【連休・長期休み明け対策】「見通し不安」が強いASDの息子。休み明けの崩れを整える視覚支援とルーティン術

ライター:ゆきみ
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ASD(自閉スペクトラム症)の長男けんとは、現在小学5年生。普段は穏やかな性格なのですが、不安やこだわりが強く、切り替えが苦手です。長期休みや環境の変化でコンディションが崩れてしまったとき、整うまでに時間がかかっていた息子。現在までの様子の中で感じたことを書いていきたいと思います。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

一度コンディションが崩れてしまうと……

長男けんとは、3歳のときにASD(自閉スペクトラム症)と診断を受けました。現在は小学5年生で、特別支援学級の情緒クラスに在籍しています。構音障害があり、集団行動が苦手、マイペースで数字が大好きな男の子です。

けんとは幼い頃から見通し不安があり、予定と違うことが起きるとパニックになってしまうこともありました。小学1年生の頃は、学校生活や年間の流れがまだつかめず、毎日が不安だったのかもしれません。新生活が始まる春、長期休み、運動会や発表会の前など、変化が続く時期になると、ソワソワと落ち着かない行動や、チック、感覚刺激行動の強度が強くなったり、増えたりしていました。

一度コンディションが崩れてしまうと、立て直しに時間がかかってしまい、じわじわと落ち着いていくまでの期間が、低学年の頃は特に長かったように思います。
学校の年間スケジュールをチェックしている長男けんと
学校の年間スケジュールをチェックしている長男けんと
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また、見通し不安からか、教室の掲示板の張り紙をよく確認しに行き、年間・月・1日のスケジュールをチェック。新しい張り紙があるときは、必ず見に行きます(よく変化を見ているなと、感心するほどです)。長期休みが「いつからいつまで」なのかは、私よりも完璧に把握しています。このようにスケジュールを何度も確認するのは、少しでも不安を和らげたいという気持ちの表れなのかもしれません。

大切な「見通し」や「いつもと一緒」

小学2年生になると、1年生のときに経験した学校生活のサイクルが「見通し」となり、不安が軽減されたのか、チックや感覚刺激行動が以前よりは少し落ち着いてきました。そして、学年が上がるにつれ、身体の変化が強く表れる期間も少しずつ短くなってきています。ですが、けんとにとっての「心を整えるための手段」の1つであるスケジュール確認は、5年生になった今も欠かせません。
家庭でも視覚を活用した取り組みをしています
家庭でも視覚を活用した取り組みをしています
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けんとは昔から見通し不安があったので、こども園に通っている頃から小学校低学年にかけては、家庭でも視覚を活用した取り組みをしていました。リビングの壁に月ごとのカレンダーを貼り、何曜日にどこへ行くのか書き込むのです。通院など普段と異なる予定がある日は必ず記入して、視覚的に確認できるようにしていました。

「学校」「放課後等デイサービスA」「放課後等デイサービスB」「習い事」など、曜日ごとに予定をカレンダーに書き込むことで、同じ予定が繰り返されるパターンが一目で分かります。1日が終わると×を書き、次の日の予定を伝えます。「いつもと一緒」という感覚を視覚的に伝えることが、けんとの安心感につながっていったように感じます。

ルーティンで行動のリズムをつくる

わが家の場合、長期休み明けのコンディションを整えるうえで効果を感じているのが、「決まったルーティン」の存在です。けんとの場合、曜日ごとに大まかな予定が決まっていると、休み明けでも生活のリズムを取り戻しやすくなるように思います。
「決まったルーティン」が大切
「決まったルーティン」が大切
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長期休みは学校がなくなるぶん、放課後等デイサービスの利用時間が増えますが、「今日はここへ行く」という曜日ごとの軸は変わりません。「いつもと一緒」の軸があることで、生活の変化による影響をやわらげることができています。

旅行などで一時的にルーティンが崩れる場合は、移動手段・目的地・期間など、スケジュールを事前に詳しく伝えるようにしています。そして、帰宅後は速やかに通常のルーティンに戻ることで、コンディションが早く整うよう心がけています。学校がある時期とない時期で「行動のリズム」に大きな変化が生じないようにすることが、けんとに合っている方法だと感じています。
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現在のチカラになっていると思うものは……

これからも経験を積み重ねて……
これからも経験を積み重ねて……
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とはいえ、けんとが長期休み明けに早くコンディションが整うようになってきたのは、けんとが年齢を重ねてからのことです。小学1年生の頃も同じような生活サイクルでしたが、まだ経験が不足していたので、休み明けに早くコンディションが整うというのは、正直難しかったです。

月ごとのカレンダーや年間スケジュール表など、見通しの立ちやすい視覚情報を活用しながら、生活のルーティンを少しずつ積み上げていったこと。そして何より「経験を重ねること」そのものが現在の力になっているのだと感じています。

小学5年生になった現在も、落ち着かない行動やチック、感覚刺激行動がなくなったわけではありません。これからも、完全になくなることはないのかもしれません。でも、違う形に変わっていったり、増えたり減ったりしながら、それを心の安定のバロメーターとして見守っていきたいです。今後も経験を積み重ねて、けんとが少しでも安心して毎日を過ごせるようになっていけたら……そう願っています。
執筆/ゆきみ

専門家コメント(臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)

けんとくんのコンディションの整え方についてのコラムをありがとうございます。読者の方が参考になる工夫がいっぱいでしたね!小学1年生の1年間は、小学校ならではの1年間の流れを身をもって知るという意味でなかなか大変だと思います。どの行事も初めてで、その行事の準備も初めてであり、また長期休みすら、ようやく慣れてきたルーティンが崩れるという点で多かれ少なかれ“調子が崩れる”感覚を覚える子もいます。逆に言うと、2年生以降は“1年間がどんな感じか”が分かっている分、たいぶ心の余裕ができると思います(運動会というものがどのくらいのインパクトがあり、その準備のためにどのくらい体育が増えるかなど、なんとなくであっても分かっていると、感覚としての見通しが立ちやすいと思います)。

さて、年間行事予定や月予定などの掲示物、そして家庭でのカレンダーでの日々の過ごし方の視覚化といった工夫。これは見通しがあると安心できるタイプのお子さんには大切な工夫ですね。過ぎた日にチェックをつけて、今日がどこであるか一目で分かるのもいいですね。大人からすると、曜日ごとに同じように過ごしているからとカレンダーへの記入を省略したくなるかもしれませんが、お子さんが小さいうちはすべて記載しておくことをおすすめします。ルーティンに本人が気づくまでは、毎日が新鮮な気持ちで過ごしているかもしれませんし、分かっていても確認することで安心して過ごせる面もあります。

長期休みについては、休み中も変わらないものの存在で安定を図る、旅行などイレギュラーな予定についてはその予定等を細かく事前に伝えておく。これらの工夫もとてもいいですね。成長とともに、休み等からのコンディションの整え方は早くなってきていること、何よりです。ただ、これほどさまざま工夫されていても、落ち着かない様子になったり、感覚刺激行動があったりすると書かれていました。工夫をしても、“完璧”にはならない、それこそ、その時のコンディション(体調や気分、学校での人間関係をはじめとした予測しきれないことなど)によって、多少なりとも影響を受けることもあるでしょう。そういう意味で、コンディションが整わない時があることも“想定内”として受け取りつつ、事前の工夫とお子さん自身の経験や成長によって、安心して過ごしていけるといいですね。(監修:臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35031051
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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