【通信制高校】学習、行事、付き添い登校…ASDの息子を包み込む柔軟な支援と合理的配慮に感じた安心

ライター:花森はな
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わが家には、高校2年生の息子と中学生の娘がいます。息子はASD(自閉スペクトラム症)と強度行動障害があり、特別支援学校の中等部から通信制高校へ進学しました。通信制高校というと、「1人で学ぶ場所」というイメージを持たれる方も多いかもしれません。ですが実際には、さまざまな配慮をしていただいています。今回は、息子が現在通信制高校で受けている支援についてお話させていただきたいと思います。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

入学して初めてのハードル……それは入学式!

通信制高校に入学して最初に気掛かりだったことは、入学式です。息子は小学校の卒業式は集団が苦手なため参加できず、その後進学した特別支援学校中等部でも入学式に出られませんでした。そのため、卒業式も特別に教室でやっていただきました。

なので通信制高校の入学式も難しいだろうな……と思っていましたが、やはり無理でした。後日、書類だけでも受け取りに行こうと思っていたところ、先生からお電話をいただいて「ささやかに入学式を職員室でさせてください」とのことでしたので、息子の調子がいい日に二人で学校に向かいました。
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不登校の息子と卒業式。小学校と特別支援学校、大きく違った学校の対応と親子の本音

職員室に入ったとたん、先生方全員の拍手で迎えられました。ギターを片手に先生が出てきて、歌を歌い出し、入学式の始まりです。本来なら喜びと驚きにあふれた感動的な場面なのでしょうが、私は正直気が気ではありませんでした。息子はサプライズが苦手なのです。先生方が歌っている間、息子がパニックを起こさないか心配でしょうがなかったです。

怒涛の入学式を終え、フリーズしてしまった息子の分もお礼をたくさん伝え、書類を受け取った私は息子と早々に学校を立ち去りました。その帰路で、私は息子に尋ねました。

「……大丈夫やったん?」
「なんかいけた。こんなに歓迎されると思えへんくて、ここにいていいよって言ってもらってる感じがしてよかった」

後に先生に聞いたところによると、入学式に参加できなかった生徒一人ひとりにこうした個別入学式を行っているとのことでした。

担任の先生はいるのですが、基本的には「全員が担任と思ってください!」と言われました。実際、校内のどこに行っても全教員が息子の名前や境遇を知ってくださっていましたし、調子が悪い時は近くにいる先生がすぐに空き教室や応接室を整えてくださいました。学校全体がワンチームのようでした。そしてそれは息子だけではなく、全生徒に当たり前に行われていることでした。

これまで「特別扱いされてしまうこと」「ほかの人と違うこと」そして「それがなければ学校にいられないこと」が、息子の苦しさでもありました。それが、この学校を選んでよかったという理由の始まりになりました。
職員室に入ると、先生方の拍手で迎えられて……!?
職員室に入ると、先生方の拍手で迎えられて……!?
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「行くだけ行ってみよう!」通信制高校の遠足で感じた安心感

入学して最初の行事は、遠足でした。通信制高校の遠足は学校にもよるとは思いますが、息子の学校の場合は全学年参加可で、数日日程が組まれており、そのどれかに参加すればいいことになっていました。当時の息子はほぼひきこもり。でも遠足にはどうしても参加したかったようで、その日に向けて体調を整えて、なんとか体を引きずりながら学校に向かいました。

当日役立ったのは、あらかじめ先生と連絡先を交換していたことです。通信制高校はその特性上、当日になって授業や行事にどうしても行けなくなる子が多くいるため、入学式の際に生徒もしくは保護者とLINEを交換していました。これは、小中学校のような電話連絡をなるべく減らし、欠席連絡に対するハードルや罪悪感を少しでも和らげるための配慮なのかな、と感じました。

「大体10時までに着けば、みんなと一緒に出発できます!」「学校集合が難しければ、駅で合流することもできます!」「駅です!もう着きます!」など細やかな連絡を交わすことで、(遅れてもどうにかなるから、行くだけ行ってみよう)という気持ちになることができました。

遠足は学校から数駅離れた大型公園まで歩いていき、そこで遊んでお弁当を食べて帰ってくるというものでした。学校によってはテーマパークに現地集合というところもあるようです。それは息子には確実に難しかったと思うので、学校からみんなで移動する形だったのはありがたかったです。なお、こうした遠足への参加も単位になります。

最初は元気よく参加できたものの、息子は帰り道でバテてしまい、みんなからだいぶ遅れて帰校しました。その途中も先生が何人も気にかけてくださり、学校に着いた時には、教室で休んでから帰宅できるように空き教室に冷房をかけて待ってくださっていました。

遠足そのものは、息子にとってもかなり体力的に大変だったと思います。それでも、先生方の連携のおかげで、親子ともども安心して参加することができました。
先生方が気にかけてくださりました
先生方が気にかけてくださりました
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「書けない」に寄り添う通信制高校の支援

息子は書字に困難があります。不登校になる小学校3年生までは書けていたのですが、自分の字の汚さに絶望し、またそれを学校で先生にからかわれたことでトラウマになり、全く書けなくなってしまいました。字が読めないというわけではなく、文字がうまく思い出せず、都度確認が必要な状態です。ですが、見本を見ながらであれば書くことができますし、キーボードでの入力は私よりも早いくらいです。初めての授業では、文字を一切書くことができなくて震えが止まらず、教室を飛び出してしまう事態になりました。

担任の先生と今後どう支援していくべきか相談を重ねました。
  • タブレットで黒板を撮影し、画像に文字をキーボードで入力する
  • スマホで入力し、その字を映す。もしくはそれを印刷して貼る
  • どうしてもダメならお母さんの代筆

思わず「授業中にスマホを使用してもいいんですか!?」と聞いてしまいました。こちらの通信制高校では、授業中のスマホ使用は許可されているようで「もちろん堂々と遊ぶのはダメですけど、漢字や分からない言葉があったら調べたらいいし、大人もそうするじゃないですか。『調べる』という習慣がつく方が大事なので」とのことでした。そして「便利なものはどんどん使わないと!」と。

小学校では息子が書けなくなっても、タブレットを使用しての授業は許可されることもなく、連絡帳の撮影も不可でした。どうしても書けなくて、泣きながらノートやプリントを破いてしまったことも多々ありました。場所が変われば、支援も変わる。そのことを改めて実感しました。
思わず「スマホ使っていいんですか!?」と聞いてしまいました
思わず「スマホ使っていいんですか!?」と聞いてしまいました
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通信制高校の付き添い登校ってどんな感じ?

今のところ、私は息子の参加している授業や行事などは基本付き添っていますが、ほかにも付き添いをしている保護者がいるのかどうかは気になるところでした。でも先生がおっしゃるには、「花森さんみたいに授業まで付き添うのは珍しいですが、過去にもいらっしゃいましたし、昇降口までの送迎や授業の途中でしんどくなった時のために近隣の駐車場などで待機されている親御さんもいますよ」とのことでした。

また、これまでの小学校などの付き添いと違うのは、通信制高校には社会人もいるので、教室に大人がいてもそこまで不自然ではないということです。息子は通常のスクーリングは人数が多くて難しいので、基本的に人の少ない日曜スクーリングを選んで行っているのですが、日曜スクーリングは特に人の入れ替わりが多く、固定メンバーでもないため、先生方も「マスクしてると意外と分からないので、お母さんも安心してお過ごしくださいね」と言ってくださいました。

参加人数が2人しかいない授業の時などは、同じようにプリント学習をさせてくださることもありますし、体育の時に人数が足りない場合は、私も参加させていただくことがあります。

小学校の時と同じように、困ってそうな子がいたら、その場にいる大人として手助けをしますし、息子が1人でも大丈夫そうなら廊下に出て距離を取り少しずつ離れる練習も試みています(もちろん何かあればすぐ対応できる距離にはいます)。

パニックやけいれん発作時に先生方へ負担をかけないよう、現在も付き添い登校をしていますが、小学校の時ほど負担ではないのが、先生がこれまでいろんなお子さんを見てきて、さまざまなケースに柔軟に対応してきているので、大抵のことは受け入れてくださるからです。

「いろんなお子さんがいますからね!大丈夫ですよ!」

一番しんどかった時には否定的にも聞こえたこの言葉が、通信制高校の先生が言うと魔法の言葉のように感じます。いずれは1人通学を目指したいですが、まずは1人で授業を受けられるように。スモールステップではありますが、これからも少しずつ進んでいけたらと思っています。

息子のペースで、少しずつ前へ

2年後は……
2年後は……
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通信制高校の説明会で私が必ず聞いていたのは「付き添い登校が可能かどうか」ということでした。それが叶わないと、息子は学校に行けなかったからです。実際入学してみて、ここまで手厚くサポートしていただけるとは思っていませんでしたが、不安なことや可能なこと、そして不可能なことは、事前にしっかり確認しておいた方がいいと思います。

現在の息子は、体調にかなり波がありますが、なんとか月に1〜2回のペースで学校に通っています。あれほど大変だった書字も、先日は全て一人でプリントを埋めることができて、1年生の時の担任の先生と廊下で喜び合いました。3年で卒業はさすがに難しいのですが、それは最初から覚悟しての入学でした。何年かかっても、自分のペースで学びながら、卒業してくれたらそれでいいと思います。そのための協力もサポートも惜しみませんし、これからも親子で歩み続けたいと思っています。
執筆/花森はな

専門家コメント 初川久美子先生(臨床心理士・公認心理師)

息子くんの通信制高校入学そしてその後の学校生活についてのコラムをありがとうございます。通信制高校は年々注目が高まっていて、各校それぞれ特色を打ち出しているように感じます。息子くんの選んだ学校のポイントの1つには「保護者の付き添い登校ができるか」があったのですね。通信制高校では、説明会のみならず個別相談などを経て出願することが多いですが、お子さんの事情(発達的な特性、体調、これまでの学校生活での困難さ、そして配慮いただきたいこと)を事前に相談し、学校の対応を確認しておくことが大事です。息子くんの選んだ学校は情報共有がスムーズ(どの先生も同じようにご理解くださっている)で、配慮も手厚そうですね。入学式の「サプライズ」は、ややヒヤッとした感じもありました。「良かれと思って」してくださることも、本人が受け止めきれない内容・量だとつらくなってしまうこともあります。息子くんは固まりながらも先生方の思いをキャッチできていてよかったです。できれば、なんらか「予告」(この学校では入学式は個別で行うことはよくある、先生方全員で入学を歓迎する気持ちを伝えたい等)があると、より安心だったかもしれませんね。(監修:臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)
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外出不安のある息子が通信制高校を受験!児童精神科医アドバイスを活かした対策、試験当日までの道のり

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https://h-navi.jp/column/article/35031081
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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