子どもが安心できる「居場所」とは

余暇活動を通じて発達障害の子どもたちと関わっていると、子どもが安心して過ごせる「居場所」(学校や家庭と分けるために、あえてカッコつきの「居場所」と表記しています)にはいくつか条件があると感じています。

まずは、本人が「そのままでいい」と感じられること。無理に明るく振る舞ったりコミュニケーションをとったりしなくても良い。周囲の空気に合わせなくても良い。活動中は少し遠くから眺める形で参加しても良いですし、疲れたら一人でいられる空間で休憩してもOKです。子どものペースや本人のやり方が尊重されることは、安心して過ごしやすい「居場所」の条件の一つになると思います。

また、発達障害の子が安心・安全を感じられるような「ルール」を明確にする(必要に応じて視覚的に示す)ことも大切です。たとえば、筆者が実施している「趣味トーク」は、それぞれの「好き」について語り合う活動ですが、「どんな喋り方でも良い(上手に喋ろうとしたり、無理に喋らなくても良い)」や「お互いに相手の『好き』を決して否定しない」というルールを明文化しています。ルールは、集団を管理するためのものではなく、あくまでも子どもが「参加する『居場所』がどういう場所なのか」を知り、見通しを持てて、何より安心と安全が保障されていることを示すためのものです。

そして、「居場所」を支えるために、大人がほど良い距離で見守ることも大切です。大人は子どもに対して、大人が考える「望ましい過ごし方」を押しつけがちです。子どもが一人でいると、「友だちをつくらせなければ」「集団に参加させなければ」とつい考えがちにもなります。しかし、にぎやかな活動を好む子もいれば、静かな場所で一人で過ごすことを好む子もいます。仲間と話したい子もいれば、同じ空間に人がいるだけで安心できる子もいます。子どもの安全を守るために大人が介入することは必要ですが、あくまでも「居場所」において大人は裏方・黒子(くろこ)です。その子にとって心地良い距離や参加の仕方を、子どもと一緒に探していく伴走者になることが必要です。

まとめ――「居場所」は一つでなくていい

学校にも家にも居づらい子どもの中には、「学校や家庭に居場所がない=自分に価値がない」と考えて、強い孤立感や自己否定の感情を抱いているケースもあるかもしれません。無理に集団に所属をさせる必要はありませんが、子どもに「学校だけが居場所じゃない」「家庭だけが居場所じゃない」ということを、可能であれば、家庭や学校にいる大人たちが、子どもたちに伝えていってほしいと思っています。

筆者が発達障害やその傾向のある子どもたちに伝えたいのは、「いまいる場所が世界のすべてではない」ということです。学校がしんどくても、週末に楽しく過ごせる趣味の仲間のコミュニティや場所がある。家では役割を担っていても、別の場所では好きなことを喋ったり、年上の人に甘えることができる。そのような場所が一つあるだけでも、子どもの見える世界は変わります。

そして、学校とも家庭とも違う「居場所」については、一つに定める必要はありません。

筆者は、若い人たちやそういった若者に関わる大人たちに向けた書籍『「やめられない」をどうするか きみと同じことで悩んでる大人たちの生存戦略』の中で、次のように書きました。

「居場所は一つである必要はありません。むしろ複数あったほうがいい。もし一つの場所がうまくいかなくても、別の場所がある。複数の場所を軽やかに渡り歩ける。そのこと自体が、人生の幅を広げていくことになります」
「やめられない」をどうするか きみと同じことで悩んでる大人たちの生存戦略
松本俊彦(著)、横道誠(著)、菊池真理子(著)、二村ヒトシ(著)、だいまりこ(著)、加藤浩平(著)
金子書房
Amazonで詳しく見る
複数の「居場所」を持つことは、逃げ場を増やすことではありません。自分を支えてくれる人や場所とのつながりを、学校や家庭以外にもいくつか持つことです。一つの場所でうまくいかないことがあっても、別の場所で気持ちを立て直し、再び日常へ戻ることができます。

なお、学校や家庭以外の「居場所」を大切にすることは、学校や家庭の価値を否定することでもありません。むしろ、その二つだけに子どもの生活や人間関係のすべてを背負わせないために必要なことです。

大人にできるのは、多様な場の選択肢を用意し、その子の存在を否定せずに受け止めることです。子どもたちがどこかで安心と安全を感じられて、自分らしさと向き合い、心と身体のエネルギーを取り戻し、また明日を迎えられるように。そんな小さな「オアシス」のような場所を、社会の中に増やしていく必要があると思っています。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35031164
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
児童支援最大化バナー
PLUSバナー

追加する

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。