【精神科医・本田秀夫】ADHDの特性の表れ方は十人十色!苦手を「大目に見る」「要所を押さえる」コツ
ライター:本田秀夫
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ADHDとは、不注意・多動性・衝動性を主な特徴とする神経発達症の一つです。ただし、「ADHDの特性があるなら、こういうことが苦手だろう」と決めつけるのではなく、子どもの行動を見ながら、「この子はどんなことで困っているんだろう」「どんなサポートをすればラクになるんだろう」と考えていってほしいと思います。
執筆: 本田秀夫
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授
附属病院子どものこころ診療部長
発達障害に関する学術論文多数。日本自閉スペクトラム学会理事長。
附属病院子どものこころ診療部長
ADHDの子どもたちは十人十色
ADHDは「注意欠如多動症」という名前の通り、「不注意で忘れ物やなくし物が多い」「気が散りやすい」「じっとしているのが苦手」といった特徴が見られます。ただし、その表れ方は子どもによってさまざまです。不注意はあるけれど落ち着きのある子どももいれば、不注意はあまりないものの、じっとしているのが苦手な子どももいます。
ひと口に「ADHD」と言っても、子どもたちの姿はじつに多彩です。
ひと口に「ADHD」と言っても、子どもたちの姿はじつに多彩です。
イギリスで提唱された仮説
イギリスの発達心理学者エドモンド・ソヌガ=バークら3名の研究者が、2010年に論文を発表して、「トリプルパスウェイモデル(三重経路モデル)」という考え方を提唱しました。これは「ADHDには、3つの神経心理学的な特徴が見られるのではないか」ということを示す仮説です。
あくまでも仮説ですが、ADHDを理解するための参考情報になるので、ここで少し紹介しておきましょう。
あくまでも仮説ですが、ADHDを理解するための参考情報になるので、ここで少し紹介しておきましょう。
神経心理学的な3つの特徴とは
彼らが提示した3つの特徴をごく簡単にかいつまんで言うと、次のようになります。
1.実行機能
ちょっとしたことに気を取られやすくて、自分の行動を抑制するのが難しいという特徴です。指示や計画の通りに行動することが苦手で、ミスが多くなりがちです。脳の「実行機能」という働きとの関連が考えられます。
【例】「片づけるのが苦手」
片づけが苦手な子どもには、「どこから手をつけよう」と悩むパターンが多いです。「何をどこにしまうか」「どんな順番で進めるか」という見通しを持てません。計画を立てるのが苦手で、考えているうちに疲れてきて、「もういいや、また今度やろう」みたいなことになります。これは実行機能が弱い場合によく見られます。
ちょっとしたことに気を取られやすくて、自分の行動を抑制するのが難しいという特徴です。指示や計画の通りに行動することが苦手で、ミスが多くなりがちです。脳の「実行機能」という働きとの関連が考えられます。
【例】「片づけるのが苦手」
片づけが苦手な子どもには、「どこから手をつけよう」と悩むパターンが多いです。「何をどこにしまうか」「どんな順番で進めるか」という見通しを持てません。計画を立てるのが苦手で、考えているうちに疲れてきて、「もういいや、また今度やろう」みたいなことになります。これは実行機能が弱い場合によく見られます。
2.報酬系
ゆっくり待てば報酬を得られると分かっていても、待てない場合が多いという特徴です。すぐに達成感が得られることを選びがちで、その結果として、行動が衝動的になります。脳の「報酬系」という領域との関連が考えられます。
【例】「切り替えがうまくできない」
遊びから宿題へ、遊んでいる場から帰宅するなど「切り替えがうまくできない」というケースも多いです。ASD(自閉スペクトラム症)の子どもにもその傾向がありますが、ASDでは強いこだわりやルーティンを崩す「変化への抵抗」があり、ADHDでは「続けたい気持ちが抑えにくい」といった違いがあります。
ゆっくり待てば報酬を得られると分かっていても、待てない場合が多いという特徴です。すぐに達成感が得られることを選びがちで、その結果として、行動が衝動的になります。脳の「報酬系」という領域との関連が考えられます。
【例】「切り替えがうまくできない」
遊びから宿題へ、遊んでいる場から帰宅するなど「切り替えがうまくできない」というケースも多いです。ASD(自閉スペクトラム症)の子どもにもその傾向がありますが、ASDでは強いこだわりやルーティンを崩す「変化への抵抗」があり、ADHDでは「続けたい気持ちが抑えにくい」といった違いがあります。
3.時間処理
時間の感覚を持つことがうまくできないという特徴です。所要時間を考慮しながら行動することが苦手で、約束した時間や期日を守れないことがよくあります。脳の「小脳」という部分との関連が考えられます。
【例】「時間にルーズ」
時間を守れない。友だちとの待ち合わせに遅れていく。そんなことが続くうちに、「時間にルーズ」だと言われるようになる。これも「ADHDあるある」の一つです。
このタイプの子どもは、数分後には出発しないと間に合わないのに、その時間内には終わらないことを始めたりして「時間の見積もり」の甘さがおうおうにしてあります。
時間の感覚を持つことがうまくできないという特徴です。所要時間を考慮しながら行動することが苦手で、約束した時間や期日を守れないことがよくあります。脳の「小脳」という部分との関連が考えられます。
【例】「時間にルーズ」
時間を守れない。友だちとの待ち合わせに遅れていく。そんなことが続くうちに、「時間にルーズ」だと言われるようになる。これも「ADHDあるある」の一つです。
このタイプの子どもは、数分後には出発しないと間に合わないのに、その時間内には終わらないことを始めたりして「時間の見積もり」の甘さがおうおうにしてあります。
ADHD理解の参考になる
彼らの研究では一つの調査結果として、ADHDの人全員が3つの特徴をすべて示すわけではなく、さまざまな組み合わせがあったと報告されています。子どもによって、特徴の現れ方は違うということです。
例えば、「片づけるのが苦手」には当てはまるけれど、時間の感覚はあるので「時間にルーズ」には該当しない、という場合もあると思います。反対に、片づけはそれなりにできるけど、とにかく時間にはルーズだという場合もあるでしょう。同じADHDでも、「時間処理」がうまくできる場合、できない場合もあるわけです。
また、一般的にはADHDの特徴として、「不注意」(うっかり)、「衝動性」(がまんできない)、「多動性」(落ち着きがない)が挙げられますが、なかには落ち着きはあるのに「片づけるのが苦手」で「時間にルーズ」という人もいます。
「ADHDだから、こういうことが苦手」と決めつけるのではなく、子どもの行動を見ながら、子どもの困りごとやサポートを考えていくことが大切です。トリプルパスウェイモデルのような観点も参考にしながら、子どもの特徴を理解していきましょう。
例えば、「片づけるのが苦手」には当てはまるけれど、時間の感覚はあるので「時間にルーズ」には該当しない、という場合もあると思います。反対に、片づけはそれなりにできるけど、とにかく時間にはルーズだという場合もあるでしょう。同じADHDでも、「時間処理」がうまくできる場合、できない場合もあるわけです。
また、一般的にはADHDの特徴として、「不注意」(うっかり)、「衝動性」(がまんできない)、「多動性」(落ち着きがない)が挙げられますが、なかには落ち着きはあるのに「片づけるのが苦手」で「時間にルーズ」という人もいます。
「ADHDだから、こういうことが苦手」と決めつけるのではなく、子どもの行動を見ながら、子どもの困りごとやサポートを考えていくことが大切です。トリプルパスウェイモデルのような観点も参考にしながら、子どもの特徴を理解していきましょう。
大目に見ながら、要所を押さえる
例えば、「片づけるのが苦手」「切り替えがうまくできない」「時間にルーズ」といった子どもの場合、いずれのケースでも、しっかりやらせようとすると、子どもに苦労を強いる可能性が高いです。ある程度は大目に見ましょう。
ただ、家族は整理整頓したいタイプだという場合もありますよね。その場合には「ここは散らかしてもいいけど、ここは絶対に片づける」というルールを決めてみてください。
また、片づけができず、なくし物が多い場合には、親が箱を用意して、「大事なものはここに入れよう」と子どもに伝えましょう。ものを取り出したいときは、箱をかき分けて探します。そのやり方が本人にフィットすれば、なくし物が減る可能性があります。
ただ、家族は整理整頓したいタイプだという場合もありますよね。その場合には「ここは散らかしてもいいけど、ここは絶対に片づける」というルールを決めてみてください。
また、片づけができず、なくし物が多い場合には、親が箱を用意して、「大事なものはここに入れよう」と子どもに伝えましょう。ものを取り出したいときは、箱をかき分けて探します。そのやり方が本人にフィットすれば、なくし物が減る可能性があります。
「切り替え」は近くでタイミングをはかる
親から「そろそろ夕飯だよ」と声をかけられても、動画を見るのをやめられない。「切り替えがうまくできない」という場合には、子どものやっていることを近くで見るようにしてください。
子どものそばに行って「ごはんができたよ」「キリのいいところで終わりにしよう」と声をかけ、動画を一緒に見るのです。そして、関連動画が出る前に、キリのいいタイミングで「ここでやめられる?」とたずねます。本人も「キリがいいな」と思うタイミングであれば、うまく切り替えられます。
子どものそばに行って「ごはんができたよ」「キリのいいところで終わりにしよう」と声をかけ、動画を一緒に見るのです。そして、関連動画が出る前に、キリのいいタイミングで「ここでやめられる?」とたずねます。本人も「キリがいいな」と思うタイミングであれば、うまく切り替えられます。
多少の遅れは許容して、親子で要所を押さえる
子どもの時間の感覚が弱いのであれば、多少の遅れは許容したほうがいいと思います。
「時間にルーズ」という場合、毎回きちんとやらせようとしても無理があります。それよりも、時間にルーズなことを織り込みながら、要所を押さえていくことをおすすめします。
普段の遅刻は大目に見ながら、親子で要所を押さえる。例えば、修学旅行の日には親が積極的にサポートして、遅刻を防ぎます。そんなふうにメリハリをつけながら対応していけば、本人があまりプレッシャーを受けず、致命的な失敗も経験しないで、のびのびと過ごしていけるでしょう。
「時間にルーズ」という場合、毎回きちんとやらせようとしても無理があります。それよりも、時間にルーズなことを織り込みながら、要所を押さえていくことをおすすめします。
普段の遅刻は大目に見ながら、親子で要所を押さえる。例えば、修学旅行の日には親が積極的にサポートして、遅刻を防ぎます。そんなふうにメリハリをつけながら対応していけば、本人があまりプレッシャーを受けず、致命的な失敗も経験しないで、のびのびと過ごしていけるでしょう。
※この記事は、本田 秀夫 (著) フクチマミ(マンガ)『最新 マンガでわかるADHDの子どもたち』(バトン社)より一部抜粋・再編集しています。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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