【高学年の悩み】マイワールド全開なASD息子、マナーはどう身につける?効果的だったわが家流「クイズ形式」

ライター:ゆきみ
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ASD(自閉スペクトラム症)がある長男けんとは、もうすぐ高学年。マイワールドに没頭しやすく、他者に意識が向きにくい特性があるため、社会性の習得に時間がかかります。しかし、年齢を重ねるにつれ、学校生活や公共の場などで社会のルールを守らなければならない場面が、以前よりも確実に増えてきていると感じます。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。

高学年に向けて、見えてきた新たな課題

長男けんとは、3歳のときにASD(自閉スペクトラム症)と診断を受けました。現在は小学4年生で、特別支援学級の情緒クラスに在籍しています。構音障害があり、集団行動が苦手、数字が大好きな男の子です。
低学年の頃と比べると、身体が大きくなり、できることも着実に増えてきて、成長を感じます。その一方で、静かにしなければいけない場面で独り言を言い続けたり、会話で自分の好きなことばかりを話したり、許可なく人の物に触れてしまったりと、集団の中での社会的な振る舞いがまだ十分に身についていないと感じることが多くあります。
病院の先生に相談したところ、「自分の世界に没頭しやすい特性が、社会性の発達をゆるやかにしている可能性があります」と言われました
病院の先生に相談したところ、「自分の世界に没頭しやすい特性が、社会性の発達をゆるやかにしている可能性があります」と言われました
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病院の先生に相談したところ、「社会性を身につけることが今の課題の一つ。自分の世界に没頭しやすい特性が、社会性の発達をゆるやかにしている可能性があります」と言われました。マイワールドに入り込むと周囲が見えにくくなることが多いと感じていたので、先生のお話しはとても腑に落ちました。成長に伴う新たな課題が見えた気がしました。

大好きなクイズで大正解!? 続く試行錯誤…

わが家流「クイズ形式」
わが家流「クイズ形式」
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現段階で「周りの目を意識する」ことは難しいようですが、少しでもマナーを身につけてほしいと願い、試行錯誤を続けています。

食事中、取りにくい食べ物を手で食べたり、肘や膝を立てながら食べたりすることがあります。学校の給食でも同様の注意を受けているようですが、なかなか改善されません。
家庭で気になることが続いたときは……
1.手で食べないで、食具を使おう
2.足をイスにあげないで、前におろして食べよう
3.イスをガタガタさせたくなったら、前の跳躍器具に足をのせてみよう
などと書いた注意書きをつくって、見えるように置いています(ダイニングテーブルの下に小さな跳躍器具を置き、感覚刺激を入れやすくしています)。
視覚を使って、具体的にしてほしい行動を示すと、けんとも理解しやすいようです。
それでも守れないときは、「今、この中でできていないものが2つあります。何でしょう?」とクイズを出します。クイズ好きのけんとは、「1と2だ!」と楽しみながら自分で気づき、行動を修正してくれます。

衛生面も課題の1つです。ズボンの中に手を入れたり、鼻を触ったりしたときは、洗面所など人目につかない場所で行うよう具体的に伝え、「手を洗ってきてね」と少し手間のかかる行動を促しています。今のところ、あまり変化はありませんが、こうした積み重ねを通して、少しずつでも社会的なマナーを身につけてほしいと願っています。

難しい…目の前のことに意識を向けること

「3でしたー!」と我に返り、行動を始めるけんと
「3でしたー!」と我に返り、行動を始めるけんと
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マイワールドに没頭しやすく、切り替えが苦手なことで、ほかにも困りごとがあります。
宿題や勉強、翌日の準備など「今やること」があったとしても、好きなことをやめられず、なかなか取りかかれないことがあるのです。スケジュール表をつくったり、タイマーを活用したりもしますが、うまくいかないこともあります。そんなときは、再びクイズを出題します。「今、けんと君は何をする時間だと言われているでしょうか?
1.マンガを読む 
2.歌を歌う 
3.宿題をする
さて、どれでしょう?」と言うと、「3でしたー!」と我に返り、行動を始めます。

頑張って宿題を始めても、途中で再びマイワールドに突入していることがあります。そんなときは、けんとの近くへ行き、「この漢字は『はね』があるね。今書いた文字ははねているかな?ちょっと考えてみてね」と注目ポイントを具体的に伝えるようにしています。また、「今は宿題をする時間だけど、終わって自由時間になったら好きなことをやっていいよ」と伝えたり、文字に書いて示したりもします。さまざまな方法で伝えていますが、継続するのはまだ難しいようです。私もこまめに声をかけ、工夫を重ねながら、焦らずサポートしていけたらと思っています。
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積み重ねる経験 焦らないで一歩ずつ

放課後等デイサービスでも社会ルールを意識して話してくださっています
放課後等デイサービスでも社会ルールを意識して話してくださっています
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病院の先生からは、「けんと君のマイワールドに没頭しやすい特性は、長所でもあり、発想力の豊かさにつながっているのかもしれません。けんと君の場合、今の段階では周囲をあまり意識していなくても、もう少し年齢を重ねれば変わってくると思います。少しずつ時間をかけて伝え続けていくことが大切です。焦らないでやっていきましょう」と言われました。

また、「『やることをやる時間』と『好きなことをやる時間』を分けることを意識していくことで、少しずつですができるようになると思いますよ」とのアドバイスもいただきました。

けんとは愛嬌のある性格なので、これまでは笑って許してもらえていたこともたくさんあります。しかし、高学年になるにつれて、社会のルールを守らなければならない場面は確実に増えています。けんとの個性を大切にしながら、これからも周りの方々に相談し、ご指導いただき、一歩ずつ歩んでいけたらと思っています。

執筆/ゆきみ

専門家コメント 室伏佑香先生(小児科医)

ゆきみさん、けんと君の課題やそれに対する具体的な工夫を共有いただき、ありがとうございました。とても参考になりました。
ASD(自閉スペクトラム症)などの神経発達症のあるお子さんの場合、周囲から注意を受けてしまう場面が増えてしまうことも少なくありません。そのような中で、ゆきみさんが実践されている「クイズ形式」での声かけは、お子さんに精神的な負担をかけずに伝えることのできる、とても素敵な方法だと感じました。クイズ形式であれば、「できていないことを叱る」のではなく、「自分で気づき、行動を修正する」関わり方につながりますね。このような関わり方は、神経発達症のお子さんに限らず、日々の子育ての中でも取り入れていきたい工夫ですね。
また、神経発達症のお子さんの中には、言葉よりも視覚情報のほうが理解しやすい場合も多く、注意書きを見えるところに置くといった「視覚化」が有効なこともありますよね。さらに、感覚探究(感覚的な刺激を求める行動)が強いお子さんの場合、身体を揺らしたり、身体の一部が常に動いてしまったりする様子が見られることもあります。そのような場合に「我慢させる」のではなく、別の方法で感覚刺激を得られる代替手段を準備しておくというのは、お子さんの特性を理解した、とてもあたたかく優しい支援だと感じました。
このように、お子さんの特性を尊重しながら工夫を重ねていくあたたかい関わりが、少しずつ社会の中での過ごしやすさや自信につながっていくのではないかと思います。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030961
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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