【きょうだい児】「手がかからない=大丈夫」じゃない。兄優先の生活で、妹の"無意識の適応"に甘えないわが家の調整術

ライター:河野りぬ
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ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)がある兄へのサポートに追われる日々の中で、ふと気づいた定型発達の妹の姿。大きな問題がないのは、手がかからないからではなく、家庭内の優先順位を察して自分を後回しにする「無意識の適応」の結果ではないか……?家族全員が一人の個人として尊重されるために意識していることや言葉の伝え方。試行錯誤について振り返りました。

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。

見過ごしそうになる「妹の適応能力」

ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)があるわが家の兄は、不注意からくる「タスクわすれ」や「気の散り」、不安による「立ち止まり(フリーズ)」が頻繁に起こります。生活のあらゆるタスクに親の伴走が必要で、その都度、私の意識は彼に向けられています。

その一方で、定型発達の妹は非常に明るく前向きな性格です。集団行動も得意で、自分のことは自分で進められる。親として、その「適応力」「機嫌の良さ」にどれほど救われているかは計り知れません。しかし、その「助かる」という感情の裏側で、彼女が自走できるからといって放っておいていいわけではない、という危機感が常にありました。

それは性格的に「しっかりしている」からではなく、兄の優先度が高い家庭環境において、幼いながらに自分を周囲に合わせていく、彼女なりの「無意識の適応」ではないか、と感じるようになったのです。
適応力が高く、発達の困りを感じない妹
適応力が高く、発達の困りを感じない妹
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妹が「無意識の適応」をしているのでは……と感じた瞬間

兄にかかりきりだと構ってが激しくなる
兄にかかりきりだと構ってが激しくなる
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具体的にその「適応」を意識したのは、兄のサポートで生活リズムが崩れ、家庭内が慌ただしくなっているときでした。
兄のタスクを一つずつ明示し、フリーズしないよう伴走している私の横で、妹は「ねえねえ!」「私を見て!」と、非常に強く主張してくることが増えたのです。

しかし、兄の状況を優先するあまり、つい妹を後回しにしてしまう。そんな切羽詰まった状況でも、妹は翌朝になると何事もなかったかのように機嫌よく起きてきます。その姿に「助かった」と安堵する自分に対し、あるとき言いようのない違和感を覚えました。

彼女の激しい自己主張は、持って生まれた気の強さなのか。それとも「強く主張しなければ、自分はいつまでも後回しにされる」という状況を察した、彼女なりの生存戦略なのか。

その答えは出ませんが、少なくとも、彼女の「無意識の適応」という名の我慢に依存して生活を回してはいけない。そう強く思うようになった瞬間でした。

わが家なりの「順番」の作り方

順番のルールを親子で守る
順番のルールを親子で守る
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誰かの我慢に頼りすぎないために、わが家では家庭内の当たり前のルールとして「順番」を意識するようにしています。

兄の伴走中に妹が「私を見て!」とやってきたとき、私はまず「今、お兄ちゃんの〇〇をしているから待ってね。これが終わったらあなたの番だよ」と伝えるようにしています。そして兄の対応が一段落したタイミングで、夫に兄の伴走をバトンタッチ。私は物理的に妹と一対一で向き合う時間を、意識的に作るようにしてみました。

また、仕組みとしての順番を守るだけでなく、妹が大切にしている「こだわり」の時間も尊重したいと思っています。「食事のときはママに隣に座ってほしい」「寝るときは一緒がいい」といった、彼女にとって譲れないリクエストがあるときは、あえて兄に気持ちを抑えてもらって、妹を「絶対優先」にする時間を設けることもあります。

常に「兄が優先、妹は待機」という固定された構図にならないよう、兄にも「今は妹の番だから待つ」という経験を共有してもらう。そうやって、わが家なりの折り合える公平性を探りながら、日々調整を続けています。
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自己主張を「言葉」にする練習

お互い約束するためにも、言葉にする
お互い約束するためにも、言葉にする
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仕組みを整える一方で、妹自身の「伝え方」についても、一緒に練習している最中です。

妹の「私を見て!」という強い主張に対し、つい「わがままを言わないで」とその場をおさめようとしてしまう瞬間もあります。でも、彼女が外の世界へ出たときに困らないためにも、今はコミュニケーションを学ぶチャンスなんだ、と思い直すようにしています。

具体的には、むやみに注目を求めて叫んだり横入りしたりするのではなく、「今、ママは兄の〇〇をしているから待ってね。なにをしてほしいかだけ、先に教えてくれる?」と促すようにしています。漠然とした「見て!」という欲求を、「〇〇を一緒にやってほしい」という具体的な言葉にしてもらえるよう、親子で練習しているところです。

また、伝え方についても「大きな声を出すのではなく、『次はこれをやりたい』と相談してね」と伝えています。兄に特性があるからといって、妹だけが社会的なマナーを学ぶ機会を逃してしまうのは、親として少し違うのかな、と考えているからです。兄の存在を理由に諦めてしまうのではなく、彼女自身の成長のために必要な「向き合い方」を、一歩ずつ一緒に探っています。

それぞれの「個」として向き合うために

わが家の試行錯誤を振り返ってみると、兄には「次にやるべきタスクの明示」が必要で、妹には「必ず自分の番が来るという安心感」が必要なのだと感じています。

もちろん、毎日が理想通りに進むわけではありません。兄のフリーズにどうしても手が離せなかったり、妹の「見て!」に余裕を持って応えられなかったりする日も、たくさんあります。

それでも、特定の誰かの「我慢」に頼り切りにならないよう、仕組みとして順番を作ったり、言葉での伝え方を練習したりすることは、私たちが家族として一人の個人同士でいられるための、大切なステップなのだと思っています。

「きょうだい児」という枠組みにとらわれすぎず、それぞれが必要としているサポートを、その都度わが家なりのバランスで探っていくこと。そんな日々の小さな調整の積み重ねが、いつか子どもたちが自分たちの足で歩き出すときの、確かな自信に繋がってくれたらいいな、と願っています。

執筆/河野りぬ

専門家コメント 新美妙美先生(小児科医)

発達特性のあるお子さんのきょうだいへの関わりについて、ていねいに聞かせていただきありがとうございます。
妹さんの「無意識の適応」に気づかれた視点はとても重要だと思いました。実際の臨床の場でも、きょうだい児さんが自分の気持ちを後回しにしながら家庭に適応しているケースは少なくありません。

たとえば「お兄ちゃんは弟のことがかわいいからやっているのだ」と親がそのまま受け止めすぎることで、無意識の適応を助長してしまい、ひずみが生じることもあります。河野さんのように、手のかからないきょうだいの気持ちに意識的に目を向ける視点はとても大切だと感じます。
発達特性のあるお子さんへの対応はどうしても優先度が高くなりやすく、「この子は大丈夫そう」と感じるきょうだいに我慢をさせすぎてしまうことは、多くのご家庭で繰り返し悩まれるテーマです。そのため、「問題が起きていない=満たされている」とは限らないという視点を持ち、意識的に関わりを確保することがとても大切になります。

今回実践されているように、「今はどちらの対応をしているか」「次は誰の番か」を言葉で明確にすることは、きょうだい双方にとって安心感につながります。また、発達特性のあるお子さんへの対応を優先せざるを得ない場面があっても、配偶者と協力して、きょうだいが思いきり甘えたりのびのびと過ごせる時間を意識的に確保することも重要です。
さらに、きょうだい側の不満や葛藤を「それは仕方ない」と流さず、しっかり言葉として受け止め、一緒に納得できる形を探っていくことも意識していくとよいでしょう。

また、きょうだいを「支える側」にし過ぎないことも大切です。手伝いが自然に生まれることはあっても、それが役割として固定されてしまうといつしか負担になることもあります。本人がやりたいことや興味関心を十分に尊重し、「一人の子どもとしての時間」を守るよう心がけることも大切です。
河野さんが、仕組みづくりと関わりの両面から試行錯誤されている姿勢は、とても実践的で、多くのご家庭の参考になるものだと感じました。(監修:小児科医 新美妙美先生)
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35031011
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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このコラムのコメント2件
2026/06/05 14:51
文章表記について見づらい点があるとのこと、お手数をおかけし申し訳ございません。
お使いのブラウザの「自動翻訳機能」が誤作動し「日本語を別の言語だと誤認、さらに日本語へ強制翻訳する」ことが原因の一つであることが分かりました。
もし同様の現象が発生している場合は、Google Chrome等のブラウザ右上にある翻訳メニューを開き、「このサイトは翻訳しない」を選択するか、「ページが英語ではない場合」の設定から元の言語を「日本語」にご変更ください。
それでも解消されない場合、お手数ですが、別のブラウザアプリ(Safari、Edge等)での閲覧をお試しいただくようお願いいたします。

▼【お知らせ】一部の端末で文字が正しく表示されない現象について
https://h-navi.jp/releases/122
ゆちさん
2026/05/18 21:12
誤字脱字、改行間違いなどが多すぎて伝わり辛いです。
推敲してもらえますか?

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