【学校と睡眠、摂食症、いじめ】「子どもからのSOS」から分かることは?【第16回日本小児心身医学会 関東甲信越地方会レポート】
ライター:発達ナビ【編集部Eye】
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2026年3月15日、「令和の学校と子どものこころとからだ」をテーマに「第16回日本小児心身医学会 関東甲信越地方会」が開催されました。コロナ禍やGIGAスクール構想など、子どもたちを取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。そんな中で、子どもの「こころとからだ」にはどのような影響が出ているのでしょうか。食や睡眠、いじめなど、さまざまな切り口から見えてきた、大人が子どもにどう向き合うべきかのヒントをレポートします。
学会テーマに込めた思いーー今、子どもの心身に何が起きている?
日本小児心身医学会は、子どもの「こころとからだ」の諸問題に対応するための臨床医の育成や研究、他業種との連携による質の高い医療の実践などを目的に設立された学会です。
小児心身医学会ガイドラインの発刊や定期的に学術集会や地方会を開催しており、今回は第16回目の関東甲信越地方会として「令和の学校と子どものこころとからだ」をテーマに、千葉県の聖徳大学で開催されました。
小児心身医学会ガイドラインの発刊や定期的に学術集会や地方会を開催しており、今回は第16回目の関東甲信越地方会として「令和の学校と子どものこころとからだ」をテーマに、千葉県の聖徳大学で開催されました。
まず、大会長の岡田 剛先生(医療法人聖峰会 岡田病院)から、今回のテーマを掲げた背景が語られました。
近年、不登校の数は高止まりの状態が続いています。その要因は、成績や友人関係、心身の不調など多岐にわたりますが、実はその背景に心理・精神的な疾患や感覚過敏などが隠れていることも少なくないといいます。
「学校のあり方が大きく変わる中で、心身の不調を訴えて小児科を訪れる子が増えています。医療や心理、福祉に携わる大人が今何に注目し、何ができるのかを改めて考えたい」という岡田先生の思いが、今回のテーマには込められています。
「学校のあり方が大きく変わる中で、心身の不調を訴えて小児科を訪れる子が増えています。医療や心理、福祉に携わる大人が今何に注目し、何ができるのかを改めて考えたい」という岡田先生の思いが、今回のテーマには込められています。
教育講演1:子どもにおける睡眠の問題と家庭・学校での対応
続いて、金子 宜之先生(日本大学医学部精神医学系精神医学分野)より、睡眠が子どもの心に与える影響と家庭・学校での対策についての講演が行われました。
睡眠が心に与える影響
講演は睡眠の概要から始まりました。子どもの睡眠は成人の睡眠とは量・質・構造とも大きく異なり、発達段階と密接に結びついていると言います。
ある国際的な調査で得られたデータによると、推奨される睡眠時間は学童期で9~12時間、 思春期で8~10時間と言われていますが、現状、日本の子どもはこれよりも少し短い傾向が見られます。
睡眠が乱れると、概日リズム障害や不眠症などの睡眠障害が出現することがあります。また、生活面においても、朝起きられず登校に支障が出る、友人関係が築けない、授業に参加できず進路に影響するなど、多岐にわたる影響が考えられます。
睡眠の乱れには個人差がありますが、以下のような要因が挙げられました。
生活環境等の外部要因: スマートフォンなどの電子機器の使用や、塾などによる多忙化が背景にある場合があります。
思春期特有の身体の変化: 睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が遅れるようになり、睡眠圧(眠気)も高まりにくくなるという特徴があります。
親子の認識のズレ:子どもの視点では、ゲームやSNS、友人との交流に時間を使えるため、夜更かしを「あまり困っていない」と感じている可能性があります。しかし、保護者は「学校に行ってほしい」「集中してほしい」という願いから、つい子どもにプレッシャーをかけてしまい、それがさらに睡眠を乱す悪循環を招くこともあります。
ここまでに挙げた要因のほかに、発達特性が子どもの睡眠に影響を与えるケースについても触れられました。
ASD(自閉スペクトラム症): 感覚過敏、不安・抑うつ、就寝前のルーティンへのこだわり、外出の少なさなどが影響します。
ADHD(注意欠如多動症): 過活動、集中困難、スケジュール管理の苦手さ、先延ばし傾向、ネット依存などが影響します。また、睡眠障害の一種である「ナルコレプシー」と共通する遺伝子の存在も指摘されています。
ある国際的な調査で得られたデータによると、推奨される睡眠時間は学童期で9~12時間、 思春期で8~10時間と言われていますが、現状、日本の子どもはこれよりも少し短い傾向が見られます。
睡眠が乱れると、概日リズム障害や不眠症などの睡眠障害が出現することがあります。また、生活面においても、朝起きられず登校に支障が出る、友人関係が築けない、授業に参加できず進路に影響するなど、多岐にわたる影響が考えられます。
睡眠の乱れには個人差がありますが、以下のような要因が挙げられました。
生活環境等の外部要因: スマートフォンなどの電子機器の使用や、塾などによる多忙化が背景にある場合があります。
思春期特有の身体の変化: 睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が遅れるようになり、睡眠圧(眠気)も高まりにくくなるという特徴があります。
親子の認識のズレ:子どもの視点では、ゲームやSNS、友人との交流に時間を使えるため、夜更かしを「あまり困っていない」と感じている可能性があります。しかし、保護者は「学校に行ってほしい」「集中してほしい」という願いから、つい子どもにプレッシャーをかけてしまい、それがさらに睡眠を乱す悪循環を招くこともあります。
ここまでに挙げた要因のほかに、発達特性が子どもの睡眠に影響を与えるケースについても触れられました。
ASD(自閉スペクトラム症): 感覚過敏、不安・抑うつ、就寝前のルーティンへのこだわり、外出の少なさなどが影響します。
ADHD(注意欠如多動症): 過活動、集中困難、スケジュール管理の苦手さ、先延ばし傾向、ネット依存などが影響します。また、睡眠障害の一種である「ナルコレプシー」と共通する遺伝子の存在も指摘されています。
家庭でできる睡眠対策は?
対策を考える上での前提は、「朝起きられないなどの睡眠の問題は、なまけややる気の欠如によるものではなく、医学的な疾患・病態である可能性」を考慮することです。生物的、心理的、社会的な要因が背景にあることを理解し「今の本人と未来の本人に寄り添う」ことが大切になります。そのうえで、具体的なアプローチとして、以下のような内容が挙げられました。
生活習慣の調整: 起床時の日光浴、週末も起床時間を一定にする、朝食、運動習慣、電子機器の制限。
環境調整: 苦手な刺激を寝室から減らす、落ち着くために必要な物体を用意するなど、個々の特性に合わせて調整します。
また、家庭だけで対応するのではなく、周囲との連携も重要になっていくということでした。
学校との協力: 睡眠状況を共有して対応を統一し、登校時間の調整や保健室登校などの「合理的配慮」を視野に入れます。
医療機関の活用: 睡眠疾患を早期に診断し適切な治療を行うことに加え、合理的配慮に診断書が必要な場合もあるため、医療機関とも連携することが大切になります。
生活習慣の調整: 起床時の日光浴、週末も起床時間を一定にする、朝食、運動習慣、電子機器の制限。
環境調整: 苦手な刺激を寝室から減らす、落ち着くために必要な物体を用意するなど、個々の特性に合わせて調整します。
また、家庭だけで対応するのではなく、周囲との連携も重要になっていくということでした。
学校との協力: 睡眠状況を共有して対応を統一し、登校時間の調整や保健室登校などの「合理的配慮」を視野に入れます。
医療機関の活用: 睡眠疾患を早期に診断し適切な治療を行うことに加え、合理的配慮に診断書が必要な場合もあるため、医療機関とも連携することが大切になります。
金子先生からのメッセージ
ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)などの発達障害には睡眠障害が合併しやすく、多くの患者さまやご家族の方々が悩まれていることと思います。発達障害の方に合併する睡眠障害は多彩である一方、御本人や御家族が言語化できず、医療機関に適切に相談できないことがしばしばあります。また、睡眠障害の発症には、特性による心理的要因と、ゲームやSNSなどの社会的要因が重なっている方が多く、しばしば原因を解きほぐし解決するために時間がかかります。困っていらっしゃる場合は、睡眠医療機関への受診を御検討頂ければ幸いです。
教育講演2:食べられない子どもたちに医療と教育ができること
次に、大谷 良子先生(公益社団法人発達協会王子クリニック・獨協医科大学埼玉医療センター子どものこころ診療センター)より、摂食症の背景と、周囲の大人がどう向き合うべきかについての講演が行われました。
増え続ける摂食症と、変化する子どもの姿
摂食症は、食べることに強い不安やこだわりを感じ、それが「食べられない(拒食)」や、時に「食べ過ぎる(過食)」に繋がってしまう疾患です。コロナ禍をきっかけにその数は増加し、2019年から2020年にかけては2.2倍にまで増加しました。最近では、中学生の「神経性やせ症」の増加に加え、2022年ごろからは、嘔吐恐怖、気分の落ち込みから食べることが難しくなるやせ願望を伴わない「回避・制限性食物摂食症」の小学生が増えるなど、臨床現場での状況も変化しているといいます。
食べられないのは「子どもからのSOS」
大谷先生は、「食べられない」「低栄養である」という状態は、単なる食の問題ではなく「子どもからのSOS」であると強調します。不安や落ち込みといった心のストレスが、食生活の乱れとして身体に現れているのです。また、日本独自の傾向として「痩せていること」を過剰にポジティブに捉えてしまう文化的な背景も指摘されました。
中学生: ネガティブな感情がダイレクトに食行動に影響する。
高校・大学生: 「ダイエット行動」そのものがエスカレートして食行動を乱す。
このように、年齢によっても食の問題が起きるメカニズムには違いがあります。
中学生: ネガティブな感情がダイレクトに食行動に影響する。
高校・大学生: 「ダイエット行動」そのものがエスカレートして食行動を乱す。
このように、年齢によっても食の問題が起きるメカニズムには違いがあります。
発達特性と摂食症の深い関わり
特に注目すべきは、「発達障害との併存」についての知見です。ある調査では、摂食症の子どもの約2割になんらかの発達障害が併存していたというデータが示されています。特性がある場合、症状が長期化しやすく、体重が回復した後も生活上の困難が残りやすい傾向があるため、より丁寧な理解が必要です。
講演では、摂食症で入退院を繰り返していたお子さんが、背景にあるADHD(注意欠如多動症)の特性(忘れ物の多さなど)に気づき、そこに焦点を当てた介入を行ったことで、生活上の困りごとが減少した、という事例も紹介されました。
講演では、摂食症で入退院を繰り返していたお子さんが、背景にあるADHD(注意欠如多動症)の特性(忘れ物の多さなど)に気づき、そこに焦点を当てた介入を行ったことで、生活上の困りごとが減少した、という事例も紹介されました。
食の問題へ周囲の大人ができること
摂食症は命に関わる可能性も高いため、早期発見、早期対応が重要ですが、短期的な栄養介入だけでなく、先を見据えた関わりが大切になってきます。
摂食症のある子どもにはそれぞれ背景があるため、その背景に応じたアプローチが必要です。本人に「治療の動機づけがない時期には、摂食症という病名を無理に押しつけない」ことも重要だという言葉が印象的でした。
また、適切な対応をするためにも、家庭だけでなく医療と教育が連携していくことが大切だと語られていました。学校での過ごし方を知ることで、摂食症の背景が見えてくることがあります。医療コーディネーターなども活用し、多職種で情報共有を行いながら支えていく仕組みづくりが求められています。
摂食症のある子どもにはそれぞれ背景があるため、その背景に応じたアプローチが必要です。本人に「治療の動機づけがない時期には、摂食症という病名を無理に押しつけない」ことも重要だという言葉が印象的でした。
また、適切な対応をするためにも、家庭だけでなく医療と教育が連携していくことが大切だと語られていました。学校での過ごし方を知ることで、摂食症の背景が見えてくることがあります。医療コーディネーターなども活用し、多職種で情報共有を行いながら支えていく仕組みづくりが求められています。
大谷先生からのメッセージ
楽しく美味しく食べることが難しくなる「摂食症」という病気があります。これは本人やご家族のせいではありません。病気でなくても、心の疲れが食べづらさにつながることもあります。気づきのきっかけとして、家庭のみならず学校での様子も大切です。心配なことがあれば、保健室やかかりつけのお医者さんにご相談ください。
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