【ASD忘れ物対策】「プリント生還率10%」から卒業?息子が自ら編み出した、ちょっと不器用で愛おしい自立の形

ライター:寺島ヒロ
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忘れ物対策は、多くの発達障害のあるお子さんを養育するご家庭にとって頭の痛いテーマではないでしょうか。わが家ももちろん例外ではありません。学校に持って行くのも忘れるし、学校から持って帰るのも忘れる、そんな息子に振り回された日々を、振り返って書いてみたいと思います。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。

小さい頃から忘れ物の多かった息子

うちの息子タケル(ASD/自閉スペクトラム症)は、小さい頃から忘れ物が多く、手に持っているものでもどこかに置いてくるような子どもでした。特に頭の中が好きなことでいっぱいになると、ほかのことを考えたくなくなるようで、無理に持たせようとしたり、「忘れてるよ!」と声をかけると目に見えて不機嫌になっていました。
水筒を忘れた息子に「忘れてるよー!」と声をかけるけど……行動を止められた子どもは突然不機嫌に
水筒を忘れた息子に「忘れてるよー!」と声をかけるけど……行動を止められた子どもは突然不機嫌に
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何かしようとした途端に止められてほかのことをさせられるのは、私自身もとても嫌いなので、不機嫌になるのは分かるのですが、注意しないわけにもいきません。「もう嫌になった~!」とわめく息子を横抱きにして、何度公園から退散したことでしょう……。

プリントの生還率は10%以下!

幼稚園に行くようになると、私がプリントを確認しながら、一緒に翌日の持ち物を揃えるようにしました。ただ、その肝心のプリントを持ち帰らないこともしょっちゅうあり、なかなか忘れ物ゼロとはいきません。
後で考えるとプリントが幼稚園からわが家に到着できるのが50%、それに何かを書き込んで幼稚園に持って行き、期日までに先生に提出できるのがさらに10%というところだったと思います。ダメじゃん……。

小学校3年からは支援を受ける

小学校時代も1~2年の頃は同じような感じでした。ただほかのお子さんも、たくさんの荷物を持って登校するのは大変ということで、学校のロッカーにお道具箱を置いて帰るのを許されていましたので、息子も授業で使いそうなものは置きっぱなしにしていました。それで、忘れ物が目立たなかったのだと思います。
しかし3~4年になると、「自分の持ち物は自分で管理するように」と指導されるようになり、大きめのロッカーも使えなくなってしまいました。そうすると、すぐに忘れ物の多さが目立つようになりました。
当時は学校にお願いして、忘れ物があれば連絡をいただき、私が届けに行くということにしてもらっていました。本来は認められていない対応だったのですが、タケルは8歳のときに発達障害の診断を受けていましたので「特別に」ということでした。
まだ「合理的配慮」という言葉もない頃に、理解ある対応をしていただいたことには本当に感謝しています。ただ、頻繁に呼び出される生活は、正直なところ負担でもありました。仕事の手を止め、家事を中断し、学校へ向かう。その繰り返しに「とてもやってらんなーい!」と叫びたくなる日もありました。
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中学になっても忘れ物は減らず……

転機になったのは中学生になってからです。自宅から遠い中学校に通うようになり、「忘れたら取り返しがつかない」という状況もしばしば起こるようになりました。同時に、親が届けることがどれほど大変かも理解してきたようです。
とはいえ、中学生になれば今度は勉強や友人関係など、考えることが一気に増えます。頭の容量は限られているのか、忘れ物まで気が回らない様子は相変わらずでした。
そこで息子が編み出した方法は……「要りそうなものは全部持って行く」という荒業!
教科書もノートも資料も、念のための道具も、とにかく全部です。
まるで毎日山登りに行くような重い荷物で登校する息子「その解決方法でいいのか!?」
まるで毎日山登りに行くような重い荷物で登校する息子「その解決方法でいいのか!?」
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ですが、それは誰に言われたわけでもなく、タケル自身が考えた工夫です。「忘れる不安」を確実に消すため重さというリスクを取った、私は息子の選択を尊重したいと思いました。

鞄の中はいつもパンパンだが......

大学院生になった現在も忘れ物がゼロになったわけではありません。ただ、学校に置いておくもの、家に予備を置くもの、必要になったら取りに帰ればいいものなど、自分なりに仕分けをしながら調整しています。完璧ではなくても、自分で考え、自分で責任を引き受けようとする姿勢はだんだんとできてきました。
大人になって発達障害が分かったという人に話を聞くと、やはり忘れ物は課題だと言います。忘れ物対策に「これが正解」という方法はないのかもしれません。
息子が成人年齢になった今は、必要以上に先回りせず、困ったときには一緒に考える。それぐらいの距離感を大切にしながら、見守っていきたいと思っています。

執筆/寺島ヒロ

監修コメント 室伏佑香先生(小児科医)

タケルさんの忘れ物についてのエピソードやその対策について共有いただき、ありがとうございました。タケルさんのこれまでのエピソードからは、日々の大変さと同時に、ご家族が試行錯誤しながら向き合ってこられた様子がとてもよく伝わってきました。

神経発達症の方の中には、「覚えておく」「順序立てて行動する」「注意を切り替える」といった実行機能に苦手さをもつ方もいらっしゃり、忘れ物が多くなってしまうことは決して珍しいことではありません。好きなことに意識が強く向いているときには、ほかの情報が入りにくくなることもあり、「分かっているのにできない」という状況が起こりやすいのです。そのため、ご家庭での声かけや準備のサポートだけでは限界を感じてしまうことも多く、保護者の方が疲れてしまうことも少なくありません。

そのような中で印象的だったのは、タケルさん自身が「忘れる不安」を減らすために、「必要そうなものを全部持っていく」という方法を考え出したというエピソードです。重さという別の負担はあるものの、自分なりに状況を理解し、対策を考えたことはとても大切な経験だと思います。発達の過程では、完璧にできることよりも、「自分で工夫して困りごとに対処しようとする力」が少しずつ育っていくことが重要だなと日々感じております。

また、記事の最後に書かれている「必要以上に先回りせず、困ったときには一緒に考える」という距離感も、とても大切な視点だと感じました。神経発達症のお子さんの場合、忘れ物などの課題がすぐに完全になくなるわけではありませんが、成長とともに自分なりの対処法を見つけていくこともありますよね。周囲がすべてを解決しようとするのではなく、本人が試行錯誤する機会を残しておくことが、長い目で見ると自立につながることもあります。
忘れ物対策には「これが正解」という方法はなかなかありませんが、それぞれのお子さんに合った工夫を見つけながら、少しずつ経験を積み重ねていくことが大切なのだと思います。タケルさんがこれまで自分なりの方法を見つけながら歩んでこられた姿は、同じ悩みを抱える多くのご家庭にとって、大きな励みになることと思います。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030947
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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このコラムのコメント2件
プニりんさん
2026/03/30 22:07
うちもそうです~😆
あるあるですね!!
りうさん
2026/03/27 17:38
うちも全部持って行くタイプー
筆記用具はいろんなところから出てくる

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