました。次第に息子は「学校に行きたくないから、お風呂にも入らない」と言うようになっていきました。もう高学年、入浴を無理強いできる訳もなく、風呂に入らない日々が続き、息子の調子のよさそうな時に「お風呂いけそう?」と声かけをすることにしました。
(※)さまざまな理由からお風呂に入らない・入れないことを表したSNS発の言葉
息子は本格的な不登校が始まった頃、入浴を嫌がるようになりました。不登校とうつ状態には関係性があることも多く、以前に読んだ記事でうつ病の方が入浴困難になることがあると知っていたので、同様の症状ではないかなと思いました。しかし親として、入浴せずに学校へ登校することには抵抗がありました。次第に息子は「学校に行きたくないから、お風呂にも入らない」と言うようになっていきました。もう高学年、入浴を無理強いできる訳もなく、風呂に入らない日々が続き、息子の調子のよさそうな時に「お風呂いけそう?」と声かけをすることにしました。
(※)さまざまな理由からお風呂に入らない・入れないことを表したSNS発の言葉
うつ病とは、気分の落ち込みや意欲の低下などの症状が特徴の精神疾患です。これらの症状がただの気分の落ち込みではなく病的なうつ状態であることを意味しています。
また、うつ病は精神症状だけでなく、食欲や睡眠の乱れ、疲労感などの身体症状もあります。特に、初期症状としてまずは身体症状が表れることが多いと言われています。
ですが、息子はけして入浴が嫌いな訳ではないのです。幼い頃はむしろお風呂が大好きでした。好きだからこそ、入浴すると完璧にこなしたいこだわりがありました。
・シャンプーは油汚れが落ちるまで最低2回はしたい
・体はゴシゴシと隅から隅まで洗いたい
・洗顔もしっかりと行いたい
・湯船に入浴剤を入れてじっくり浸かりたい
これらのことを全て行おうとすると、入浴が億劫になってしまう……悪循環の繰り返しでした。
・シャンプーは油汚れが落ちるまで最低2回はしたい
・体はゴシゴシと隅から隅まで洗いたい
・洗顔もしっかりと行いたい
・湯船に入浴剤を入れてじっくり浸かりたい
これらのことを全て行おうとすると、入浴が億劫になってしまう……悪循環の繰り返しでした。
夏場の救世主!それは……「水シャワー」!!
ただやはり夏場にお風呂に入ってもらわないと、困るのは家族です。あまりにお願いしすぎると頑なに拒否をしますし、そもそも起き上がれない時もあります。ホームヘルパーさんがいらしている時に入浴介助をお願いするという案もあったのですが、やはり思春期ということもあり、それは却下になりました。
息子は気温が高いとパニックを起こしやすくなります。ずっとお風呂に入っていないと、体内に熱がこもったような状態で、本人もつらそうな状況が続きました。「お風呂にさえ入ってくれたら……」と心から思う日々もしばしば。
そんな時に思いついたのが水シャワーでした。私自身が、中学生の時に夏の部活から帰ってきたらいつも浴びていたのです。洗髪や体を洗うのは、本格的な入浴の時。とりあえず暑さ回避と汗を流すことが目的でした。
「全部洗わなくていい!浴びるだけでいい!よくテレビで滝に打たれて修行してる人おるやろ!?あんな感じでとにかく水だけ浴びてみよう!」
と息子を促してみると、息子も「風呂に入れてない自分」にどこか嫌気がさしていたようで、すんなりと浴室へ向かってくれました。そして上がると開口一番に「これむっちゃ気持ちいいな!?」と言ってくれました。
息子は気温が高いとパニックを起こしやすくなります。ずっとお風呂に入っていないと、体内に熱がこもったような状態で、本人もつらそうな状況が続きました。「お風呂にさえ入ってくれたら……」と心から思う日々もしばしば。
そんな時に思いついたのが水シャワーでした。私自身が、中学生の時に夏の部活から帰ってきたらいつも浴びていたのです。洗髪や体を洗うのは、本格的な入浴の時。とりあえず暑さ回避と汗を流すことが目的でした。
「全部洗わなくていい!浴びるだけでいい!よくテレビで滝に打たれて修行してる人おるやろ!?あんな感じでとにかく水だけ浴びてみよう!」
と息子を促してみると、息子も「風呂に入れてない自分」にどこか嫌気がさしていたようで、すんなりと浴室へ向かってくれました。そして上がると開口一番に「これむっちゃ気持ちいいな!?」と言ってくれました。
どんどん行水していこう!できる時だけ水シャワー習慣
それから「水シャワーなら……」とちょくちょく浴室に自ら向かってくれるようになった息子。どうやら入浴のハードルを落としたのが、いいきっかけになったようです。その様子を児童精神科の先生にお話すると、こんな答えが返ってきました。
「お母さん……水シャワーではありません。『行水(ぎょうずい)』と言ってください。古来からの健康法です」
「どんどんやりましょう!入らないより全然いいです!」
という先生の後押しもあり、昨夏は水シャワーの日々でしたが、人間不思議なもので、一つハードルをクリアすると「もしかしてこれもいけるんじゃないか……?」という気持ちが生まれ、あんなに入浴拒否をしていた息子が「ついでに髪の毛洗ったわ!」「体もかゆいからボディソープでゴシゴシした!」という日が増えてきました。
普通の入浴よりも水シャワーの回数の方が多く、けして毎日ではありませんでしたが、息子が浴室へ向かってくれるようになった回数は確実に増えていました。
「お母さん……水シャワーではありません。『行水(ぎょうずい)』と言ってください。古来からの健康法です」
「どんどんやりましょう!入らないより全然いいです!」
という先生の後押しもあり、昨夏は水シャワーの日々でしたが、人間不思議なもので、一つハードルをクリアすると「もしかしてこれもいけるんじゃないか……?」という気持ちが生まれ、あんなに入浴拒否をしていた息子が「ついでに髪の毛洗ったわ!」「体もかゆいからボディソープでゴシゴシした!」という日が増えてきました。
普通の入浴よりも水シャワーの回数の方が多く、けして毎日ではありませんでしたが、息子が浴室へ向かってくれるようになった回数は確実に増えていました。
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