「全部参加できた」という経験が大きな自信に

今回の宿泊学習を振り返ると、何よりも「すべての課題に参加できた」という事実が、息子にとって大きな意味を持っていたと感じます。

特別支援学級にいた頃は、行事の内容によっては本人の参加が難しく、みんなが取り組む姿をただ見ているだけ、という場面もありました。けれど今回は、布団をたたむ練習やスーパーでのお買い物など、宿泊先での動作を繰り返し教えてもらったおかげで、不安なく、自分の力でやり遂げることができました。

「またやりたい」という言葉が出るほど、本人にとってすべての課題に参加できたことは、大きな自信に繋がったのだと思います。
「またやりたい」という言葉が出たほど楽しかったようです
「またやりたい」という言葉が出たほど楽しかったようです
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何度も練習を重ねて、当日へ繋げてもらえる安心感

宿泊学習は何をするのかが分からないと、本人も家族も心配なものです。でも、当日自信を持って参加できるように、何度も練習をさせてもらえる。そうした細やかな準備のおかげで、不安なく楽しんで参加できたことが、何よりも良かったと感じています。

こうした学校での積み重ねがあったからこそ、私も安心して息子を任せ、お弁当を届ける役割に専念することができました。この宿泊学習をきっかけに、息子の話の中に登場する人が増えたことも、大きな喜びでした。
今、不安を抱えながらお子さんを送り出そうとしている保護者の方も、学校での積み重ねた日々を信じて、ぜひお子さんの「いい顔」での帰宅を待っていてほしいなと思います。
イラスト/マミヤ
エピソード参考/りん

専門家コメント 新美妙美先生(小児科医)

特別支援学校での宿泊学習について、転校直後のお子さんの変化や成長を丁寧に聞かせてくださりありがとうございます。
宿泊行事は、発達特性のあるお子さんにとって非常にハードルの高い活動です。慣れない環境で寝泊まりすること、集団行動、初めての活動、人間関係、食事や睡眠など、負担になりやすい要素が一度に重なります。そもそも地元の通常学校の学校行事では「多数派である通常学級の子どもたちが楽しめる形」を前提に組まれているので、たとえ支援学級でサポートがあっても、少数派には無理が重なることも少なくありません。もちろん配慮やサポートは行われますが、「みんなに合わせた活動に、どこまでついていけるか」という構造になりやすく、ご本人にとっては“見学に近い参加”になってしまうこともあります。
その点、特別支援学校では、行事そのものが子どもたちの特性や発達段階に合わせて設計されており、「安心して参加できること」「自分でできた経験を積めること」が重視されています。記事にあるように、布団をたたむ練習や買い物練習などを事前に何度も積み重ね、「できる状態」を作ってから当日を迎えるという準備を、当たり前のこととしてみんなで取り組める環境は、とても安心感があります。こうした丁寧な準備があることで、「参加できた」ではなく、「楽しめた」「やり遂げられた」という経験につながります。

筆者さんは、食物アレルギーへの対応として、毎食みんなと同じ内容に近づけたお弁当を届け続けられたとのこと、本当にご苦労様でした。お迎えの時の晴れやかな表情や「またやりたい」という言葉をきいたら、頑張った甲斐があったという手ごたえを感じられたことでしょう。転校したばかりの息子さんが宿泊学習をきっかけに、お友だちとの距離がぐっと縮まっていったのは何よりうれしかったですね。行事を「みんなと同じようになんとかこなす場」ではなく、「安心して一緒に楽しめる場」になったことで、他生徒との距離感や連帯感も生まれたのかもしれません。
「全部参加できた」という経験は、お子さんにとって大きな自信の土台になったことでしょう。ご本人に合った環境の中で、“等身大で楽しめる経験”を積み重ねていくことの大切さを、改めて感じました。(監修:小児科医 新美妙美先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。


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