環境調整と成功体験
今までの多くの研究から、ASD(自閉スペクトラム症)には遺伝的な要因(多くの関連遺伝子が報告されていること)、胎内環境や脳の働きの特徴など、さまざまな生物学的要因が関係していることが分かってきています。ただし、ひとつの「原因」で説明できるものではありません。
また、ASD(自閉スペクトラム症)の子どもたちは、注意のコントロールの難しさ(ADHD傾向)、協調運動の不器用さ、不安やうつ、睡眠の問題など、ほかの特性を合わせもっていることも多いとされています。大切なのは、目の前の『困っている行動・困っている場面』をひとつずつ整理していくことです。私が専門としている応用行動分析学(ABA)の立場では、「自閉症そのもの」を治す、というよりも、どんな場面でどんな行動が起きてその結果、どんなよいこと・困ったことが起きているかという行動と環境との関係に注目します。
たとえば、行列や待つことが苦手で、すぐに列を抜けてしまう、授業中に突然立ち歩いてしまう、苦手な課題になると、癇癪を起こしてしまう。こうしたときに、「性格だから仕方ない」「障害だから無理」ではなく、環境を調整すると同時に、どういうやり方ならその子が「うまくできた!」という経験を増やせるか?を考えていきます。具体的には、スモールステップに分けて少しずつ練習する。分かりやすい視覚的な手がかり(予定表、写真、イラスト)を使う、できたときに、子どもにとってうれしい結果(褒め言葉、好きな活動)をしっかり用意する、など、「うまくいく行動」を増やすための工夫をします。行動分析の考え方では、「障害」とは、その子にとって“うまくいく行動”の選択肢が少ない状態と捉えます。支援のゴールは、その子が自分らしく生きていくための行動のレパートリーを増やすことです。
また、ASD(自閉スペクトラム症)の子どもたちは、注意のコントロールの難しさ(ADHD傾向)、協調運動の不器用さ、不安やうつ、睡眠の問題など、ほかの特性を合わせもっていることも多いとされています。大切なのは、目の前の『困っている行動・困っている場面』をひとつずつ整理していくことです。私が専門としている応用行動分析学(ABA)の立場では、「自閉症そのもの」を治す、というよりも、どんな場面でどんな行動が起きてその結果、どんなよいこと・困ったことが起きているかという行動と環境との関係に注目します。
たとえば、行列や待つことが苦手で、すぐに列を抜けてしまう、授業中に突然立ち歩いてしまう、苦手な課題になると、癇癪を起こしてしまう。こうしたときに、「性格だから仕方ない」「障害だから無理」ではなく、環境を調整すると同時に、どういうやり方ならその子が「うまくできた!」という経験を増やせるか?を考えていきます。具体的には、スモールステップに分けて少しずつ練習する。分かりやすい視覚的な手がかり(予定表、写真、イラスト)を使う、できたときに、子どもにとってうれしい結果(褒め言葉、好きな活動)をしっかり用意する、など、「うまくいく行動」を増やすための工夫をします。行動分析の考え方では、「障害」とは、その子にとって“うまくいく行動”の選択肢が少ない状態と捉えます。支援のゴールは、その子が自分らしく生きていくための行動のレパートリーを増やすことです。
親御さんへのメッセージ
最近、「障害も個性だよ」という言葉をよく聞きます。この言葉には、「障害があっても、その人らしさを大事にしよう」という大切なメッセージが含まれています。一方で、注意が必要な点もあります。「個性だから自分でがんばって」「特別扱いはいらないよね」となってしまうと、本来受けられるはずの支援や配慮が受けられない、学校や社会が責任を果たさなくてよい、という方向にすり替わってしまうという危険もあります。「障害は個性」+「だからこそ、特別な支援を受ける権利がある」この二つをセットで考えることが大切です。
最後に、親御さんへの提案をメッセージとしてあげてみます。
今は「診断の有無」にかかわらず、児童発達支援というサービスが受けられるようになっています。サービスの受給には専門機関での相談や医療機関の受診などが必要となりますが、ぜひ勇気を出して「困りの持続を断ち切ってあげるための第一歩」を踏み出してみてください。支援のスタートは診断名に振り回される必要はありません。
何か子どもにできないことやうまくいかないことがあったとき、「この子のせい」ではなく「この特性と、この環境との組み合わせが難しいのだ」、「この子がこの先の人生を少しでも生きやすくするにはどんな工夫や支援があればいいだろう?」と考えてみていただければと思います。困った行動が出たとき、単に子どもを責めるのではなく、場所、時間帯、体調、周りの人の対応など、環境側の要因を冷静に振り返ってみてください。その中にきっとなにか工夫やヒントが見つかると思います。
また「できていないところ」だけでなく、「できていること」に目を向ける、小さな成功を見つけて言葉にしてあげることは、子どもの自己肯定感と「やってみよう」という力を育てます。
子どもの特性を知り、今してあげたほうがよいことが分かっても、さまざまな事情からできないこともあります。こうしたギャップに悩み自分を責めてしまうこともあるかもしれません。また周囲の人からの不理解や態度に傷つけられることもあるかもしれません。
あなたは決して一人ではありません。子どもを支えるためには、親御さんの心身の健康がとても大切です。信頼できる人や専門家に気持ちを話すことで自分を守ることも、大事な子育て支援のひとつです。一人ひとりの子どもとその家族に寄り添い、それぞれの価値観やペースで一歩ずつ一緒に歩んでくれる支援者を見つけていただけたらと思います。
最後に、親御さんへの提案をメッセージとしてあげてみます。
今は「診断の有無」にかかわらず、児童発達支援というサービスが受けられるようになっています。サービスの受給には専門機関での相談や医療機関の受診などが必要となりますが、ぜひ勇気を出して「困りの持続を断ち切ってあげるための第一歩」を踏み出してみてください。支援のスタートは診断名に振り回される必要はありません。
何か子どもにできないことやうまくいかないことがあったとき、「この子のせい」ではなく「この特性と、この環境との組み合わせが難しいのだ」、「この子がこの先の人生を少しでも生きやすくするにはどんな工夫や支援があればいいだろう?」と考えてみていただければと思います。困った行動が出たとき、単に子どもを責めるのではなく、場所、時間帯、体調、周りの人の対応など、環境側の要因を冷静に振り返ってみてください。その中にきっとなにか工夫やヒントが見つかると思います。
また「できていないところ」だけでなく、「できていること」に目を向ける、小さな成功を見つけて言葉にしてあげることは、子どもの自己肯定感と「やってみよう」という力を育てます。
子どもの特性を知り、今してあげたほうがよいことが分かっても、さまざまな事情からできないこともあります。こうしたギャップに悩み自分を責めてしまうこともあるかもしれません。また周囲の人からの不理解や態度に傷つけられることもあるかもしれません。
あなたは決して一人ではありません。子どもを支えるためには、親御さんの心身の健康がとても大切です。信頼できる人や専門家に気持ちを話すことで自分を守ることも、大事な子育て支援のひとつです。一人ひとりの子どもとその家族に寄り添い、それぞれの価値観やペースで一歩ずつ一緒に歩んでくれる支援者を見つけていただけたらと思います。
執筆/鳥取大学大学院教授 井上雅彦
井上先生への『つれづれポスト』 あなたの声をお待ちしています!
「井上雅彦のつれづれ便り」を読んでいただき、ありがとうございました。 このコラムでは、「つれづれポスト」を設置して、読者の皆さまからのお便りを募集します。
日頃の子育てでふと感じる疑問や、「先生ならこういうとき、どう考える?」「この話題について、先生のエッセイが読みたい!」といったリクエストはありませんか?そんな想いを、ぜひポストへ投函してください。
皆さまから届いたお便りをヒントに、井上先生がこれからの「つれづれ便り」を綴っていきます。 時には、あなたのお便りにコラムの中で井上先生からのお返事があるかもしれません。
「こんなこと聞いてもいいのかな?」と思わず、気軽にお手紙を送るような気持ちでお寄せくださいね。
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