明かされた「規格外な育児」と、救われた私の心

小学校に上がるタイミングで、私は実家での同居を決めました。
そこでついに、ばぁばとじぃじが、コチ丸の「本性」と真正面から向き合うことになったのです。

ある日、昼間に留守番をしていたじぃじからは「仏壇のライターを持ち出して火をつけようとした!」と報告。また別の日は、「ちょっと目を離した隙に部屋をひっくり返したようにぐっちゃぐちゃに荒らされて大惨事になっていた」と連絡が。
私が仕事から帰ると、かつて「そんなに大変だと思わなかった」と余裕をぶちかましていたばぁばが、げっそりした顔で玄関に立っていました。「……あんたが毎日死にそうだった理由、ちょっと分かった気がするわ……」 その疲弊しきった声を聞いた瞬間、不謹慎ながら私は心の底から安心したのです。

「ああ、やっぱりコチ丸は、誰の目から見ても、圧倒されるほど規格外な子だったんだ!」私がダメな母親だったわけじゃなく、私の根性が足りなかったわけでもない。ただただ、コチ丸という存在が、大の大人が数人がかりで向き合っても息切れするほどのエネルギッシュな「エネルギーの塊」だったんだ。
そう思えた瞬間、長年背負っていた親としての重い責任のようなものが軽くなった気がしました。

それからのコチ丸の「快進撃」は、これまでのコラムでも書いた通りです。授業をボイコットし、枯葉を燃やし、単3電池を飲み込み……。 かつて「育児なんて余裕でしょ」と言わんばかりだったじぃじとばぁばも、コチ丸が小学生の6年間、予測不能な行動に振り回される日々を送ることになるのでした。

ただ、家族の中心にはいつも賑やかなコチ丸がいて、みんなで一緒に振り回されていたあの日常は「苦労」ではなく、ただの「賑やかな日常」だったんだなぁと思います。……まあ、単3電池を飲まれたときは、さすがに全員で阿鼻叫喚でしたけど(笑)。

不登校のコチ丸が中学生になって学校に通えるようになった姿を見ることなく亡くなっていったじぃじ、パートナーと実家を出た私、実家に一人残っている母、そして北海道から関東へと飛び回っているコチ丸。あの頃には想像もつかなかった今を、それぞれがそれぞれの場所で生きています。
「……あんたが毎日死にそうだった理由、ちょっと分かった気がするわ……」 とばぁば
「……あんたが毎日死にそうだった理由、ちょっと分かった気がするわ……」 とばぁば
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執筆/あき

専門家コメント 初川久美子先生(臨床心理士・公認心理師)

コチ丸くんの幼いころの育てにくさについてのコラムをありがとうございます。「なんか、この子、育てにくい」「なんか、普通と違う気がする」。そうした違和感をはじめに持たれるのは、母たちであることが多いように思います。母だから備わった機能があるというよりも、あきさんも書かれているように、一緒にいる時間が長いこと。そして、子育てをしながら、多かれ少なかれ「このやり方で大丈夫かな?」と自問自答したり、育児書やネットでの情報を参照したりすることも多いと思いますが、そうしたことから育てにくさを感じはじめる場合が多いですね。父親やその他家族でもそう感じられることがある場合ももちろんありますが、問題は、母親一人がそう感じて悩み始めると、その悩みを共有しづらいことも多く、悩みがより深まってしまうところにあるように感じます。

あきさんは、なかなか寝てくれないコチ丸くんをワンオペ状態で、そして『いい子に育ってほしい』と一生懸命に育ててこられ、いよいよ「限界」を迎えたと書かれていました。子の感覚の鋭さに恐怖を感じたり、祖父母など他の人が関わると子がおとなしくなることで自信を失ったり。似たようなことを感じられたことのある読者の方も多かろうと思いますが、それが長く続いたり、「なんか違う」がなかなか共有されぬまま数年経ったり。そのつらさを想像するに余りあります。

知識を得たり、診断がついたりすることで、保護者の方が安心してお子さんと向き合えるようになることはあります。コチ丸くんは、感覚過敏などあり、“いつもと違う”を感じやすいお子さんだったのかなと想像しました。ご実家など、“いつもと違う”環境では良くも悪くも反応の出し方が違ったのかもしれません。幼稚園年長時の担任の先生のように、「なんか違う」を少しでも共有できそうな人が見つかると、心が支えられる感じがあったと思います。家族や友人だと、親しい間柄があるからこそ「うちの子、なんか違う」が共有されづらい場合もあるかもしれません。園や学校の先生や、子育て施設のスタッフなど客観的に見ている人や、違う場面でのお子さんの様子を見ている人の方が話を共有しやすい場合があります。

さて、コチ丸くんはご実家に引っ越してから本領を発揮されたとのこと。安心して過ごすからこその様子なのかもしれませんね。ようやくあきさんの違和感や不安を共有できる家族が増えたことは何よりです。子育てを孤独に行うとどうしてもつらくなります。誰かしら、悩みや不安を共有できる方がいるといいなと願います。そして今、コチ丸くんも成長し、ご家族みなさんがそれぞれ「想像のつかなかった今」を充実して過ごされていること、よかったです。(監修:臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35031058
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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