その“問題”、本当に問題? 私が医師として大切にしていること

2016/01/26 更新
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児童精神科医の小澤いぶきです。
子どもの成長は、その子のために周りの大人が連携し「チーム」となって見守っていくことが大切です。今回は、私が医師の立場から考える「チーム」で動くために大切な3つのポイントについてお話します。

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小澤いぶき
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「医者」は何をする人だと思いますか?

私は日頃、児童精神科医として、特性のあるユニークなお子さんたちにお会いしています。

みなさんは「医者」と聞くと、どういう人をイメージするでしょうか。

診断してくれる人?
治療する人?
薬を処方してくれる人?
困っていることをなんでも解決してくれる人?

たしかに「診断」と「薬を処方するなどの治療」は医師でなければできないことです。

ですが、医療でなくてもできることもたくさんあります。
地域の資源や自分たちの中にある資源を知って、うまく活用していくことはとても大事なことです。

大切なのは「チーム」で動くこと

私が医師としてご家族に携わるときに大切な視点があります。

親ができること、
医者ができること、
保育士さんができること、
先生ができること、
本人ができること。

それぞれの持っている視点は違います。

ですから、「それぞれが、それぞれの資源をもって、一緒に子どもや家族のことを考え、取り組んでいくチーム」という意識をもって取り組むことが大切だと考えています。
また、「チーム」といったときに、すっぽり抜け落ちてしまいがちなのが、意外にも子どもの視点。

大人が、「この子のために」と必死に考えた解決策であっても、子どもの視点が抜け落ちていては、それが本当にその子のためになっているかは分かりません。

子どもの力、親の力、医師の力、地域や学校の力・・・

様々な人や組織の視点、それぞれのもっている力や機能を知ることで、例えば、とある子どもがもっている「頑固さ」なども大切な資源であると捉えると、見えてくるものがまた違ってくるかもしれません。


それでは、私たちが子どもたちのために「チーム」をうまく機能させるためにはどうしたらいいのでしょうか?

これはチームを構成していくそれぞれの人や組織の中にこそ答えがあるのだと思っているのですが、
今回は医師の立場から、チームの一員として大切にしているポイントを3つお伝えできたらと思っています。

1.前提を共有し、信頼関係を築く

親と子、学校の先生と生徒、医師と患者・・・などという関わりになると、どうしても"上下関係"という構造ができやすくなります。

「上下関係」にとらわれるのではなく、それぞれの可能性が活かせる関係性をどうつくっていくか。

そのために私が大切にしているのは、

前提を共有すること

です。

この前提とは、用いる言葉が意味すること、ニーズ、目的がそれぞれ違うということです。

例えば「とにかく動きまわって大変」という言葉だけ聞くと、みなさんはどんな状態を想像しますか?

これだけを聞くと、常に動いて全然じっとしていない子を想像するかもしれません。

けれど、実は興味がない授業の時には動いているけれど、好きなことをしている時には集中しているかもしれません。つまり、何をしていいか分からない時に、動き回っているということなのかもしれないのです。

まずは、言葉が表している「行動」に注目し、どの行動がどのくらいのレベルで起きているのかを知る。
(例えば、走り回っているのか、座っているけれど、手足を動かしているのか、など。)

そして、どんなときに起きているか、どのくらい起きているか、などを丁寧に共有していくことが大切です。
「授業中じっとしていてほしいから、じっとしていられるように薬を出してください」と、病院に来ることがあります。
よく聞くと「授業が滞りなく進むために、子どもがじっとしていられる事」を目的にしていることがあります。

子ども自身に聞くと、実は子どもなりの理由があったりします。

私が関わっていた子は「だって、電卓使ってできることをわざわざ覚えることがなんで必要なのか聞いても、誰も答えてくれないんだもん。」と言っていました。

この時に「じっとしている」を目的としてしまうと、大人から見たら一時的にはなんとかなっているように見えていても、子ども自身はじっとしながら、疑問は解決されないし、けれど、何かしたら怒られるし・・・という状態になってしまうかもしれません。更にそれによって、自ら学んでいく喜びや、疑問があった時にそれに素直に向き合っていく機会が失われてしまうこともあります。

大人がそうしてほしいと子どもに思う背景に、自分のどんな「願い」があるのかを考えながら、子ども自身にどんな「願い」があるのかを考えていくことが大切です。
例えば、ただじっとさせるのではなくそれを活かしてみたり、子どもが好きなことに向かう過程で落ち着くことがあったり、その子にとってどんな環境があるといいかを、子どもと共に考えていくことも大切です。
また、こういう話をしているとついついその子の「困っていること」に焦点があたりがちですが、子どもが好きなことや楽しいと思うこと、大切にしているものなども積極的に聞くようにしています。

実はこの中にたくさんにヒントがあって、そういった子どもの中にある資源や、あるいはその親御さんや先生の中にある資源が使えたりします。

例えばとっても歴史が好きな子がいたら、その子がみんなに教える側になってもらったりしてもいいかもしれません。これは実際にあった話ですが、みんなに教える過程で資料を作ろうとしたとき、歴史以外の知識も必要だと気が付き、そこから国語を学び、算数を学び、そして自分が授業をするときには教室から飛びでることもなく、一時間教室にいたようです。

この例以外にも、絵を描くコツやビーズのつなげ方、歴史を楽しむコツなど、私はよくその子が好きなことやできることを教えてもらっています。

2.「問題」を問題と捉えず、その子の特性を面白がってみる

目の前で見えている行動が、実は「問題」ではなく、実際の問題はもっと別のところにあることが多くあります。

「表面に見えていることでなく、奥深くに引き起こしている別のものがある」という捉え方については長くなるので今度にゆずるとして、今回お伝えしたいのは「リフレーミング」についてです。


「この子のここが問題だ」と、園や学校で指摘されたり、周りの子どもと比較してそう思ってしまうことは多いと思います。

しかしそんな時にはまず、どうしてそれが起こっているのか、そもそも何故大人はそれを「問題」だと思うのか、というところを「前提」として共有します。

そして、その「問題」と思っていることが、もしかしたら「活かせる資源」かもしれないという視点で見てみることを「リフレーミング」といいます。
リフレーミングとは、自分が思っている物差しや基準を一旦横において、別の視点を取り入れることです。
つまり、「問題だ」と思っていることを、問題ではなくむしろ「素敵なところじゃない?」と視点を変えて考えてみるということです。

例えば、【思ったことを言わないと気が済まない】は【自己主張ができる】、【落ち着きが無い】は【元気いっぱい】、【こだわりが強く興味が狭い】は【ひとつのことに、とことん没頭できる】という感じです。

ADHDの子どもの親御さんからの相談で多いものが、学校の先生を質問攻めにしてしまう、というもの。授業中、答えが気になったりして先生に質問をし続けてしまう子がいます。

学校の先生からも「問題です」「困っています」と言われるかもしれませんが、リフレーミングをしてみると、その行動はどうなるでしょうか?

【誰にでも質問攻めにしてしまう】は【自分が疑問に思ったことは解決するまで知りたい欲求がある】ということになります。

そういった本人の資源を、「ダメなところ」と捉えるのではなく「自分にはないこの子の素敵な欲求を、周りや本人がどうしたら活かせるかしら」と考えてみると、もっと選択肢が広がるかもしれません。

まずはその子の特性を強みとして面白がってみると、それが立派な長所に見えてくることもあります。

表立った「問題」として型にはめず、別の見方をしていくだけで視点が変わることもありますから、ご家族の、さらに周りの環境が、リフレーミングの視点をもつことが大切なのです。

3.「長期的視点」をもつことで、子どもの成長を実感

最後にお伝えするのは、子どもをみるときの「時間軸」です。

大人にとって、子どもが困ったことをしていると感じるときには、どうしても子どもをその時点の状態だけで判断してしまい、すぐにその「行動」がなくなる方法を探そうとすることがあります。
それは毎日観察できている親だからこそ、起こることでもあると思います。

しかし医師は、同じお子さんを毎日毎日みてはおらず、定点的にお会いしています。
だからこそ気づくのは、実はその困ったことが「成長過程の一つで起きている行動」とも捉えられるということです。
例えば、「こだわりが出る」ということも、成長過程のひとつとしてみることができます。

こだわりは、その子が周囲のものを認知し、かつ、自分が何をしたいかという自我があるという証拠。周囲のものに全く興味を示さなかった子にこだわりが出てきたとすると、それは大きな成長過程のひとつなのです。

もともとこだわりがある子のこだわりが更に強くなる時は、環境が変化したり、本人なりに何か不安があって「自分にとって安心できるこだわり」が強くなっていることもあります。しかし、それもやはり「それが自分にとって安心なこと」で、環境変化を「自分にとって不安なこと」であると言葉にはできないけれど、表現しているからこそできることなのです。

すぐに「こだわりをやめさせる」のではなく、その子がどんなアイテムをもっていたらその子自身の今後に役立つかを考えると、「こだわりを通して興味をひろげる」とか「その子の表現できている力を知り、その他の表現の仕方を知る」ことができるかもしれません。

生まれた時からみると、できるようになっていること、たくさんあるかもしれません。それはどれも当たり前のことではなく貴重な成長です。
望遠鏡的な視点をもって捉えることで、子どもとの関わりが変わってくるかもしれません。

まとめ

私が日頃「チームの一員」として大切にしている3つのポイントをお伝えしました。

特に親子関係においては、近い関係性だからこそたくさんのことが見えたり、子どものことを考えているからこそ感情的になって衝突すしたりすることもあるかと思いますが、それはとても自然なことです。

親御さん自身も、今回ご紹介した視点を用いてみて頂けたらと思います。

そして、困ったとき時には自分1人で頑張りすぎず、「チームの一員」である医療機関や教育機関などをうまく活用し、それぞれの視点を活かしながら子どものことを一緒に考えていきましょう。周りの理解ある環境があって初めて面白がれることもあるので、一緒にそういった環境をつくっていけたらと思っています。
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