走り回っていた息子が学芸員に!?博物館や美術館が自閉症兄妹の「居場所」に変わった親子の工夫【障害者手帳活用も】
ライター:寺島ヒロ
Upload By 寺島ヒロ
うちの子どもたちは、小さい頃から美術館や博物館が大好きです。現在でも障害者手帳を活用しながら通い続けています。最初は落ち着いて見られなかった展示室も、今では“お気に入りの居場所”に。今回はそこにたどり着くまでの小さな工夫と、子どもたちの学びについて書かせていただきます。
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
ちっとも落ち着いて見てくれなかった子ども時代
わが家ではよく家族揃って美術館や博物館に行きます。休日にどこかへ行こうというとき、「ショッピングモール」よりも「博物館」「展覧会」が自然に候補に挙がります。多くの場合、障害者手帳で割引が適用されるので、お財布にも優しく、そして何より、見て・感じて・考えることで脳にも栄養をたっぷり補える――気がします(笑)。
もっとも、最初から今のように落ち着いて楽しめていたわけではありません。幼稚園の年長さんぐらいの頃は、展示室で走り出してしまったり、ガラスケースを叩こうとしたり、集中が続かず、すぐに「もう帰りたい」と言い出したり、そんなことの連続でした。私自身も当時は「うちの子どもたちには無理だったかな」と、家に帰ってから反省しきり……。
それでも、子どもたちは展示会のネット広告やチラシなどを見ては「これ行きたい!」「明日は行ける?」と聞いてくるのです。「行ったって、ろくに見ないですぐ帰るって言うくせに……」とは思いましたが、その度にハイハイと連れて行ったのでした。
なぜ諦めずに何度も連れて行ったのかと言うと、理由は単純で、私自身が美術館や博物館に行くのが好きだったからです。あまり人が多いようだと走り出した時につかまえられなくなるので、行くのは平日の空いている時間帯に限られましたが、とにかく子どもが「行きたいというと怒られる」と委縮だけはしないようにということを考えていました。
だんだんとマナーを覚えた小学生時代
よく利用したのが、美術館や博物館で開催されている子ども向けのワークショップです。
子どもたちで協力して絵を描いたり、化石を掘って磨いたり、昔の楽器を触ってみたりと、美術館や博物館には体験を通して学べるプログラムが数多くあります。利用料金がかかるものもありますが、うちの子どもたちが参加したものは無料なことが多かったです。
展示室を大人に合わせて静かに歩くのは難しくても、ほかの子どもと一緒に手を動かすワークショップなら楽しめる。そうして少しずつ、「この場所は楽しい」「自分の興味を持ったことに応えてくれる大人がいる」ということを覚えて、小学生になる頃には「この場所にいるにふさわしい振る舞いをしたい」と意識が変わっていきました。
今振り返ってみると、この“慣れ”のプロセスがとても大きかったと思います。環境に慣れ、ルールを覚え、その場にふさわしいふるまいを意識する――そうした経験を子どもたちのペースで積み重ねることができたと思いますし、また私自身も、孤立しがちな障害児の子育ての期間に、外の世界とのつながりを維持することができました。
大人の世界に触れるきっかけにも
特に娘にとっては、その意味がとても大きかったと思います。
娘は不登校の時期が長く、同年代の友達と長く関わる機会がほとんどありませんでした。一緒のクラスにいる間は仲良しの友達もできるのですが、学校を休みがちな娘の場合、クラス替えで接点が切れてしまいます。
娘は不登校の時期が長く、同年代の友達と長く関わる機会がほとんどありませんでした。一緒のクラスにいる間は仲良しの友達もできるのですが、学校を休みがちな娘の場合、クラス替えで接点が切れてしまいます。
けれど、美術館や博物館では、娘はワークショップを通して出会えたアーティストの先生やスタッフの方々の顔を覚え、「あの人がいるからまた行きたい!」と通って顔見知りになり、多くの方々と何年越しものお付き合いをさせていただきました。あの当時、自分を受け入れてくれる大人に会えたことは、娘には本当に大きな支えだったと思います。
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