【星槎大学大学院教授 阿部利彦】「我慢しないで話して」が逆効果? 子どもが本音を話せるリフレーミングアイデア

ライター:阿部利彦
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「我慢しないで話してね」と伝えても、なかなか本音を見せてくれない……。実は、大人の何気ない「語尾」が、知らず知らずのうちに子どもを身構えさせているのかもしれません。連載最終回の本記事では、星槎大学大学院の阿部利彦先生が、子どもの小さなSOSを受け止める「大人のキャッチ力」を磨く方法を解説。言葉がけを“提案・相談モード”に変える工夫から、弱さを見せ合える関係性の築き方まで、親子ともに心がすっと軽くなるヒントが満載です。(編集部)

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執筆: 阿部利彦
星槎大学大学院教育実践研究科 教授
長年にわたり発達障害のある子どもとその家族の相談支援に携わるとともに、全国各地で講演会や研修会の講師を多数務めている。近年は「誰もが安心して学べる場づくり」を大切にし、教育現場のユニバーサルデザイン化や発達が気になる子どもの「強み」に着目した支援など、多様性を尊重した教育実践の推進に取り組んでいる。

大人の「援助要請応答力」を磨くには?

「我慢しないで話してね」と伝えても、なかなか本音を見せてくれない……。実は、大人の何気ない「語尾」が、知らず知らずのうちに子どもを身構えさせているのかもしれません。連載最終回の本記事では、星槎大学大学院の阿部利彦先生が、子どもの小さなSOSを受け止める「大人のキャッチ力」を磨く方法を解説。言葉がけを“提案・相談モード”に変える工夫から、弱さを見せ合える関係性の築き方まで、親子ともに心がすっと軽くなるヒントが満載です。

「自立型援助要請スキル」を支える大人の「キャッチ力」

これまでのコラムでは、子どもが自分の課題を解決するために適切に助けを求める「自立型援助要請スキル」を応援する視点について解説してきました。今回は、これを支える大人の「キャッチ力」を磨くためにはどうしたらいいのか、を考えていきます。

ふだんの「語尾」をリフレーミングする

リフレーミングとは、"物事を見ている「枠組み(フレーム)」を変えて、同じ物事を別の見方で捉え直すこと”です。
大人が「子どもの援助要請をひたすら待つ」のではなく、「一緒によりよい方向性を探す応援団」になり、「語尾」をやわらかくリフレーミングして語りかけるとき、子どもは安心して「困った」と言葉にし、助けを求める(援助要請)ことができるようになります。
そのために、大人は自分の語りかけをリフレーミングして、語尾を「強制・説得モード」から「提案・相談モード」にチェンジするよう心がけましょう。

「そろそろ寝る支度をしなさい」などと声をかけたら「今そうしようと思ってたのにっ!」と反抗的な態度で返されたことはありませんか? 「自分で選択する自由を相手に奪われた」と感じたときに反発したり、反対に禁止されたことをやろうとしたりする心の動きを「心理的リアクタンス」と言います。それは、子どもに限ったことではありません。

なかには、このような「〜して。」「〜しなさい。」「〜したの?」などの語尾にとても敏感なお子さんがいて、こういう大人の言葉かけを聞いたとたんに口をつぐんだり、反抗的な態度をとったりする場合があります。たとえ、大人にそのような命令や強制の意図がなく発した言葉であっても、反射的にその語尾に身構えてしまうのです。

ですから、「一人で我慢するのはやめなさい。」「素直に話してみなさい。」「どうして言ってくれないの?」など、優しさから出た言葉でも時に拒絶されてしまうことがあります。そのような言葉に敏感なタイプのお子さんの場合は、主導権が大人にあると感じさせる言い回しはとくに避けた方がよいでしょう。「一人で頑張りすぎなくてもいいんだよ」「一緒にやろうか」「話したいことある?」などさまざまなパターンで話せるようバリエーションを用意しておきましょう。

【気を付けたい語尾(指示・詰問)】
  例)「〜しなさい」「〜でしょ?」「なんで〜しないの?」
【語尾をリフレーミング(協働・探索)】
  例)「〜かな?」「〜はどうかな?」「〜を検討してみようか」「〜という方法はどう?」

「語尾」のリフレーミング・アイデア

1. 子どもの自己選択・自己決定を大切にする語尾
 大人が指示するのではなく、「どうしたいか」の決定権を子ども側に渡すことで、心理的安全性を高めます。
「どっちにする?」(例:「少し休んでからにする? それとも先にこれを終わらせる?」
「〜はどうしたい?」(例:「このやり方とあのやり方、どっちから試してみたい?」)
「〜の方法でやってみる?」(例:「今日はとりあえずこの方法でやってみる?」)

2.失敗や行き詰まりを共有する語尾
 子ども一人で悩ませず、「私も一緒に考えるよ」というスタンスを示す語尾です。
「〜な気がするんだけど、どう?」(例:「この問題、ちょっとややこしい気がするんだけど、どう?」)
「〜という作戦(チャレンジ)はどうだろう?」(例:「一回、別の紙に書き出してみるのはどうだろう?」)
「〜かもしれないね」(例:「もしかしたら、順番を変えるとスムーズかもしれないね」)

3.心理的ハードルを下げる語尾
「完璧でなくていいんだよ」という空気を作ることで、気軽に「助けて」「わからない」と言いやすくします。
「〜ためしにやってみる?」(例:「合ってるか気にせず、ためしに書いてみる?」)
「〜の形でもいいよ」(例:「途中の計算は、先生が代わりに書いておく形でもいいよ」)
「〜ってことにしてみる?」(例:「まずは『ここまではわかった』ってことにしてみる?」)

語尾を変えるときのポイント

語尾を変える目的は、「大人が正解を持っているという前提を崩す」ことです。

例えば、語尾を疑問形(「〜かな?」「〜してみる?」)にするだけで、子どもにとっての受け止め方が「命令されている(従うか逆らうかの選択)」から「相談されている(受けるか受けないかの選択)」へと質が変わり、自分の素直な状態(「実はここがわからないんだ」)を口に出しやすくなります。

「援助要請キャッチ力」を磨く

1. 行動の背景にある「意図」を読む力
 子どもの気持ちに寄り添うためには、その子の行動そのものだけでなく、その背後にある「子どもの内的状態」を推しはかる視点が重要です。

・行動だけでなく「状態」を見る
「ふざけている」「手が止まっている」「イライラしている」という外から見える行動について、その子なりのストレスへの対処法をとっている状態として捉え直す見方です。
・「隠れたSOS」のパターンを読む
子どもは「助けて」と言う代わりに、「あきらめ」「過度な同調」「攻撃性」などでSOSを出すことがあります。その子の「隠れた援助要請」のパターンを知っておくことが、キャッチの第一歩です。

2.子どもにとって近づきやすい存在を目指す
援助要請の理論では、「助けを求める側には常に『心理的コスト(恥、拒絶への不安)』が伴う」とされています。大人は、この「心理的コストを最小限にする空気感」をまとう必要があります。

・受け止めてくれるという安心感
単にそばにいるだけでなく、子どもが「今、この人に言えば受け止めてもらえる」と確信できる状態を保ちます。
・意図的に態度で示す
そのためには、何か他のことをしながら子どもの話を聞くことは避けましょう。手を止め、子どもの方に体を向けることで、耳を傾けるスイッチが入ったことを示します。大人からも「あなたの話を聞かせてほしい」とサインを出す技術です。

3.「応答の質」を豊かに
子どもが一度出した援助要請が「自立型援助要請」として定着するかどうかは、大人の「最初の数秒の反応」にかかっています。

・「要請行動できたこと」への賞賛
内容にかかわらず、助けを求めたという行為自体を「素晴らしい決断だ」と肯定することです。
・「自力で解決したい」という気持ちを損なわない支援の提供
全部代わりにやってしまう(過剰支援)のではなく、「ヒントのスモールステップ化」や「適切な選択肢の提示」を行うことで、「自分で解決できた」という感覚を子どもに残す応答スキルです。

4.応援する側の自己調整能力
大人が自分自身の価値観や状態を見つめ直しておくと、キャッチ力を向上させることができます。

・「忍耐=美徳バイアス」の解除
大人の側に「人はとにかく苦労して問題を乗り越えるべき」というバイアス(先入観)があると、子どものサインを「甘え」と誤認してしまいます。
・大人の余裕(余白)の確保
大人自身がストレスフルで余裕がないときは、子どもから微かなサインが出されていても、大人の脳はそれを「ノイズ」とみなしてシャットアウトしてしまいます。大人の側にも休息や充電が必要なのです。一人で頑張りすぎない、時には周囲に助けを求めたり甘えたりも必要、ということをご自身にも当てはめていただきたいと思います。

おわりに

子どもの「困り方」は、ときに「怒り」「反抗」「沈黙」「投げやりな態度」などの、全く別の姿に隠されて届きます。パッと見で「あ、助けを求めているな」と気づけない時があっても、決してご自分を責めないでください。その子の行動の裏にある「その子の困り方」に思いをはせようとしていること自体が大切なのです。

援助要請しやすい関係を築くことは、大人が「キャッチ力を磨く」ことだけではありません。子どもも大人もお互いに「弱さを見せても大丈夫な空気」を作っていく「歩み」です。

時にはうまく応援できないこともあります。SOSのサインを見落とすこともあるでしょう。 そんな時「ああ、今日もうまく聞けなかったな」と振り返る、皆さんのその「誠実さ」こそが、子どもたちが寄り添いたくなる大人の姿だと思うのです。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
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