その“問題”、本当に問題? 私が医師として大切にしていること

ライター:小澤いぶき
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児童精神科医の小澤いぶきです。
子どもの成長は、その子のために周りの大人が連携し「チーム」となって見守っていくことが大切です。今回は、私が医師の立場から考える「チーム」で動くために大切な3つのポイントについてお話します。

「医者」は何をする人だと思いますか?

私は日頃、児童精神科医として、特性のあるユニークなお子さんたちにお会いしています。

みなさんは「医者」と聞くと、どういう人をイメージするでしょうか。

診断してくれる人?
治療する人?
薬を処方してくれる人?
困っていることをなんでも解決してくれる人?

たしかに「診断」と「薬を処方するなどの治療」は医師でなければできないことです。

ですが、医療でなくてもできることもたくさんあります。
地域の資源や自分たちの中にある資源を知って、うまく活用していくことはとても大事なことです。

大切なのは「チーム」で動くこと

私が医師としてご家族に携わるときに大切な視点があります。

親ができること、
医者ができること、
保育士さんができること、
先生ができること、
本人ができること。

それぞれの持っている視点は違います。

ですから、「それぞれが、それぞれの資源をもって、一緒に子どもや家族のことを考え、取り組んでいくチーム」という意識をもって取り組むことが大切だと考えています。
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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=28057000395
また、「チーム」といったときに、すっぽり抜け落ちてしまいがちなのが、意外にも子どもの視点。

大人が、「この子のために」と必死に考えた解決策であっても、子どもの視点が抜け落ちていては、それが本当にその子のためになっているかは分かりません。

子どもの力、親の力、医師の力、地域や学校の力・・・

様々な人や組織の視点、それぞれのもっている力や機能を知ることで、例えば、とある子どもがもっている「頑固さ」なども大切な資源であると捉えると、見えてくるものがまた違ってくるかもしれません。


それでは、私たちが子どもたちのために「チーム」をうまく機能させるためにはどうしたらいいのでしょうか?

これはチームを構成していくそれぞれの人や組織の中にこそ答えがあるのだと思っているのですが、
今回は医師の立場から、チームの一員として大切にしているポイントを3つお伝えできたらと思っています。

1.前提を共有し、信頼関係を築く

親と子、学校の先生と生徒、医師と患者・・・などという関わりになると、どうしても"上下関係"という構造ができやすくなります。

「上下関係」にとらわれるのではなく、それぞれの可能性が活かせる関係性をどうつくっていくか。

そのために私が大切にしているのは、

前提を共有すること

です。

この前提とは、用いる言葉が意味すること、ニーズ、目的がそれぞれ違うということです。

例えば「とにかく動きまわって大変」という言葉だけ聞くと、みなさんはどんな状態を想像しますか?

これだけを聞くと、常に動いて全然じっとしていない子を想像するかもしれません。

けれど、実は興味がない授業の時には動いているけれど、好きなことをしている時には集中しているかもしれません。つまり、何をしていいか分からない時に、動き回っているということなのかもしれないのです。

まずは、言葉が表している「行動」に注目し、どの行動がどのくらいのレベルで起きているのかを知る。
(例えば、走り回っているのか、座っているけれど、手足を動かしているのか、など。)

そして、どんなときに起きているか、どのくらい起きているか、などを丁寧に共有していくことが大切です。
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「授業中じっとしていてほしいから、じっとしていられるように薬を出してください」と、病院に来ることがあります。
よく聞くと「授業が滞りなく進むために、子どもがじっとしていられる事」を目的にしていることがあります。

子ども自身に聞くと、実は子どもなりの理由があったりします。

私が関わっていた子は「だって、電卓使ってできることをわざわざ覚えることがなんで必要なのか聞いても、誰も答えてくれないんだもん。」と言っていました。

この時に「じっとしている」を目的としてしまうと、大人から見たら一時的にはなんとかなっているように見えていても、子ども自身はじっとしながら、疑問は解決されないし、けれど、何かしたら怒られるし・・・という状態になってしまうかもしれません。更にそれによって、自ら学んでいく喜びや、疑問があった時にそれに素直に向き合っていく機会が失われてしまうこともあります。

大人がそうしてほしいと子どもに思う背景に、自分のどんな「願い」があるのかを考えながら、子ども自身にどんな「願い」があるのかを考えていくことが大切です。
例えば、ただじっとさせるのではなくそれを活かしてみたり、子どもが好きなことに向かう過程で落ち着くことがあったり、その子にとってどんな環境があるといいかを、子どもと共に考えていくことも大切です。
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また、こういう話をしているとついついその子の「困っていること」に焦点があたりがちですが、子どもが好きなことや楽しいと思うこと、大切にしているものなども積極的に聞くようにしています。

実はこの中にたくさんにヒントがあって、そういった子どもの中にある資源や、あるいはその親御さんや先生の中にある資源が使えたりします。

例えばとっても歴史が好きな子がいたら、その子がみんなに教える側になってもらったりしてもいいかもしれません。これは実際にあった話ですが、みんなに教える過程で資料を作ろうとしたとき、歴史以外の知識も必要だと気が付き、そこから国語を学び、算数を学び、そして自分が授業をするときには教室から飛びでることもなく、一時間教室にいたようです。

この例以外にも、絵を描くコツやビーズのつなげ方、歴史を楽しむコツなど、私はよくその子が好きなことやできることを教えてもらっています。
次ページ「2.「問題」を問題と捉えず、その子の特性を面白がってみる」

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