先生や学校との関わりの中で見えてきたこと

その後、「先生の声が大きくて怖い」「怒られる」といったことも話すようになりました。
そのため、「先生の関わり方が合っていないのではないか」「指導が厳しいのではないか」とも考えるようになりました。

ただ、入学前や入学後の参観日での様子を見ると、クラス全体は落ち着いていて、子どもたちも穏やかに過ごしています。
その様子から、「この環境をつくっている先生なのだから、怖いだけの存在ではないのかもしれない」と感じるようになりました。
同時に、「自分自身が小学校という場に対して先入観を持っているのかもしれない」「息子だけでなく、自分も“初めての小学校”に向き合っている段階なのだ」と考えるようにもなりました。
そのため、まずは学校や先生を信じてみよう、という方向に気持ちが変わっていきました。

また、特別支援学級では、下校時にその日の様子を共有していただくなど、日々のやりとりも丁寧に行われています。
私が抱えていた不安や息子の様子を率直に話し、意見のすり合わせをさせてもらいました。

そうした積み重ねもあり、「任せてみよう」「困ったときは相談しながら進めていこう」と思えるようになりました。

少しずつ見られた変化

明るく雰囲気のいい特別支援学級。先生を信じて……
明るく雰囲気のいい特別支援学級。先生を信じて……
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そうして、学校や先生を信じて関わりを続けていく中で、少しずつ落ち着きがみられるようになります。
結果として、行きしぶりが最も強かったのは入学直後の4〜5月でした。

その後も、車から降りられない時間は1学期のあいだ続き、夏休み明けもしばらくは同じような状態が見られました。
ただ、少しずつ変化もありました。

最初は涙が止まらなかった状態から、泣くことは減り、「気が向かないな」と言葉で伝えられるようになっていきました。
やがて、手をつないでであれば、スムーズに教室へ向かえる日も増えていきました。
学校から帰ってきたあとには、「楽しかった」と話したり、園生活の頃には出てこなかった友だちの様子を教えてくれることもありました。「怖い」と言っていた先生についても、「怖いけどやさしい」と、少しずつ捉え方が変わっていきました。

振り返って見えてきた、わが家なりの判断

だんだんと、お兄さんになった実感がでてきた
だんだんと、お兄さんになった実感がでてきた
Upload By 河野りぬ
こうした変化を振り返ると、息子の場合は、環境の変化に慣れていくまでの抵抗が大きかったのではないかと感じています。
ただ、これはあくまで一例であり、お子さんによっては、環境そのものが合っていないケースもあると思います。

「このまま続けてよいのか」「休ませるべきなのか」
その判断に迷うこと自体が、多くのご家庭にとって大きな負担になるのではないでしょうか。
私自身も、正解が分からないまま、その都度判断を重ねていく感覚が続いていました。

そうした中で感じたのは、インターネットやSNSの情報だけに頼るのではなく、目の前の子どもの様子や、実際に関わっている先生、環境を丁寧に見ていくことの大切さです。
また、最初から対立的に構えるのではなく、「共有しながら考えていく」という姿勢で関わることで、見えてくるものもあるように感じました。

新しい環境に入るこの時期は、親にとっても負担の大きい時期だと思います。
同時に、子どもにとっても大きな変化の中にいる時期でもあります。
すぐに答えが出るものではありませんが、時間をかけ、それぞれのペースで折り合いをつけながら進んでいくことも、一つの形なのかなと思います。

執筆/河野りぬ

監修コメント 新美妙美先生(小児科医)

新年度や進学のタイミングで不安が強まり、登校しぶりが見られることは珍しいことではありません。特に発達特性のあるお子さんにとっては、見通しの立たなさや環境の変化そのものが大きなストレスとなります。今回のように、家庭と学校が情報を共有しながら関わりを調整していくことで、不安が軽減され、徐々に環境に慣れていくケースも多く、その場合は1~2ヶ月ほどで落ち着いてくることが一般的に多い印象です。

一方で、不登校に至るお子さんの多くが、振り返ると幼少期から「一定期間の行きしぶり→再び通えるようになる」という波を何度か繰り返していることも、臨床の現場ではよく経験します。そのため、行きしぶりが繰り返される場合には、「慣れの問題」として捉えるだけでなく、集団生活そのものに継続的な負荷がかかっていないかという視点を持つことが大切です。

行きしぶりが長期化・反復する場合には、負担の強さに応じて環境調整や関わり方を柔軟に見直していくことも選択肢になります。登校そのものを目的にするのではなく、「その子が無理なく過ごせているか」という視点を軸に据えることが、結果的に安定した学校生活につながります。
筆者さんが、迷いながらもお子さんの様子を丁寧に観察し、その都度最善を探っておられる姿勢は、とても本質的で心強い関わりだと感じました。(監修:小児科医 新美妙美先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35030964
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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