親としては「解決」したくなるけど

ただ、そんなふうに明らかに不機嫌そうにしていても、本人たちは必ずしも「誰かに何とかしてほしい」と思っているわけではないらしいです。
息子が中学生ぐらいの頃、自分の態度について、こう言っていました。

「自分の気分が悪くなるのは止められない。でも、他人にそれを解決してほしいわけじゃないから、表に出さないようにしている。それでも、そのことしか考えられなくなったときは、1人になれるところに行く」

「ああ、なるほど」と思いました。
不機嫌な人がいると、周りは落ち着かないし「なんとかしなきゃ」と思ってしまうけど、本人からすると「不機嫌な態度を見せて周りから利益を引き出そう」とか思っているわけではないんです。ただ「気分が悪くなった」と思っているだけなんです。
その気持ちは自分の中にあるものだということも分かっている。だから自分で時間をかけて消化していく。ムスッと体育座りするのは、そのために必要な1人の時間を確保するためだったのです。

子どもが自分の力で戻ってくるのを待つ

子どもがムスッとしていると、つい「早く機嫌が戻ってほしい」と思ってしまいます。不機嫌さを見せてくるのは自分へのアピールじゃないか?と気を回してしまうこともあります。でも、うちのASDっ子の場合、不機嫌さは親へのアピールではなく、むしろ隠したいのに隠しきれていない「幼さ」であるように思います。
もちろん、本当に困っていて助けを求めているなら手を貸します。でも、ただ不機嫌そうにしているだけなら、「今は嫌なことが頭から離れないんだな」と思って、しばらく待つ。
本人が自分で別のことを考え始めるかもしれない。1人になったほうがいいと気づいて、自分からその場を離れるかもしれない。そうやって本人の力で戻ってくるのを待つことも、「自分で自分を扱う力」を育てることの1つなのではないでしょうか……

と、都合よく考えて、今日も私は不機嫌な子どもたちからそーっと距離を置くのでした。

執筆/寺島ヒロ
「私は部屋にいるから、何かあったら声かけて」「……すん」30分ぐらいでおやつをねだりに来ます
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専門家コメント 室伏佑香先生(小児科医)

「自分の気分が悪くなるのは止められない。でも、他人にそれを解決してほしいわけじゃないから、表に出さないようにしている。それでも、そのことしか考えられなくなったときは、1人になれるところに行く」
中学生の息子さんが、ご自身のことをこのように言葉にできていたことは、とても素晴らしいことだと思います。自分がどんな時に気持ちを乱しやすいのか、その時に自分はどうなるのかを理解し、さらに「周りの人を嫌な気持ちにさせたくない」と考えて、自分なりの方法で距離を取ろうとしている。そこには、自分自身を客観的に捉える力と、周囲への配慮の両方が感じられます。
親御さんが距離を置くことは、決して突き放すことではありません。「必要な時には助ける。でも、今はあなた自身が落ち着く力を信じて待っているよ」。そんなふうに、子どもが自分の力で気持ちを整える時間を見守ることも、自立を支える大切な関わりの1つなのだと思います。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35031187
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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