実は私も“無音”が苦手です

実は私も漫画の原稿仕事をするとき、無音だと妙に落ち着きません。かといって、人と会話できるほどは余裕がありません。それで、昔見た内容を知っているアニメや、静かな声音の教養系の動画などを“流すだけ流して”作業していることがよくあります。
そう真剣に見ているわけではないのですが、何かが動いている気配があるほうが仕事モードに入りやすいのです。息子の言っていた「入りやすい」という感覚は、こういうことなのかもしれません。
妹のほうは、「作業通話アプリ」の愛好者。「音がないと寂しい。でも音楽だと聴いちゃうから、誰かの気配がするぐらいがちょうどいい」と言います
妹のほうは、「作業通話アプリ」の愛好者。「音がないと寂しい。でも音楽だと聴いちゃうから、誰かの気配がするぐらいがちょうどいい」と言います
Upload By 寺島ヒロ
息子は昔から、一度聞いたことをすぐ覚えてしまったり、記憶した情報を取り出して使う速度がとても速い子でした。会話をしていても、「どうして今その情報がすぐ出てくるの?」と驚くことがよくあります。
もしかすると、脳の回転がとても速い人にとっては、完全な静寂より、少しノイズがあるほうが情報の入力が安定することもあるのかもしれません。

「刺激を減らす」だけではないのかも

もちろん、「ながら勉強」が全員に合うとは思いません。実際、動画に気を取られてしまうタイプもいるでしょう。
ただ、ASD(自閉スペクトラム症)支援の考え方は、この20年くらいでかなり変わってきました。
以前は、

  • 刺激を減らす・感覚を統制する 
  • 静かな環境をつくる 
  • 視覚情報を整理する 

といったことが強く推奨されていました。
もちろん、今でも有効なケースはたくさんあります。
ですが最近は、
 
「刺激ゼロだと逆につらい」
「自分で刺激量を調整している」
「“ながら”が自己調整になっている」
 
という視点も、少しずつ知られるようになってきました。
私は今、「静かな部屋で机に向かうのが正解」という価値観だけで、息子のやり方を否定しなくて良かったと思っています。

執筆/寺島ヒロ

専門家コメント 井上雅彦先生(公認心理師)

ASD(自閉スペクトラム症)は「スペクトラム(連続体)」という概念の通り、非常に多様なグラデーションがあり、さまざまなタイプの方がいらっしゃいます。寺島さんのお子さんのように、適度な刺激がある環境を好む方や、マルチタスクのほうが集中力を維持しやすいというケースも少なくありません。重要なのは、本人の特性に応じた「刺激のコントロール方法」を見つけ出し、周囲がそれを適切に理解することです。学校などの集団環境では、即座の対応が難しい場面もあるかと思います。まずはスモールステップとして、ご家庭の中で「自分にとって心地よく集中できる学習環境」を一緒に模索し、実験的に試していくアプローチをおすすめします。(監修:公認心理師 井上雅彦先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35031077
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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