曝露プログラムで小さな頃のトラウマが癒されてしまう
曝露プログラムは、ともかくスモールステップ、絶対に無理はしないこと、うまく進んでも1度に1ステップにとどめることが大事とのこと。私はこれを、「無理を強いられて育った自分を、自分で優しく育て直すこと」と理解しました。
「自分の育て直し」は、私がトラウマ治療の1ジャンルであるパーツワーク(※)でやってきたこと。そう思うと、曝露をしている最中に、頭の中で勝手にパーツワークのイメージが展開していくのです。
(※)心の中に複数の自分(パーツ)の存在を規定し、それに対してアプローチしていくもの
怖いよ、と泣いている心の中の小さな自分を、嘲笑したり叱咤激励したりすることなく、「うん、怖いよね、当然だよ」「でも大丈夫、私がそばにいるからね」などと優しく声をかける。
そんなことを続け、駅のベンチに座って「ホームで電車を見送る」曝露をしていたときのこと。突然頭の中で、若い父と母が赤ん坊の私を抱いて電車に乗り込む、パーツワークのイメージが展開したのです。
その後のイメージはこのように進みました。
—
私は大学生ぐらいの歳格好で、彼らのそばでつり革を持って立っています。
私が赤ん坊の私をニコニコして見ていると、父が「可愛いでしょう、僕の大事な妻が産んでくれた、世界一の娘なんだ」と話しかけてきます。母が真っ赤になって「ちょっとあなた、知らないお嬢さんにそんなこと!」などと小突きます。
電車が地下に入ると、赤ん坊の私が怖がって泣き出します。父は彼女を優しくゆすり、「怖いか? そうか。大丈夫、何があっても絶対にお父さんが守ってやるからな」と声をかけました。小さな私は徐々に泣きやみ、安心して眠ってしまいました。母はそんな2人を幸せそうに見つめています。
そのうち目的の駅に着いたようで、父と母は私に会釈して降りていきました。
—
駅のベンチに座っている現在の私も幸せで、しばらくぽろぽろ泣きました。
この日から私はすっかり「何もかも、きっと大丈夫」「だって私は守ってもらえてるから」という気持ちになり、それまで苦労していたさまざまな症状がほとんど消えてしまいました。
地下鉄にも乗れるし、緊急地震速報が鳴っても以前のように発作的な反応を起こさない。あっという間に症状が消し飛んだ劇的さも含め、とても印象的な出来事でした。
「自分の育て直し」は、私がトラウマ治療の1ジャンルであるパーツワーク(※)でやってきたこと。そう思うと、曝露をしている最中に、頭の中で勝手にパーツワークのイメージが展開していくのです。
(※)心の中に複数の自分(パーツ)の存在を規定し、それに対してアプローチしていくもの
怖いよ、と泣いている心の中の小さな自分を、嘲笑したり叱咤激励したりすることなく、「うん、怖いよね、当然だよ」「でも大丈夫、私がそばにいるからね」などと優しく声をかける。
そんなことを続け、駅のベンチに座って「ホームで電車を見送る」曝露をしていたときのこと。突然頭の中で、若い父と母が赤ん坊の私を抱いて電車に乗り込む、パーツワークのイメージが展開したのです。
その後のイメージはこのように進みました。
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私は大学生ぐらいの歳格好で、彼らのそばでつり革を持って立っています。
私が赤ん坊の私をニコニコして見ていると、父が「可愛いでしょう、僕の大事な妻が産んでくれた、世界一の娘なんだ」と話しかけてきます。母が真っ赤になって「ちょっとあなた、知らないお嬢さんにそんなこと!」などと小突きます。
電車が地下に入ると、赤ん坊の私が怖がって泣き出します。父は彼女を優しくゆすり、「怖いか? そうか。大丈夫、何があっても絶対にお父さんが守ってやるからな」と声をかけました。小さな私は徐々に泣きやみ、安心して眠ってしまいました。母はそんな2人を幸せそうに見つめています。
そのうち目的の駅に着いたようで、父と母は私に会釈して降りていきました。
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駅のベンチに座っている現在の私も幸せで、しばらくぽろぽろ泣きました。
この日から私はすっかり「何もかも、きっと大丈夫」「だって私は守ってもらえてるから」という気持ちになり、それまで苦労していたさまざまな症状がほとんど消えてしまいました。
地下鉄にも乗れるし、緊急地震速報が鳴っても以前のように発作的な反応を起こさない。あっという間に症状が消し飛んだ劇的さも含め、とても印象的な出来事でした。
不安がりの子どもに必要なこととは
私は上記の経験を経て、「『難治性の不安症や強迫症といった精神疾患の背景には、複雑なトラウマが関わっていることがある』という説はやっぱり本当だったのかもしれない」と思うようになりました。
人の中で辛い経験がトラウマとなるのは、「逃げることも戦うこともできず、助けも来なかったとき」だと言われています。私は上記で経験したイメージの中で、父から「大丈夫、絶対に助けてあげる」と確約してもらえたことによって、やっと幼い頃の「無力なうえ、誰にも守ってもらえなかった」トラウマが癒えたのですね。
不安がりの子どもの周囲の大人には、ぜひ本人の不安を否定せず受け止め、必ず守るという意志を伝え、ゆっくり時間をかけて本人が安心できるように導いてほしいです。
感覚過敏など、本人の特性によっては非常に不安が強いこともあり、対処に戸惑うこともあるかもしれません。でも、本人が少しずつでも、保護者の方の見守りの視線を内面に取り入れ、いつか不安や警戒を解除できる日が来たらいいな、と願っています。
宇樹義子/文
人の中で辛い経験がトラウマとなるのは、「逃げることも戦うこともできず、助けも来なかったとき」だと言われています。私は上記で経験したイメージの中で、父から「大丈夫、絶対に助けてあげる」と確約してもらえたことによって、やっと幼い頃の「無力なうえ、誰にも守ってもらえなかった」トラウマが癒えたのですね。
不安がりの子どもの周囲の大人には、ぜひ本人の不安を否定せず受け止め、必ず守るという意志を伝え、ゆっくり時間をかけて本人が安心できるように導いてほしいです。
感覚過敏など、本人の特性によっては非常に不安が強いこともあり、対処に戸惑うこともあるかもしれません。でも、本人が少しずつでも、保護者の方の見守りの視線を内面に取り入れ、いつか不安や警戒を解除できる日が来たらいいな、と願っています。
宇樹義子/文
専門家コメント 鈴木直光先生(小児科医)
ASDの方は感覚過敏があり、特に地震は突然来るので不安も大きくなりがちです。過敏なASDの方は緊急地震速報が鳴る前に既に地響きを感じるそうです。
上から物が落ちてくるのが不安なため車の中で半年以上生活していた方もいます。その方もまた地下鉄で通勤するのが困難になり、転職を余儀なくされています。
時が経っても感覚過敏やトラウマは残るため、自分自身の過ごしやすい方法や生活様式を見つけていかなければなりません。大勢乗る電車が嫌なら自家用車で、さらに狭い空間の自家用車が嫌なら徒歩で行ける働き場所を探すことになります。医療ではSSRIというお薬で多少不安を抑えることが可能です。(監修:小児科医 鈴木直光先生)
上から物が落ちてくるのが不安なため車の中で半年以上生活していた方もいます。その方もまた地下鉄で通勤するのが困難になり、転職を余儀なくされています。
時が経っても感覚過敏やトラウマは残るため、自分自身の過ごしやすい方法や生活様式を見つけていかなければなりません。大勢乗る電車が嫌なら自家用車で、さらに狭い空間の自家用車が嫌なら徒歩で行ける働き場所を探すことになります。医療ではSSRIというお薬で多少不安を抑えることが可能です。(監修:小児科医 鈴木直光先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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