診断名にとらわれず、子どもの「今」の行動を見つめる

最後に、柳橋先生は日々の臨床や支援における重要な姿勢として、以下の点を強調して講演を締めくくりました。

    事前情報に縛られないこと
遺伝子型から「行動表現型」を予測して情報収集することは大切だが、それにとらわれすぎてはいけない。
    親の心理的背景に寄り添う
親の認知の偏り(ステレオタイプ)や、障害に対する「否認」の感情があることを理解し、留意する。
    目の前の子どもをアセスメントする
早期診断による情報バイアスや、年齢に伴う経時変化(思春期など)、環境要因を総合的に見て、実際の「今の困りごと(機能・適応)」を評価する。

「これらは遺伝性疾患に限らず、通常の神経発達症(発達障害)の臨床や支援における基本姿勢と全く変わりません」という柳橋先生の言葉は、障害の有無や診断名にかかわらず、すべての子育て・支援に通じる力強いメッセージでした。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。


一般社団法人 日本小児精神神経学会
https://www.jsppn.jp/
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