【専門家コラム】医療×NPO×地域のあいだに立ち、診察室の"限界"を超える。LINEで24時間相談、現役小児科医が挑む「地域の居場所」づくり
ライター:増田卓哉
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はじめまして。自治医科大学小児科の増田卓哉と申します。
ふだんは大学病院の小児科医として診療に携わりながら、特例認定NPO法人「そらいろコアラ」の代表として、妊娠期から子育て中の方々の孤立を防ぐ取り組みを続けています。
このコラムでは、医療の現場で感じていること、地域や家庭で起きている“声にならないSOS”の存在、そして多様な背景や発達特性をもつ子どもとその家族をどのように支えていけるかについて、読者の皆さまと一緒に考えていきたいと思います。
執筆: 増田卓哉
自治医科大学小児科学助教
特例認定NPO法人そらいろコアラ共同代表理事
小児科医として、神経発達症、マルトリートメント、貧困、医療的ケア児など、社会的背景をもつ子どもや家族への包括的支援に取り組む。特例認定NPO法人そらいろコアラでは、「医療の気づきを支援につなぐ」ことをテーマに、SNS相談や地域の居場所づくりを通じて、妊娠・出産・育児期の孤立を減らし、「家族まるごと支える地域づくり」を実践している。
特例認定NPO法人そらいろコアラ共同代表理事
小児科医としての原点 ――「からだ・こころ・くらし」を診る
小児科を選んだ一番の理由は、臓器別の専門ではなく、子どもたちの「からだ」「こころ」「くらし」のすべてを一体として診る“総合医”である点にあります。
新生児から思春期まで、子どもは発達段階によって症状の表れ方も、困りごとも、必要なサポートも大きく変わります。医学的な知識だけでは、子どもを支えることはできません。家庭の状況、学校生活、友人関係――その子の“くらし全体”を理解してこそ、本当の意味での治療につながります。
学生時代には精神科に進むことも迷いましたが、最終的には「身体も心も生活も、全部ひっくるめて診る」という小児科のスタンスに惹かれ、この道を選びました。
神経発達や子どものこころを専門とし、医療的ケアが必要なお子さんや、そのきょうだい、ご家族を支えるNPO法人「うりずん」の活動にも関わっています。
新生児から思春期まで、子どもは発達段階によって症状の表れ方も、困りごとも、必要なサポートも大きく変わります。医学的な知識だけでは、子どもを支えることはできません。家庭の状況、学校生活、友人関係――その子の“くらし全体”を理解してこそ、本当の意味での治療につながります。
学生時代には精神科に進むことも迷いましたが、最終的には「身体も心も生活も、全部ひっくるめて診る」という小児科のスタンスに惹かれ、この道を選びました。
神経発達や子どものこころを専門とし、医療的ケアが必要なお子さんや、そのきょうだい、ご家族を支えるNPO法人「うりずん」の活動にも関わっています。
地域医療の現場で見えた“孤立”
自治医科大学を卒業した私は、修学資金返済のために早い段階で地域医療に携わりました。初期研修後すぐに地域の小児医療の現場に入ったことで、「医療の手前」にある課題の大きさに気づくようになりました。
たとえば、喘息で入退院を繰り返すお子さんがいました。治療だけではなかなか良くならず、お話を丁寧に聞く中で「家ではなんとなく落ち着けない」と感じている様子がありました。一方で、その保護者の方は本当に懸命に子育てをされていました。ご自身が幼少期からさまざまな苦労を経験されており、「どう接したらいいのか自信がない」と迷いながらも、毎日を一生懸命に支えておられました。
子育ては、生活の忙しさと常に隣り合わせです。きょうだいの世話や家事、介護、仕事などが重なると、定期受診が難しくなったり、受診したい気持ちはあっても心の余裕がなくなったりすることがあります。また、「こんなことで受診していいのだろうか」「叱られてしまわないだろうか」と、ためらいが生まれるのはごく自然なことです。
子育ての大変さが続くと、保護者の方が心身の不調を抱えることもあります。お子さんも保護者の変化にとても敏感で、「おなかが痛い」「学校に行きたくない」というかたちで気持ちを表すことがあります。
どの家庭にも、誰にでも、生活が「少し大変になる時期」は訪れます。丁寧に診察をしていくと、子どもの症状の“根っこ”が見えてくることがあります。
しかし、その根っこにある課題を、診察室だけで解決することは非常に難しい。医療にできることは全体のほんの一部です。診察室で気づいたことを地域にどう戻すか、どこに橋渡しできるのか――そこに限界を感じる場面も多くありました。
この「医療の限界」と「地域の孤立」が、後にNPOを立ち上げる大きな原動力となりました。
たとえば、喘息で入退院を繰り返すお子さんがいました。治療だけではなかなか良くならず、お話を丁寧に聞く中で「家ではなんとなく落ち着けない」と感じている様子がありました。一方で、その保護者の方は本当に懸命に子育てをされていました。ご自身が幼少期からさまざまな苦労を経験されており、「どう接したらいいのか自信がない」と迷いながらも、毎日を一生懸命に支えておられました。
子育ては、生活の忙しさと常に隣り合わせです。きょうだいの世話や家事、介護、仕事などが重なると、定期受診が難しくなったり、受診したい気持ちはあっても心の余裕がなくなったりすることがあります。また、「こんなことで受診していいのだろうか」「叱られてしまわないだろうか」と、ためらいが生まれるのはごく自然なことです。
子育ての大変さが続くと、保護者の方が心身の不調を抱えることもあります。お子さんも保護者の変化にとても敏感で、「おなかが痛い」「学校に行きたくない」というかたちで気持ちを表すことがあります。
どの家庭にも、誰にでも、生活が「少し大変になる時期」は訪れます。丁寧に診察をしていくと、子どもの症状の“根っこ”が見えてくることがあります。
しかし、その根っこにある課題を、診察室だけで解決することは非常に難しい。医療にできることは全体のほんの一部です。診察室で気づいたことを地域にどう戻すか、どこに橋渡しできるのか――そこに限界を感じる場面も多くありました。
この「医療の限界」と「地域の孤立」が、後にNPOを立ち上げる大きな原動力となりました。
NPO「そらいろコアラ」が生まれたきっかけ
診察室で、「私、虐待しています」と涙ながらに話してくれた保護者の方がいました。その方には周囲に頼れる人が少なく、妊娠期から健診・予防接種を通して一緒に見守ってきました。苦しい気持ちを正直に打ち明けてくださったことは、「信頼関係を少しずつ築いていけば、SOSを出してもらえる」という強い確信につながりました。
一方で、誰にも妊娠を打ち明けられずに、自宅で出産し、医療につながった時点では助けることができない命とも出会いました。
「声にならないSOSをどうすればつかめるのか」――その問いが私の中で大きくなっていきました。
そこで2020年、「地域のSOSをキャッチし、安全な居場所につなぐ仕組みをつくりたい」という思いから、NPO法人「そらいろコアラ」を設立しました。
私たちの軸は明確です。医療の気づきを支援につなぎ、“孤立の連鎖を断ち切る”こと。
一方で、誰にも妊娠を打ち明けられずに、自宅で出産し、医療につながった時点では助けることができない命とも出会いました。
「声にならないSOSをどうすればつかめるのか」――その問いが私の中で大きくなっていきました。
そこで2020年、「地域のSOSをキャッチし、安全な居場所につなぐ仕組みをつくりたい」という思いから、NPO法人「そらいろコアラ」を設立しました。
私たちの軸は明確です。医療の気づきを支援につなぎ、“孤立の連鎖を断ち切る”こと。
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