大学中退から就労移行支援へ。発達障害のある21歳長男、「支援の必要性」にいつ気づく!?当事者母が伝えたい距離感と情報収集
ライター:ゆたかちひろ
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大阪で暮らすアラフィフおばちゃん、ゆたかちひろです。私自身、ADHD(注意欠如多動症)の診断を受けています。2026年現在、長男と次女はADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)です。21歳になった長男のサポートをしていて、親ができること、いっぱいあるにはあるけれど、思っているより少ないなとも感じています。
監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。
現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
支援を受けることを、少しずつ前向きに
学生のうちは許されても、社会に出ると「アウト」とみなされてしまうことって、たくさんありますよね?
わが家の長男は、まさにその「アウト」なことを学生時代に連発してしまい、学校を離れてからは一時期、就職の目処すら立っていませんでした。
わが家の長男は、まさにその「アウト」なことを学生時代に連発してしまい、学校を離れてからは一時期、就職の目処すら立っていませんでした。
【大学中退後の就労】20歳の息子の壁は「コミュニケーション」。精神科受診から「就労移行支援」に繋がるまで
それでも現在は、就労移行支援制度を利用してLITALICOワークスへ通いながら、公務員試験の障害者枠へのチャレンジをしようとしているところです。
もしそれがダメでも、別に構わないと思っています。結局は、自分に合う居場所を見つけて、そこで長く、ストレスなく就労していけることが一番大事なので。
もしそれがダメでも、別に構わないと思っています。結局は、自分に合う居場所を見つけて、そこで長く、ストレスなく就労していけることが一番大事なので。
長男の場合は、記憶力が飛び抜けて良く、勉強自体は嫌いではないので、支援さえあれば何とかなりそうだという目処が立ったように思います。本人も、最初は支援や配慮を受けることに抵抗感がある様子でしたが、発達障害や支援についていろいろと知るうちに、自分に必要な支援を受けることに少しずつ前向きになってきました。
知らないものは、無意識に遠ざける
これは私の持論なのですが、知らないものって、人間は無意識に怖いと思い、遠ざける本能があると思っています。
例えば隣人が楽器の練習をしている音も、まったく知らない人だと騒音だと感じてしまうけど、よく知っている子どもが頑張っていると思えば、上達するのがうれしくなったり、全然違って聞こえることってありますよね。
発達障害についても、知らないと最初は「なんだかよく分からないけど、ダメなことなのかも」と受け止めがちです。でも、自分ならではの持ち味や、時には困りごとにも繋がる特性を一つひとつ理解していくことで、見方は変わってきます。自分の特性について「活かせるところは伸ばそう」と思えるし、工夫によって困りごとを減らすことも考えていけます。
例えば隣人が楽器の練習をしている音も、まったく知らない人だと騒音だと感じてしまうけど、よく知っている子どもが頑張っていると思えば、上達するのがうれしくなったり、全然違って聞こえることってありますよね。
発達障害についても、知らないと最初は「なんだかよく分からないけど、ダメなことなのかも」と受け止めがちです。でも、自分ならではの持ち味や、時には困りごとにも繋がる特性を一つひとつ理解していくことで、見方は変わってきます。自分の特性について「活かせるところは伸ばそう」と思えるし、工夫によって困りごとを減らすことも考えていけます。
そうして、少しずつどう受け止めていくか模索していきながら、生活しやすいように、生きやすいように付き合っていかないと、傷つくこともあったり、疲れてしまいますよね。だからこそ、怖がらずに知る必要があると思います。
でも、知り方を誤ると迷走するので気をつけないといけません。
でも、知り方を誤ると迷走するので気をつけないといけません。
知ることは大事。知り方も大事!
私の場合、自分自身に発達障害があり、診断を受ける前から子どもたちと同じような苦労や失敗が多く、次女や、長男が発達障害の診断を受けた時も違和感なく受け止めることができました。
逆に、理由が分かれば治療法もあるし、改善や工夫で乗り越えられると安心したぐらいです。
そして、知れば知るほど安心を得られるものだと思いますが、情報を集める手段が偏らないように気をつけました。
インターネットの情報だけでなく、評判の良かった書籍を買って読んだり、病院で精神科の先生に直接アドバイスをもらったり。
調べ方も幅広くする、というのは今も気をつけています。
福祉制度については真っ先に役所へ「どこで聞けば良いのか」と尋ねます。そこで最初に正解にたどり着けなくても、人づてに少しずつ、いろいろな知識に触れていくことで、自分たち家族にとっての最適解を探っていくことができます。
逆に、理由が分かれば治療法もあるし、改善や工夫で乗り越えられると安心したぐらいです。
そして、知れば知るほど安心を得られるものだと思いますが、情報を集める手段が偏らないように気をつけました。
インターネットの情報だけでなく、評判の良かった書籍を買って読んだり、病院で精神科の先生に直接アドバイスをもらったり。
調べ方も幅広くする、というのは今も気をつけています。
福祉制度については真っ先に役所へ「どこで聞けば良いのか」と尋ねます。そこで最初に正解にたどり着けなくても、人づてに少しずつ、いろいろな知識に触れていくことで、自分たち家族にとっての最適解を探っていくことができます。
とても時間がかかるし、手間のかかることです。けど、自分自身も発達特性があり、思い込みが強かったり、こだわりが強く出てしまうことがあるので情報に振り回されて失敗しないように、「知ること」だけでなく「知る方法」にも気を使っています。
いつか理解できる時が来る、ぐらいの距離感で
例えば今こうして、体験記事を読んでくださっている読者さんの中にも、少しでも情報を得たくて必死に調べているという方も多いと思います。私自身、発信する側でもあり、情報を常に求めている側でもあるので、両方の立場から思うことをまとめます。
知ることは大切です。子どもや自分自身に発達障害があり、多くの情報を得たいと調べることは大事です。
ただ、調べた情報が自分の中で「腑に落ちている」のはきっと、自分で調べようと頑張ったからなんですよね。
だからこそ、それを家族に説明して同じ熱量で理解してもらうというのは、なかなか難しいことです。
私が長男にずっと説明して教えてきたことでも、長男自身にはあまり響いていなかったのだと思います。
長男は大学でうまく単位が取れず、実際に配慮や支援を受けてみたものの、それでも思うようにいかず、2年通ったものの進級できないまま大学中退するに至りました。そこから福祉に繋がることで、ようやく少し……本当に少しですが(笑)、自身の発達特性や得意、苦手、そして自分には福祉のサポートが必要だということを理解してきました。
体験していないことは、説明されて頭では分かっていても、なかなか腑に落ちないんですよね。
発達障害と診断された家族がいて、本人にいくら「こうしたほうが良い」「こうすべき」と伝えても、まったく響かずにいると、サポートする側も本当に疲れてしまうものです。
でも、いつか理解できる時が来るかも、くらいのスタンスでいたほうがいいと思うんです。
「堪忍袋の緒が切れた」ということわざがありますが、私にもし堪忍袋がついていたら、「いつか分かる」と思っていないと長男の対応だけでビリビリになって、“袋の口”しか残っていないかもしれません(笑)。
執筆/ゆたかちひろ
知ることは大切です。子どもや自分自身に発達障害があり、多くの情報を得たいと調べることは大事です。
ただ、調べた情報が自分の中で「腑に落ちている」のはきっと、自分で調べようと頑張ったからなんですよね。
だからこそ、それを家族に説明して同じ熱量で理解してもらうというのは、なかなか難しいことです。
私が長男にずっと説明して教えてきたことでも、長男自身にはあまり響いていなかったのだと思います。
長男は大学でうまく単位が取れず、実際に配慮や支援を受けてみたものの、それでも思うようにいかず、2年通ったものの進級できないまま大学中退するに至りました。そこから福祉に繋がることで、ようやく少し……本当に少しですが(笑)、自身の発達特性や得意、苦手、そして自分には福祉のサポートが必要だということを理解してきました。
体験していないことは、説明されて頭では分かっていても、なかなか腑に落ちないんですよね。
発達障害と診断された家族がいて、本人にいくら「こうしたほうが良い」「こうすべき」と伝えても、まったく響かずにいると、サポートする側も本当に疲れてしまうものです。
でも、いつか理解できる時が来るかも、くらいのスタンスでいたほうがいいと思うんです。
「堪忍袋の緒が切れた」ということわざがありますが、私にもし堪忍袋がついていたら、「いつか分かる」と思っていないと長男の対応だけでビリビリになって、“袋の口”しか残っていないかもしれません(笑)。
執筆/ゆたかちひろ
専門家コメント 室伏佑香先生(小児科医)
ちひろさんのおっしゃる通り、よく知らないものほど不安や先入観からネガティブに捉えてしまいがちですが、知ることで見え方が変わることは多いですよね。さまざまな情報源から知識や情報を集められていたとのこと、とても大切な姿勢だと感じました。
発達特性をお持ちの方にとって、成人期に向かうにつれ、大切になってくるのは、「支援してもらうこと」だけではなく、自分に必要な支援を知り、自分から伝えたり選んだりできることです。これはセルフアドボカシーとも呼ばれます。
苦手なことをすべて克服しようとするより、自分はどんな環境なら力を発揮しやすいのか、何を工夫すると負担が減るのか、どんな時には人に頼ったほうがよいのかを少しずつ知っていくことが、長く社会生活を続けていくうえで大きな力になります。
一方で親御さんは、分かってほしい、こうしたほうがうまくいくのにと思うほど、つい先回りして伝えたくなります。でも、本人にとって必要なタイミングと、周囲が伝えたいタイミングは、必ずしも一致しません。「いつか分かる」と思っていないと堪忍袋が「袋の口」しか残らない、という表現には思わず笑ってしまいましたが、「今は響かなくても、いつか本人の中でつながるかもしれない」くらいの距離感は、本人の自己決定を大切にする意味でも、支える家族が疲れ切ってしまわないためにも、とても大切なのだと思います。
家族だけで抱え込まず、医療、福祉、就労支援など、少しずつ支える人を増やしながら、最終的には本人自身が、自分にはこれが必要と選べるようになっていく。その過程を見守ることも、大切な支援の一つだと思います。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
発達特性をお持ちの方にとって、成人期に向かうにつれ、大切になってくるのは、「支援してもらうこと」だけではなく、自分に必要な支援を知り、自分から伝えたり選んだりできることです。これはセルフアドボカシーとも呼ばれます。
苦手なことをすべて克服しようとするより、自分はどんな環境なら力を発揮しやすいのか、何を工夫すると負担が減るのか、どんな時には人に頼ったほうがよいのかを少しずつ知っていくことが、長く社会生活を続けていくうえで大きな力になります。
一方で親御さんは、分かってほしい、こうしたほうがうまくいくのにと思うほど、つい先回りして伝えたくなります。でも、本人にとって必要なタイミングと、周囲が伝えたいタイミングは、必ずしも一致しません。「いつか分かる」と思っていないと堪忍袋が「袋の口」しか残らない、という表現には思わず笑ってしまいましたが、「今は響かなくても、いつか本人の中でつながるかもしれない」くらいの距離感は、本人の自己決定を大切にする意味でも、支える家族が疲れ切ってしまわないためにも、とても大切なのだと思います。
家族だけで抱え込まず、医療、福祉、就労支援など、少しずつ支える人を増やしながら、最終的には本人自身が、自分にはこれが必要と選べるようになっていく。その過程を見守ることも、大切な支援の一つだと思います。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。