【公認心理師回答】発達障害の小学生「間違い不安・指示忘れ」原因と家庭・学校でできる具体的対応3選
ライター:河野りぬ
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現在、小学2年生の息子は、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受けています。
学校生活の中では、「バツをつけられることへの強い不安」 や 「先生の指示をうまく理解できない」 といった困りごとが続いています。
今回は、息子が今まさに直面している課題について、鳥取大学大学院教授で発達障害を専門とする井上雅彦先生に、家庭や学校でできる対応のヒントを伺いました。
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
Q1.“バツをつけられること”に極端な不安がある
息子は入学当初から特別支援学級に通い、丁寧に学習をサポートしていただいています。そのおかげで、授業の内容にはしっかりついていくことができています。
しかし“丸つけ”の場面になると、間違いを異様に怖がり、問題を解き終わるたびに「ねえ、これ合ってる?」 と必ず事前確認を求めます。
さらに、「バツはつけないで!先に直すから教えて!」と、バツをつけられること自体を極端に避けようとします。
「学習は間違えるのが当たり前だよ」「直しながら分かるようになっていくんだよ」と何度伝えても、頭では理解しているようなのに、不安のほうが強くて受け入れられない様子です。
しかし“丸つけ”の場面になると、間違いを異様に怖がり、問題を解き終わるたびに「ねえ、これ合ってる?」 と必ず事前確認を求めます。
さらに、「バツはつけないで!先に直すから教えて!」と、バツをつけられること自体を極端に避けようとします。
「学習は間違えるのが当たり前だよ」「直しながら分かるようになっていくんだよ」と何度伝えても、頭では理解しているようなのに、不安のほうが強くて受け入れられない様子です。
この調子では、将来社会に出た時に「間違いを指摘される」「修正する」という場面を到底受け入れられないのでは、と不安になります。
また、息子は“切り替えが苦手”という特性もあり、例えばテストなどで分からない問題が出た時に、時間を意識して先の問題を解かなければならないような場面でも、間違いを恐れるあまり別の問題へ移ることも難しい状態です。
今は学習内容がまだ易しいため大きなつまずきはありませんが、今後どんどん難しくなっていくにつれ、テストや授業で不安が強く出てしまい、本来の力を発揮できないのではと心配しています。
こうした強い不安に対して、家庭や学校ではどのように関わればよいでしょうか?
また、息子は“切り替えが苦手”という特性もあり、例えばテストなどで分からない問題が出た時に、時間を意識して先の問題を解かなければならないような場面でも、間違いを恐れるあまり別の問題へ移ることも難しい状態です。
今は学習内容がまだ易しいため大きなつまずきはありませんが、今後どんどん難しくなっていくにつれ、テストや授業で不安が強く出てしまい、本来の力を発揮できないのではと心配しています。
こうした強い不安に対して、家庭や学校ではどのように関わればよいでしょうか?
公認心理師 井上雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座教授)からのアドバイス
正解しないといけないと思うあまり、修正を拒んだり、テストを拒否したりということが先生や親とのやりとりの中で課題になることがあります。不安を和らげるためには、テストや学習場面ではなく遊びの場面で、例えば「クイズごっこ」のような形で、物を隠してどっちに入っているか、多いか少ないか、箱の中に何が入っていると思うかなど、知識以外の偶発性で答えが出るような遊びの中から〇と×を繰り返すことによって、間違えることに慣れていくという方法があります。「勝ち負けこだわり」への対応と同じような感じです。慣れてきたら少しずつ「スリーヒントクイズ」のような知識を問うものにしたり、簡単な算数クイズにしてもよいでしょう。口頭での間違いと修正を受け入れられることが、まず前提となると思います。
また、消しゴムで消されることに抵抗を感じる子どももいます。この場合は指導者が消してあげるということで切り抜けられることもあります。どうしてもテストを受けなければならない場合には、×の時(間違ったとき)に「×」をつけずにそれ以外の形(〇の形を微妙に変えたものにするなど)で対応し、採点をするお子さんもいました。そのお子さんは現在高校生になっていますが、受験もクリアしておられます。回答やテスト自体を拒否することにならないよう、あせらず子どもの納得できる方法を探してあげることが大切かと思います。
また、消しゴムで消されることに抵抗を感じる子どももいます。この場合は指導者が消してあげるということで切り抜けられることもあります。どうしてもテストを受けなければならない場合には、×の時(間違ったとき)に「×」をつけずにそれ以外の形(〇の形を微妙に変えたものにするなど)で対応し、採点をするお子さんもいました。そのお子さんは現在高校生になっていますが、受験もクリアしておられます。回答やテスト自体を拒否することにならないよう、あせらず子どもの納得できる方法を探してあげることが大切かと思います。
Q2. 先生からやることを説明されても、手順を忘れたり確認を忘れてしまう
息子は、先生から「これをやってね」と説明を受けても、手順を覚えておいたり、次に何をするのかを思い出すことがとても苦手です。
例えば、「プリントを出して、名前を書いて、1番から解いてね」と言われても、席に戻る頃にはどこから取りかかればいいのか忘れてしまうといった感じです。
また、「終わったら先生に見せてね」と言われていても、その確認自体を忘れてしまうことがあります。そのため、しばしばやることが残っているのに、ぼーっと別のことに気がそれている姿が見られます。
家でも同じような場面があり、
本人は決して怠けているわけではなく、一度に複数の情報を保持することが難しいように感じています。特に小学校に入ってからは、こういった不注意がとても目立つようになりました。
こうした“指示理解のつまずき”に対して、家庭や学校ではどのような支援や工夫を取り入れるとよいのでしょうか?
例えば、「プリントを出して、名前を書いて、1番から解いてね」と言われても、席に戻る頃にはどこから取りかかればいいのか忘れてしまうといった感じです。
また、「終わったら先生に見せてね」と言われていても、その確認自体を忘れてしまうことがあります。そのため、しばしばやることが残っているのに、ぼーっと別のことに気がそれている姿が見られます。
家でも同じような場面があり、
- 持ち物を準備する
- 終わったものを片付ける
- 次にやることを切り替える
本人は決して怠けているわけではなく、一度に複数の情報を保持することが難しいように感じています。特に小学校に入ってからは、こういった不注意がとても目立つようになりました。
こうした“指示理解のつまずき”に対して、家庭や学校ではどのような支援や工夫を取り入れるとよいのでしょうか?
公認心理師 井上雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座教授)からのアドバイス
指示に従えないという問題は、先生が最初に指示をした時にうまく注意を向けていない、一つ終わったあとにほかのことに気がそれやすくほかのことをし始めてしまう、などの注意に関する問題があると思います。その他、長い指示や抽象的な指示が理解できないといった理解の問題や、指示は聞いて理解できてもやる気が出ないといった「動機づけ」の問題など、何段階かの複数の困難が関連していると思います。最初の指示を聞くという段階で、指示をする人が名前を呼ぶとか「今から大事なことを言うよ」とか、復唱するなどの確認、一旦終わった後に報告してもらう、などが注意に対する対応として考えられます。
また口頭指示だけではなく、することの手順を学校では黒板に書いてもらったり、手元にメモを置くなど視覚的に指示を伝えることで見通しを高めることができると思います。注意のそれやすさに関しては、机の位置など環境を調整することで余計な刺激が入りにくくするなどの対応も考えられます。家庭では1対1の場面が多いと思うので、家庭で試してみてうまくいった場合は、学校の先生と話し合ってもよいかもしれません。
また口頭指示だけではなく、することの手順を学校では黒板に書いてもらったり、手元にメモを置くなど視覚的に指示を伝えることで見通しを高めることができると思います。注意のそれやすさに関しては、机の位置など環境を調整することで余計な刺激が入りにくくするなどの対応も考えられます。家庭では1対1の場面が多いと思うので、家庭で試してみてうまくいった場合は、学校の先生と話し合ってもよいかもしれません。
Q3. 短い文章に要点をまとめられない。言葉が出ない
息子は、学校で出される 短歌・標語・ひとこと感想・「誰かへひとこと」 といった、“短くまとめるタイプの文章課題”がとても苦手です。
文章そのものが書けないわけではなく、
文章そのものが書けないわけではなく、
- 何を中心に書けばいいのか
- どこを省けばいいのか
- 短い文章に必要な言葉だけを選ぶ
また、授業中に先生から「じゃあ、ひとこと感想を言ってみて」と聞かれた時も、言葉が出ずに黙ってしまうことが多々あります。普段の会話ではおしゃべりができるのに、短いコメントや、求められている質問の回答がうまく出てこないことに不思議さを感じています。
一方で、長めの説明やエピソードを話すことは得意な様子もあり、求められている答えを察したり、「短くまとめる」ことだけが突出して難しいように見えます。
このような特性は、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)のどのような情報処理の特徴と関係しているのでしょうか?
また、家庭でできるサポートや練習方法があれば教えていただきたいです。
一方で、長めの説明やエピソードを話すことは得意な様子もあり、求められている答えを察したり、「短くまとめる」ことだけが突出して難しいように見えます。
このような特性は、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)のどのような情報処理の特徴と関係しているのでしょうか?
また、家庭でできるサポートや練習方法があれば教えていただきたいです。
公認心理師 井上雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座教授)からのアドバイス
文章で答えを求められる場合は一旦長めの文章で書いて、他者からのアドバイスや対話を重ねながら絞り込んでいくという作業を繰り返しながら、徐々に自分だけでできるようにしていくのがよいと思います。しかし、説明文の要点をまとめる作業と、感想を書くのでは必要なスキルや難易度はかなり違います。感想文の場合は、自分の視点での話題の絞り込みや抽出が必要なので、ある程度パターンを決め、例えば「私が一番印象に残ったのは〇〇でした」という書き出しで、次に抜き出す箇所を選び、そのあとに自分の考え(根拠)や共感した体験などを書くようにしてみるというやり方もあります。
口頭で感想を聞かれる場合は「よい答えをしなければ」と自ら追い込んでしまったり、みんなからどう思われるかを不安に思ったり、先生から「もっと短くまとめて」と言われるのが嫌だったり、さまざまな心理的プレッシャーもあるかもしれません。最初に当てられるのではなければ、前の人が答えたものを少し変えて答えるという「やり過ごす」方法もあるかもしれません。
口頭で感想を聞かれる場合は「よい答えをしなければ」と自ら追い込んでしまったり、みんなからどう思われるかを不安に思ったり、先生から「もっと短くまとめて」と言われるのが嫌だったり、さまざまな心理的プレッシャーもあるかもしれません。最初に当てられるのではなければ、前の人が答えたものを少し変えて答えるという「やり過ごす」方法もあるかもしれません。
執筆/河野りぬ
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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