【小4・自閉症】課外学習「休む」か「我慢して行く」か?先生と親子で決めた「無理をしない」参加のカタチ

ライター:ゆきみ
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ASD(自閉スペクトラム症)がある長男けんとは、幼少期から薄暗い場所が怖かったり、苦手な音があったりするようです。家族でお出かけをする際も、配慮が必要な時があります。そんなけんとの小学校の課外学習の行先が、よりによって……けんとの「苦手なあの場所」だったのです。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

楽しめると思っていた課外学習が実は…

ASD(自閉スペクトラム症)と3歳の時に診断を受けた長男けんとは、現在小学4年生。自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍しています。構音障害があり、集団行動が苦手、数字が大好きな男の子です。

けんとは、薄暗い場所で静かに座って映像を観ることが昔からどうしても苦手なようで、その1つがプラネタリウム鑑賞です。家族で科学館に行った際、弟が「プラネタリウムが観たい!」と言うと、けんとと私は別のエリアで待つというのが、いつものパターンです。
課外学習の数日前になって、突然けんとが「ボクは課外学習をお休みします」と家で宣言
課外学習の数日前になって、突然けんとが「ボクは課外学習をお休みします」と家で宣言
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そんなある日、けんとが「課外学習のしおり」を持って帰ってきました。4年生の課外学習で科学館へ行くとのこと。「科学館は好きだし、けんと、楽しめるといいな」と思っていたところ、課外学習の数日前になって、突然けんとが「ボクは課外学習をお休みします」と家で宣言したのです。理由をうまく説明するのが苦手なので、ゆっくり話を聞くことにしました。

苦手は避けつつ参加する方法を考えたくて…

課外学習を休みたい理由を聞いていくと、行程に含まれていたプラネタリウムにどうしても行きたくないのだということが分かりました。しかし、「科学館には行きたいけれど、プラネタリウム鑑賞だけが嫌」という理由で全てをお休みにするのは、本人にとっても残念かもしれないなと感じました。
けんとに最終確認で、「プラネタリウムには行きたくないけれど、科学館には行きたいの?」と質問すると、「行きたい」とのこと。そこで、何か良い方法がないか、特別支援学級の担任の先生に直接、相談しに行くことにしました。

事情を説明すると、先生も「友だちと科学館へ行く経験はぜひしてほしい」と思っているとのこと。しかし、引率の先生の人数が決まっており、誰かがけんとの付き添いをして、プラネタリウムの外で待機するのは難しいと説明を受けました。けんとは気になるものを見つけると衝動的に行動してしまうので、1人で待つのも無理です。私がその日、プラネタリウム鑑賞の時間帯に時間が取れそうだったので、科学館へ行き、ロビーでけんとと一緒に待つことは可能なのか、担任の先生に伺ってみました。すると、先生が学校側に確認してくださり、無事に許可がおりました。
私も科学館へ行き、ロビーでけんとと一緒に待つことは可能なのか、担任の先生に伺ってみました
私も科学館へ行き、ロビーでけんとと一緒に待つことは可能なのか、担任の先生に伺ってみました
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プラネタリウム鑑賞の時間に星座の本を…

それから、けんとと私で、再び話し合いをすることにしました。先生とのお話しの結果をけんとに伝えると、安心した表情に。

私は、けんとがプラネタリウムに入りたくない気持ちは理解したうえで、課外学習として行くのだから『遊びながら待つ』というのは違うと思っていることを伝えました。そして「お友だちが星座の勉強をしている間、けんとはロビーで同じように星座のお勉強をしよう」と提案してみました。するとけんとも「ボク、星座のお勉強をする!」と前向きに答えてくれました。けんとはプラネタリウムには入りたくないけれど、星座のお勉強自体をしたくない訳ではないことが改めて分かりました。
当日は、私が図書館で何冊かの星座の図鑑を借りて、持っていきました
当日は、私が図書館で何冊かの星座の図鑑を借りて、持っていきました
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そして当日、私は図書館で何冊かの星座の図鑑を借りて、持っていきました。そしてロビーのイスに並んで座り、図鑑を一緒に読むことに。けんとは毎朝テレビの星座占いを楽しみにしているので、家族の星座のページを開くと興味を示し、星の説明も夢中になって読んでいました。星座クイズを出しあったり、星座表を使って星座探し競争をしたりしながら、プラネタリウムが終わるまでの約1時間、穏やかに過ごすことができました。
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「伝える力」をつけるために考えること

課外学習の内容確認と話し合いを早めにしようと心に決めました
課外学習の内容確認と話し合いを早めにしようと心に決めました
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今回は、プラネタリウム鑑賞の時間帯に私が同行できたのですが、今後はそうできない場合もあるかもしれません。その時どうするかは、私としても考えておく必要があります。もっと早い段階で、行き先や活動内容を私がしっかりと確認し、けんとと気持ちを共有する時間をつくり、学校にも早く相談することが大切だったのかもしれないなと感じました。

けんとは不安がとても強いので、こういったことはよくあります。その時に「休む」だけでなく、「どうしたら行けるのか」「どの部分なら参加できるのか」を一緒に話し合っていきたいと思っています。無理はせず、可能な範囲の中で「行ける方法」を考えること。無理だと思うなら、それを伝えること。「ここは絶対に嫌だ」と伝えられる力を身につけることができたならば、将来、親亡きあとも、自分で行動する助けになるかもしません。

今回、自分の気持ちをきちんと伝えてくれたことや、星座のお勉強をして楽しく待っていられたことが、けんとにとっての大切な成功体験の1つになっていたらいいなと願っています。
執筆/ゆきみ
(監修:初川先生より)
けんとくんの「課外学習をお休みします」のエピソードをありがとうございます。ASD(自閉スペクトラム症)のあるお子さんだと苦手なシチュエーションがあることも多いですね。それについて、お子さんからすると、行くか行かないかの2択くらいしか思いつかないだろうので、「お休みします」という表明になったのかなと思います。同様にして、苦手な行事について「嫌だ」「出ない」「嫌い」「休む」等々さまざまな短い言葉で教えてくれたり、あるいはそれが近づくにつれてイライラしたり、腹痛や頭痛を訴えたりといった心身の不調で知らせてくれる子もいるかもしれません。

今回はゆきみさんがけんとくんの話を聞く中で、「プラネタリウムが苦手」「科学館は行きたい」という大事な事柄を聞き出してくださったのが何よりです。お子さんの訴えからすると、「休む」しかないので、全部つらいのかと思いきや、実はそうではない。こうしたことはさまざまな場面でよく見られます。お子さんがどうしたいのか(科学館には行きたい)、お子さんの願いを確認するとともに、苦手な場面はどこなのか、どう調整できそうかも確認する。そして、先生と相談する。とてもよい調整だと思いました。今回はゆきみさんが課外学習の当該時間に付き合えたことも幸いでしたし、その間に、一緒に星座の勉強をして待つことができたのもよかったですね。けんとくんは勉強が嫌なのでも、星座が嫌なのでもなく、プラネタリウムが苦手なのであって、みんながプラネタリウムで学んでいることを、同じとまではいかずとも、少しでも学んで待つことができたこと、本当に素晴らしいですね。

学年が上がると社会科見学や調理実習など体験型学習が増えます。イレギュラーなことなので、変化が苦手なお子さんや今回のように特定の場面が苦手な子もいると思います。単に休む(撤退する)ではなく、どこまでならできるか、どう調整したらよさそうか考える。ゆきみさんも書かれていますが、いずれ本人一人でやっていってほしいところですが、小中学生のうちはなかなか難しいかもしれません。ご家庭でそこを話し合って、その後学校と調整していくことと思いますが、話し合いの際の観点をお子さんが理解していくことが大事な経験となります。何が苦手で、何は頑張りたくて、どうしたら折り合いがつけられそうか。まだお子さん一人でそこを言語化できない時期なので、ぜひそこを保護者の方にはお力添えいただきたいです。まずは、お子さんが「休む」「いやだ、出ない」等言ってきても、保護者の方がそこにショックを受けず、何が不安なのか、何が引っ掛かっているのか、お子さんの気持ちを因数分解するように(分類してグループにまとめていくように)じっくり聞いていただければと思います。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030804
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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